落ち葉を運ぶ風が吹くようになった時期のこと。
ある研究所から繋がる異空間にて、夜遅くに仕事を終えた一人の研究員、実は悪魔の『レン』は、現在、自宅のリビングのソファで眠っていた。
そんなレンにとって穏やかな時間を切り裂く存在が、眠っている彼に近づいていた。
近づく影に気づいたのか、レンはまだ眠たそうに重い瞼をゆっくりと開ける。
「レン、おはよ。」
「……。」
ソファの座面に肘を置き、頬杖をつきながらレンに挨拶した、金髪ハーフアップの男。『 金崎凛太』。
この男はレンの友人であり、実は悪魔のレンと仮契約を結んでいるうち1人の人間。
そして何より、顔、性格、頭も切れる、正に絵に描いたようなイケメンなのである。
そんな彼は暇を持て余したのか、(許可なく)レンの家に上がり込み、(無断で)モーニングコールをしに来たらしい。
学生時代、このイケメンに一目惚れた女子生徒は数知らず。
目が合った娘達のハートを瞬時に撃ち抜いた凄腕狙撃手である金崎凛太に間近でモーニングコールをされたら、彼に恋する乙女は、もしかしたら驚きと嬉しさその他諸々の感情が混ざり合い、二度目の眠りにつくかもしれない。
そしてそれと同時に、一度目の気絶をするかもしれない。
さて、実際に彼にモーニングコールをされたレンも気絶の道を辿るのだろうか。
「…………。」
否。ドン引きである。
冷静に考えると、夜遅くまで働かされようやっと眠りにつけたというのに、無断で家に上がり込み、勝手にモーニングコールをする頭のおかしい金髪野郎にトゥンクするだろうか。するわけが無い。
「モーニングコールしに来たよ!」
「…頼んでねぇ………。」
貴重な睡眠時間を邪魔されたレンの気分は最悪状態だ。
「うっそ〜、レンくん機嫌悪くな〜い?」
そう言いながら、レンの頬をツンツンと突く。
いつにも増して、今の金崎凛太は気色が悪い。
「…………。…退け…。」
「へいへい」
頬から指を退かし、すくっと立ち上がる。
レンは変なところで素直だな。と何となく思いつつ、鉛のように重い体を起こす。
壁に掛けてある時計を見ると、針は9時を指していた。
レンは自分が4時間しか眠っていないことより、金崎が朝の9時に一人暮らしの男の家に遊びに行こうと思った思考回路を真っ先に心配した。
そう思いながら、軽めの朝食を作りにすぐ近くのキッチンへ足を運ぶ。
後ろから両腕で首を絞めながらくっ付いてくる頭のおかしい友人の事はもう放っておくことにしたのか、無言で冷蔵庫から卵を取りだした。
コメント
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顔がいいというキーワードが余計面白さを引き立たせている
なんかもう一周回って金崎を尊敬する
リハビリ〜