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「ただいまー!」
シェアハウスに帰ってきて、すぐに空気が緩む。
「疲れた〜」
「結構歩いたもんね」
買ってきたものを片付けながら、みんながそれぞれくつろぎ始める。
「ねぇ、これどこ置く?」
「それこっちでいいんじゃない?」
いつも通りのやり取り。
——のはずなのに。
「……ねぇ」
小さく声を出したのは、ゆあんくんだった。
「ん?」
「どうしたの、ゆあんくん?」
のあさんとヒロくんが振り向く。
少し迷うようにしてから、ゆあんくんは口を開いた。
「……もふくんってさ」
その一言で、ほんの少しだけ空気が止まる。
「なんか、変じゃない?」
「え?」
のあさんがきょとんとする。
「変って……どういうことですか?」
ヒロくんも首を傾げた。
「いや、その……」
言葉を探すように、ゆあんくんは少し考える。
「朝のさ、あれとか」
「あ“ぁ?”ってやつ?」
うりが、何気なく口にした。
「……!」
ゆあんくんが驚いたようにうりを見る。
「うりも思ってたの?」
「まあな」
軽く肩をすくめる。
「いつものもふじゃなかったし」
「……」
のあさんが少しだけ不安そうな顔をする。
「でも、寝ぼけてただけって言ってましたよね」
ヒロくんが静かに言う。
「……それは、そうなんだけど」
ゆあんくんは言葉を濁す。
頭の中に浮かぶのは——
あの低い声。
さっきの冷静な判断。
「なんかさ」
ぽつりと、うりが言った。
「昔のもふみたいだった」
その一言。
「……え?」
ゆあんくんが聞き返す。
「昔って?」
「いや、なんでもねぇ」
すぐに視線を逸らす。
「……」
ヒロくんが、少しだけ鋭い目になる。
「うり」
「ん?」
「“昔”って、どういう意味ですか?」
落ち着いた声。
でも、どこか探るような響き。
「……別に」
うりは笑った。
「ただの言い方だって」
軽く流すように。
それ以上は何も言わない。
「……」
その場に、少しだけ沈黙が落ちる。
「……気にしすぎ、かな」
のあさんが優しく言う。
「もふくん、いつも通りでしたし」
「……うん」
ゆあんくんも頷く。
納得したわけじゃないけど。
無理にでも、そう思おうとした。
「ほら、それよりさ」
うりがパンと手を叩く。
「夜ご飯どうする?」
「え、もうそんな時間?」
空気が切り替わる。
いつもの、明るい雰囲気に戻っていく。
でも——
「……」
ヒロくんだけは、少しだけ考え込んでいた。
(“昔のもふ”……?)
その言葉が、頭から離れない。
そして。
その頃——
「……」
キッチンの奥で。
もふくんは一人、静かに立っていた。
表情は、見えない。
ただ——
ほんの少しだけ。
その目が、冷えていたことに。
誰も、気づかなかった。
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