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「……いいえ」と、首を振る。
「先生が、私を愛してくれていたことがわかったから……」
彼に答えて、(とても不器用だったけれど)と、思った。
恋愛に手馴れて器用なはずのこの人は、私の前ではいつもあらゆる手管を使って不器用に愛そうとしていたことを、お付き合いをするようになってようやく悟った。
「……先生は、ずっと本気でいてくれたので」
「本気で……」
彼が一言を呟いて、
「なぜあなたには、何もかもを知られてしまうんでしょうね…」
私に頬を擦り寄せると、
「私が、心の奥に隠していたはずのことまで……」
そう口にして、耳の付け根にふっと唇を押しあてた。
「……手に入れた後どうするのかも考えてはいなくて……私は、どれだけ君に躍起になっていたんだろうと」
顎のラインを辿った唇が、私の唇に触れる。
「今なら求めてくれたことを、幸せに感じます……」
彼に口づけを返して、自らの素直な想いを伝えた。
「…ん…あなたには、敵いませんね……」
いつも私の方が感じていることが、思いがけなく彼の口から語られて、一層の想いが胸を込み上げる。
「……私も、あなたを求めてよかったと……。今こうしていられることが、何よりも幸せです」
彼が言い、さっきホテルの外で鎖骨の脇へ付けたキスマークへ、唇を寄せた。
薄紅く痣になった肌に吸い付かれて、「ぅん…」と背中から仰け反ると、水面から乳房が露わになり、突先がちゅっと唇で啄まれた。
「……もう、離してはあげられませんので、」
胸の尖りを舌先で捕らえて、
「覚悟をしてくださいね」
彼が口角を引き上げ、艶然と微笑を浮かべて見せた──。
──水面がたぷたぷと揺れるのを見つめつつ、
「……もっと、抱いていて……」と、口に出す。
「……もっと。こうですか?」
応えた彼に身体がきつく抱き寄せられると、大きく湯水がたわんで、浴槽の縁をザーッと滝のように流れ落ちた。
バスジェルの泡はとっくに消えて、お湯もぬるくなり始めていた。
だけど、触れ合う肌は熱いままだった。
キスをして、手で触れて、何度でも感じて、
私たちは、飽くまで互いを求め合っていた……。