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艦内のドックを歩いているとルドルフを見つけた。俺は声をかける。
「やあ、ルドルフ。いつも通りだな。戦闘シミュレーターでの訓練のためにここに?」
「いいところに来た。勝負するぞ。お前を今日は倒せるだろう。今日の俺は調子がいいんだ。」
ルドルフはいつも通りだ。好戦的で熱血、燃える男ルドルフは昔から俺に突っかかることが多かった。俺を部下にしたかったのかもしれない。結果はいつも俺が勝っていた。俺はアカデミーを首席卒業、ルドルフは次席だった。この関係がなぜ持続しているのか時々考える。そしていつも同じ結論に至る。
「それはワクワクする。期待しているよ。」
艦内には戦闘シミュレーターがある。よく見かける筐体型ゲーム機のような外見をしたこのシミュレーターは実際の戦闘をモチーフにした実践的なトレーニングを艦内で働く人間に提供するために導入された。
1時間後。
「思ったより大きなスコアの差が開いたな。俺が君の1.3倍か。ルドルフ、今日も君の負けだな。」
「わかっているわ!」いつもの結果ではあるのだが、いつも通りの悔しさをにじませる。
「君が俺に追いついたとき、俺はその場所にいないんだ。昔から言っているだろ?君は3本先を見る癖をつけないといけない。優秀な軍人にはそれが求められる。俺に追いつくには君ももっと先を見る癖を持つべきだ。」
ルドルフはわかりやすい人間だ。危うさを抱える人間らしい人間。俺にとっては扱いやすい人間で、正反対の人間。ルドルフはある種のマスコットだ。少なくとも俺はその事実を楽しんでいる。ルドルフはどうかわからないが。俺たちは酷い結末を迎える可能性もある。だとしてもそれは簡単な話だ。俺はルドルフを殺せるが、ルドルフは俺を殺すだけの能力がない。ただそれだけだ。
友情は短い時間が咲かせる花であり、長い時間が実らせる果実である。 コッツェブー 「イギリスのインド人」