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「ガランド、魔王バルザルドの名の元に
命ずる。」
魔王バルザルドは爪を立てながら 自らの手を強く握りしめ、ガランドの右肩に かけました。
「命を賭して ミモリンと、リュカを守れ。」
ガランドは何も言わず静かに頷きました。
ガランドの目が青く光りました。
ガランドの陶器の身体はガラガラと音を立てて崩れ、砂になりました。
そして、中からとても美しい、黄金比の勾玉がふわーっと浮かび上がりました。
これがガランドの魔力の核、 《黄金比の勾玉》 です。
「ミモリン、この勾玉を握り、《憑依合体》
と呟くんだ。」
バルザルドは青く光り輝く美しい勾玉を
ミモリンに手渡しました。
ミモリンはふさふさの両腕で勾玉をぎゅっと
握りしめて呟きました。
「……..《憑依合体》。」
すると砂になったガランドの身体はミモリンの元へと集まり出しました。
より、強固に、より、最適に。
確実に安全にミモリンとリュカを守る装甲。
ガランドの魔力の源である勾玉は一瞬で
膨大な量の計算をして、その答えを導きだしました。
ミモリンの足に、手にガランドの砂が集まり
ミモリンを熱から守る強固な装甲になりました。
ミモリンの胸部に、臀部に、砂が集まり
ミモリンを熱から守る装甲になりました。
ミモリンの頭のまわりを特殊な防壁が覆い、
更にその上からガランドの砂が集まり
ミモリンを熱から守る装甲になりました。
おそうじミモリン完全冷装モード。スタンバイ完了です。
「すごく…..涼しい…..これならいけるかも。」
ミモリンはガランドの装甲に覆われた
手をぐーぱーしながら言いました。
更に、バルザルド、フージャ、ヤッホーの
三人はそれぞれミモリンにいくつもの耐熱
魔法を重ねがけしました。
「いいかいミモリン、ここまでやっても
まだ、リュカの熱から君を守れるかは
分からない。私が危険だと判断したら
すぐにミモリンを魔法でこの場に戻すからね。無茶だけはするなよ。」
真剣な目で、魔王バルザルドは言いました。
「……はいっ!!!」
ミモリンはバルザルドの目をみて言いました。
ミモリンはクソデカ鍋の残りのスープを
おかゆにしたものを手に持ち、
《禁忌のリュカ》が待つ、おそろし山の
洞窟の最深部へと魔法で転送されました。
お掃除開始です。
「グルルルルルルル……….!!!!!!」
檻の中でリュカは魔王バルザルドの魔法でできたいくつもの鎖に繋がれながら唸り声を
あげました。
顔の見えないミモリンを警戒しているのでしょう。
部屋の中はマグマのような熱さでした。
バルザルド、フージャ、ヤッホーが
耐熱魔法をかけ、ガランドの冷却装甲を
身に纏ったミモリンでさえじっとりと
汗をかくほどの熱さでした。
「あ…..えと……ひ、ひさしぶり!!リュカ!!!!
私だよー、ミモリンだよー!!おかゆを持ってきたの。一緒に食べよう?」
ミモリンはそう言ってリュカの側に近づきました。お粥はリュカの熱で蒸発し、ガランドの作った耐熱皿でさえ焼け焦げて塵になってしまいました。
「ぐ……グゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!」
リュカは苦しそうに唸りました。
「どうしたのリュカ!!?大丈夫!!!?」
「ア……ツイ……アツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そう叫びながらリュカはとてつもない熱波を出しました。
その熱波はミモリンを焼き焦がし洞窟の壁まで吹き飛ばしました。
リュカはミモリンを攻撃したのでしょうか?
いいえ、違います。
(制御できないんだ……自分の熱を…….
自分の熱で……リュカは苦しんでいるんだ。)
リュカはどれだけ体温が高くなっても死ねない体でした。
そのため、彼が生まれてきてからずっと、彼は自らの熱に苦しみ続けてきたのです。
40度程度の熱でもそうとうきついのだら、彼の苦しみは想像を絶するもの でしょう。
(熱を……冷まさなきゃ。リュカの熱をどうにかして冷まさなきゃ…..。)
ミモリンがそう考えている間にも ガランドの装甲はピシリッ、ピシリと 音を立てて割れて行きます。
自動回復魔法と高速冷却魔法を繰り返し ガランドの勾玉が使い続けても装甲は 割れ続け、リュカの温度はどんどん 上がり続けます。
「ミモリン、限界だ。魔法でミモリンを戻すぞ。」
ミモリンの首の鈴から、バルザルドが冷静に言いました。
「まだ!!!…..もうちょっとだけ待ってください…….!!!」
「しかし…..。」
「もうちょっとで….何か思いつきそうなんです。」
ミモリンの頭の中でさまざまな単語が
ごちゃごちゃ並んでいました。
(熱、冷ます、ガランド、砂、魔法
熱、冷ます、ガランド….砂、魔法….
これなら….いけるかもしれない….!!!)
「ガランド…..!!!お願い…..!!!私の体内に
入って……!!!!そして、あなたの魔法を、
私が使えるようにして……!!!!!」
ガランドの勾玉は瞬時に計算をしました。
ミモリンのひらめきとガランドの計算が
合致しました。
ガランドの装甲の一部が 砂となり、ミモリンの身体に入り込みました。
ジャリッとミモリンは口の中のガランドの
砂を噛みました。
ミモリンはバルザルドとの会話を思い出しました。
(「いいかいミモリン、魔法ってのはね、
やりたいことを叶えるためにあるんだ。」)
(私のやりたいこと……したいこと。
私は苦しんでる…….リュカを…….
助けたい……..!!!!)
ミモリンの気持ちに呼応するようにガランドの装甲はミモリンの体内へと吸収されていきました。みもりんの身体を白い蛇のような
耐熱性の鱗が覆いました。
これまで魔法が使えなかったミモリンは
はじめて覚えた魔法を唱えました。
「《熱冷ましの魔法》。」
するとあれだけマグマのように熱かった
周囲の温度が少しだけ下がりました。
しかしこれでは焼け石に水です。
バルザルド達は、ミモリンの様子をただじっと見守っていました。
ミモリンは魔物としての本能でこの魔法の
正しい使い方を直感しました。
ミモリンはリュカの檻の前に立ち。
そして、リュカの檻を獣のような腕で
引っ張りぶち壊しました。
リュカの熱を抑えていた檻が壊れたことで
周囲の温度が急激に上がります。
「ミ……モ…….リン…….?」
自らの熱に苦しみ続けながら、リュカは
ミモリンをじっと見つめました。
「大丈夫だよ、リュカ。」
身体が焼け焦げるのを、冷却魔法と回復魔法
で防ぎ続けながら、ミモリンはリュカに微笑みかけました。
ミモリンは「《熱冷ましの魔法》。」
を正しい方法で使用しました。
ミモリンはリュカのほっぺを舌で舐めはじめました。
ものすごい熱でミモリンの舌は焼け焦げてしまいます。
それでも急速に回復魔法を使い続けながら、ミモリンは心の中で 《熱冷ましの魔法》を使い続けます。
(《熱冷ましの魔法》、《熱冷ましの魔法》
…….おねがい、神様。どうかリュカを助けて。)
祈るように何度も何度もミモリンは
リュカの頬をなめました。
その姿はまるで熱に苦しむ子猫を
母親の猫が必死になめているようでした。
「ミ……モ…….リン……?」
「大….丈夫だよリュカ。私が…..絶対なおしてあげるからね。絶対に……絶対に私が治してあげるからね。」
舌を焼かれ続けながら、ミモリンは何度も何度も、リュカの頬をなめました。
リュカは、安心したのか、スーッスーッと
ミモリンの腕の中で眠ってしまいました。
その時、パリィンと勾玉が割れました。
それを見届けた魔王バルザルドは ミモリンを魔法で元に戻しました。
魔法が解除されたミモリンは元の姿に
戻りました。
「……魔王様、お願いがあります。」
割れてしまった勾玉をぎゅっと抱きしめながらミモリン•ヒル•ブラックウェルは 魔王バルザルドに進言しました。
「これから私に毎日、リュカの看病をさせてください。」
ここからが、おそうじミモリンの本当の 戦いです。
頑張れミモリン、負けるなミモリン。
ハッピーエンドになるといいですね。
(次回 最強のシチューを作ろう!!!
お楽しみに!!!!!)