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1,033
のこ☃
☘️💟宮静🪻📗
(この作品はpixivの方でとうの昔にあげてたものです)
あてんしょん!
この作品は
一部カプ要素あり
キャラ崩壊
7,5章までのネタバレめっちゃあり
文章能力皆無
途中からと文章がやばい
監督生が死ぬ
転校生の女生徒がうざい
自己満小説
書いててよくわかんなくなった
誤字脱字あり
を含みます!!
どれか一つでも嫌だな…苦手だな……と思ってしまったらこの先を進まないことをお勧めします!
アンチや批判的コメントはお控えください!
それでもいいよっていう天使の神様はどうぞスクロールお願いします!
0
「ごめん、ごめんな、監督生………ごめん、ごめんっ……」
顔中涙で溢れたナイトレイブンカレッジの生徒たちは息を止めた監督生の近くへ寄った。
そして、優しく彼を抱きしめた。
ーーもしも
ーーあの時自分達が彼奴を守ってやれていれば
ーー自分があの時選択を間違えなければ……
ーーーー今、彼奴は、幸せだっただろうか
考えれば考えるほど自分を激しい怒りが襲う。
あれは忘れもしない5年前。
それは監督生という存在が現れて少したった頃だった。
マレウスの魔法による事件から一着付き、平穏な毎日を送っていた時だった。
1
「監督生ー!」
赤オレンジ髪の男が監督生の後ろから声をかけて走ってきた。監督生も笑顔で応答する。
「おはよっ!!」と言いながら監督生の肩に腕をかけた。
エースと違って歩いて向かってきたデュースも監督生へ挨拶をした。
「そういや今日転校生来るんだろ?」
そうエースが話題を振った。監督生はその話を聞いてはっとした顔を見せた。
「そういえばそうだった!確か寮は僕の寮だったはず…!」
急に監督生が思い出したかのように二人へ話した。二人は顔を見合わせて「えっ!!?」と口を揃えて驚いた。
「いや、昨日学園長から転校生が貴方の寮、オンボロ寮に転入してきますから一つ部屋を開けといてくださいって言ってた。」
「まじかよ〜………。で、どんなやつ?」
話の途中で急にエースが真面目で真剣な顔になった。
何故かとても嫌な予感がエースを襲ったのだ。自分の予感に不安を抱いていた。
「いや、僕もよくわかんないんだけどさ…、確か、女の子だった。」
「え?」
監督生の言葉に暫く固まり続けた。監督生は固まった二人をみて困惑していた。ようやく動きを取り戻して本当か尋ねた。だが監督生の口からは本当と言う言葉しか返ってこない。
「お前、一応男なんだから、その…手は出すなよ?」
「いやいや出さないって!」
冗談気に言ったエースに監督生は流石にないと半笑いで返した。その時はその転校生の話で盛り上がり、ホームルームまでその話をしていた。
「子犬共、席につけ。今日は新しい生徒が来た。入れ」
クルーウェルの声と共に教室の扉が開いた。
そこから入ってきたのは黒髪で、髪が肩よりも長い女だった。ここは男子校なのに何故?という声が広がりつつもクルーウェルは気にすることなくその女へ自己紹介をさせた。
「はじめまして。私は☓☓☓といいます。よろしくお願いします…!」
何故この男子校に女生徒が入学できたのか疑問に思いながらも女を見た。エースとデュースはその女を睨みつけるような目で見ながら警戒を続けていた。監督生はこれから同じ寮の人としてうまくやっていけるかを考えていた。
「こいつも魔法が使えない子犬だ。どうやら異世界から来たらしく、この学園に入学させることになった。仲良くしてやってくれ。」
そう言い終わるとホームルームが終わり授業へと移った。
生徒たちは「監督生みたいなやつが1人増えた。」「魔法が使えない奴が“また”増えた」「監督生みたいに事件に巻き込まれんのかな」等など、口揃えて話していた。
その会話に不満をいだいたのか、女生徒は監督生を見て、目で睨んでいた。
監督生は彼女の目を見ていなかったが、授業に気を散らしていたせいでエースとデュースはそれを目撃し、何故かとても凄まじい違和感を感じた。だがそれは気のせいだろう。そう思い、自分の気持ちに無視をした。
その日は男子校に女が来たと学園中で広がり、沢山の人に囲まれて女生徒は顔に笑顔を浮かべていた。
だが、それと同時に女生徒は苛立ちを覚えていた。
その日、監督生とグリムは無事に学園での一日を終えてオンボロ寮へ戻った。勿論女生徒も連れて。
「ここが僕達の暮らすオンボロ寮だよ」と女生徒へ紹介をした。女生徒は「へー」と学園とは全く違う様子で対応した。彼女はその時不満、怒り、妬みが体に染みていた。
グリムは疲れてソファに寝そべり気づいたらねていた。
「ねぇ、貴方、魔法使えないの?」
「え?うん。異世界から手違で来ちゃったみたいで…」
「そうなんだ」
「君もそうだよね、だ、大丈夫だよ!きっと慣れる日が来るよ」
きっとこの世界に来たばかりで不安だろう。そうこの世界に来た頃の自分と照らし合わせて、まずは安心させることから始めようと思った。だがその考えは間違っていたのかもしれない。彼女は余計に腹を立てた。だがそれを顔には出さずに抑えていた。
「私もこの世界に来たばかりだから不安。これから慣れることを願うことにする。寝る場所は何処なの?ここは随分と他の寮とは違うのね。」
うろうろとオンボロ寮の中を歩き回ってあらゆる所をみて回る。
「最初はボロボロだったんだけどVDCメンバー達が直してくれたんだ!あっ、VDCは知らないから…えっとヴィルさんとか!ポムフィオーレの寮長?達かな」
監督生は何か彼女に不満なことがないが気になりつつも温厚に話しかけた。だが彼女にはそれが逆効果であった。
「そうなんだ。貴方は皆と仲が良いの?」
「うーん……よくわからないけど事件に巻き込まれるうちによく話すようになったかな?」
「そう。もういいわ。私はもう寝る。おやすみ」
彼女は一方的にそう言って部屋に戻ってしまった。
「おやすみ」と監督生は一言言い、グリムを起こして自分も、部屋に向かった。
少し嫌な予感がしたのは気のせいだろうと自分の気持ちに無視をした。
グリムは布団の上で寝言を色々と言っていて夢を見ているようだが、監督生は眠れなかった。眠気が自分を襲わないためただ、眠気が現れるまでグリムをベッドに横たわりながら眺めていた。
「今日はあんまり眠れないな」
そう一言。
夜の冷たい風が薄いカーテンを揺らす窓の外を眺めた。輝く満月を見ていると、蛍が暗い空を少しずつ照らした。
この光は…!と監督生は寝間着のまま、サンダルを履いて肩や胸等の所々が寝間着から露出した無防備な体を外に出した。
「あっ!やっぱり、ツノ太郎!」
そう明るい声で彼に呼びかける。監督生の目の前にいるのは身長が高く、暗闇の中でも堂々と目立つ角が特徴的なマレウス・ドラコニアだった。片方折れていても、流石な迫力だ。闇黒の王のような見た目で、ツイステッドワンダーランドの中でも世界レベルの魔法士だ。そのせいで学園からは恐れられていたが、監督生だけはそんな事はなかった。
「ああ。人の子か。」
監督生が来てうれしいのか喜びを顔に出して微笑んだ。
「この学園に一人、人が加わった時いたが」
「そうそう、僕と同じように魔法が使えなくてね、オンボロ寮にいてもらっているんだ」
「そうか、お前の所にも、寮生が一人増えたか。」
「うん!女の子だけどまあ、異世界からやってきた同士で頑張っていこうと思うよ!」
「そうか」
会話が自然と弾む。
マレウスも監督生と話す時が楽しい。監督生も、たまに夜に現れるマレウスとこうやって話す事が楽しい。そう思っていた。二人で月が輝く真下で会話をすることが、1週間に一度の楽しみだった。
一人。
その光景をオンボロ寮から眺める女生徒がいた。
彼女は近くにあったメモ帳を壁に投げつけた。
「…、でも、彼奴が笑っていられるのも今のうち。あの立場は私のものなんだから……」
その声はこの学園の上位のヴィランの笑みだった。奇妙な声と顔を浮かべ監督生を睨みつけていた。彼女の体からな大量の魔力があふれていた。
2
「なぁ監督生!どうだった?昨日!」
「どうだったって、何もないよ。ってかエース何想像してるの」
バシッとエースの頭を軽く叩く。エースもデュースも笑っていた。監督生は微かに抱いた昨日の彼女の声のトーンを気にしつつも、何もなかったように振る舞った。
「あっ!小エビちゃんじゃん!」
後ろから緩い声が聞こえた。
「あっ、フロイド先輩じゃないですか!おはようございます」
そう、監督生の前からやってきたのは背の高いフロイドだった。圧が凄く、迫力がある双子の一人。自由人で人の事は全く気にしないのだが、フロイドは監督生にだけしか見せない心もあった。
「あははっ、聞いたよ〜小エビちゃんのとこに新しい寮生増えたんだって?」
「はい、そうです!」
やはり噂は光の速さで広まるのだなと監督生は感じた。
「じゃあ気軽に小エビちゃんのとこ行くの駄目になんのー?」
「うーん、難しくなるかもしれませんね」
少し苦笑しながら話す監督生にフロイドは肩を下げた。
「小エビちゃんともっと面白いことしたかったのにー」
「いやいやお前フロイド先輩とどういう関係?」
エースが戸惑いながら質問してくる。監督生は首を傾げながら「普通の先輩後輩」と答えた。「いや絶対相手はそういう気ないと思うけど」と呟くエースにデュースとグリムは「普通に話せているだけですごい」と遠目で彼らを見た。
その頃、女生徒はある行動に移っていた。
「すいません、2年生のアズール・アーシェングロット先輩は居ますか?」
コンコンと教室のドアを叩き生徒へ呼びかける。
「なんでしょうか。確か、貴方は最近転校してきた、」
「☓☓☓です!よろしくお願いします」
「あっ、はい…で、一体用とは何でしょう」
アズールが早く教室へ戻りたそうにしていると彼女は言葉を発した。
「願いを叶えてほしいんです。勿論対価はお渡しします」
「………何故?貴方はこの学園に入学して3日も経っていない。この学園の事を何故そんなに理解しているのですか?」
何かに引っかかったアズールは女生徒に問うが、「監督生から教えられました」とすんなり嘘をついた。微かな違和感を感じたが対価があることが好都合だったため、取引に応じた。
「分かりました。では、今日の夜7時にモストロラウンジでお待ちしております」
そう言うってさっさと教室へ戻っていった。
大丈夫。もう少しで全て、全て手に入れられるんだから
女生徒は自分の心で笑った。
モストロラウンジにて
ジャズを流して大人びた雰囲気を出す学園内にある唯一のカフェ。
そこに待っていたのはジェイドとフロイドだった。
「貴方が噂の魔法の使えない生徒さんですね」
「オンボロ寮に住み着いてんでしょー?」
いつもの調子のジェイドと、怠そうに早く終わらないかと話すフロイド。その双子を見て微かに微笑み、「そうです。私は☓☓☓といいます。よろしくお願いします!アズール先輩との取り引きの件なんですが」と話を進めた。
「☓☓☓さん、ようこそモストロラウンジへ。さあ此方へどうぞ」
そう奇妙な笑みでどんな願いをされるのか期待をしていた。
「それで、取り引きとは?」
「はい。取り引きの内容はこうです。アーシェングロットさん、貴方に監督生を殺害してもらいたいと思いまして。」
「!?」
アズールは目を見開いた。
殺害なんて契約は初めてだったのか驚きを隠せない状態だった。両隣にいるジェイドもフロイドもいけ好かない表情を浮かべて警戒していた。
「殺害なんて、できるわけないでしょう…!貴方何を言っているんですか…!?」
「対価は、オンボロ寮、そして3000万マドル、そして50人の人手です。アリバイ工作もいたしますよ。どうでしょうか」
「はっ、3000万マドル?!!!」
アズールがついに声を上げた。ジェイドとフロイドも顔を見合わせながら目を見開いている。
「そんな大金と人手があればモストロラウンジ2号店、3号、いや、5号店も夢じゃあない」
混乱しつつも夢を妄想した。だが、アズールは彼女の思った以上にすぐに正気に戻ってしまった。
「…ですが、今回の取引はお断りします。」
アズールは迷うことなくきっぱりと断りを入れた。
「監督生さんを殺害する理由を述べてください。はぁ…全く…、監督生さんみたいなお人好しはまたすぐに事件に巻き込ますね…こちらも休みがないです…」
「理由はただ一つです。何にもしてないのに皆に好かれる彼奴が気に入らないからです。」
急に顔色が変わった。
先程までは温厚に接していた彼女は別人のように成り果てた。アズールだけではなく、あのジェイドとフロイドまで背筋が凍った。
固まっていると女生徒がアズールに近づいた。そして一瞬のこと、アズールの首を掴んだ。
「ガハッ……!!な、、にを、する」
苦しそうにもがく姿を見ながら彼女は微笑んだ。「貴方は私の物」そういった途端、光が部屋を照らした。
ジェイドとフロイドもまずいと思ったのかアズールに駆け寄った。
そして光がおさまった頃、フロイドが見た光景は、最悪な状況を表していた。
アズールとジェイドの目の色が赤色に光っていた。それは一瞬のことだったが彼らの身に何かが起こった事は確かだった。だがそれに反応してはいけないとフロイドは感覚で理解した。そして、決して今は、彼女が望む行動以外してはいけないと分かった。
「アズール先輩、ジェイド先輩、フロイド先輩、私に従ってくれますか?」
その言葉にフロイドは初めての恐怖を感じた。
『はい、勿論』
フロイドは跳ね上がる心臓の音を頑張ってしずめて二人に合わさて声を出した。
「じゃあ、監督生を殺してくれる?」
『ええ、勿論。』
フロイドは絶対答えたくなかった。だが、もしこれに答えなかったら…。瞬きをするくらい簡単なこと。フロイドのユニーク魔法を見破られてしまえば彼女の思いのままになってしまう。魔法が発現した今、彼女は決して魔法が使えないわけではない。嘘をついていた。それで皆を自分の下僕にしようとしていた。
咄嗟のユニーク魔法、「バインド・ザ・ハート」が役に立った。だがこれからどうするか。考えるだけでフロイドは頭がいっぱいだった。
「でもまだ殺さないで、人を集めて彼の心をズタズタにしてからにしましょう。じゃあ3人ともおやすみなさい」
そういうと彼女はオクタヴィネル寮をあとにした。
その後のアズールとジェイドはいつもと全く同じだったが、フロイドはいつ攻撃が来るか知り得ないためマジカルペンをいつでも出せるように構えていた。
次の日、監督生は窓から差す輝く太陽の光を浴びて起こされる。まだ寝言を言うグリムをさすり、起こす。
監督生は毎日、なんの事件もありませんように。と願う。もう争い事に巻き込まれるのはごめんだからだ。
いつもと変わらない光景を目にすると、心がホッとする。
ナイトレイブンカレッジのメインストリートでエースとデュースに出会う。
「エースデュースおはよう!」
「おお!監督生おはよう!」
いつもと変わらない二人を見て、何となく感じた嫌な予感はやはり気のせいだったんだと安心して胸を撫で下ろす。
「?どうかしたか?」
デュースが監督生の顔を覗くが「ううん!大丈夫!」と言って監督生は顔を伏せた。
一方フロイドは。
フロイドは朝から自分の体に何をされているか分からないため1秒たりとも気を抜けなかったため疲労がたまっていた。少しでも監督生といつものように喋れば自分はアズールやジェイドのように操られるかもしれない。と。
あの現場を目撃し、唯一記憶があり、自分の意識がちゃんとあるのはフロイドのみ。それを自覚したうえで日々生活した。
「小エビちゃ…」
目の前に監督生がいた。監督生へ話しかけたい。触れたい。その思いが強くなっていくが、決して彼に触れることも、話しかけることすら叶わなかった。
自分自身が今、どれだけ監督生の命を救うのに大切か理解ができた。いざとなれば魔法で殺ればどうにかなる。という考えをもついつものフロイドはもう何処にもいなかった。ただあるのは監督生が死ぬかもしれないという恐怖。それだけ。
フロイドは自分の手で監督生を殺したくなかった。
なにせ彼にとって監督生は。
ーーーーー初めて恋した相手だったから。
3
(次はどの寮にしようかなぁ)
一人、教室で男と戯れながら微かな笑みと共に考えていた。
彼女は魔法が使えなく異世界から来た人間。という可哀想な立場という設定として過ごしていた。
本当の彼女は魔法はこの学園では寮長クラスにも及ぶ。
そして魔法の展開領域はマレウスと並ぶくらいだった。彼女のユニーク魔法は強力で、心理をついたもの。その名も「ユーアー・インマイ・ワールド(私の思い描く世界)」その能力の効果は、魔法をかけた相手を絶対服従させるだけではなく、記憶の改変を行い、自分の思うがままに相手を操ることが可能。一番厄介なのは自分自身の意識はあっても、起きてもいない記憶が鮮明に頭に入っていることだった。
アズールとジェイドは今まさしくその状態で、監督生がとんでもない罪を犯しただけではなく、人を陰で殺めていたり、殴っていたり、起きてもいないことが彼らの中では起きたことになっていた。
彼女の目的はただ一つ。この学園にいるもの全員を自分のものにしたかっただけだった。
彼女は何年か彼らを見て、どうにか入学する方法を考えてきた。なのに急に“監督生”という異例の存在がこの世界からやってきてから全てが変わった。
それからリドルの暴君事件、レオナらのマジフトの事件、アズールによる契約事件、ジャミルによる裏切り事件、ヴィルの誰よりもの美しさを求めた結果のVDCでの事件、イデアらによるSТYXでの事件、そしてツイステッドワンダーランドの世界を巻き込んだマレウスが起こした事件、これらには、いつも監督生がいた。
監督生の立場が自分だったら。そう何度思ったことか。嘘でもいい。本当の自分を見てなくてもいい。彼らに愛されたい。
だから彼女は監督生が色々な人に話しかけられ、触れられ、守られ、共に冒険し、監督生が“特別な存在”として扱われていることがなにより気に食わなかった。男だろうがなんだろうが許せなかった。
だから彼女は皆を監督生の敵にして自分の味方につけて、思うがまたにしようという計画を企んでいた。
彼女の発する笑みは周囲の人には癒し、監督生にとっては背筋が凍るものだった。
ーーーーーーーーーーー
「あっジェイド先輩!」
監督生は通りすがるジェイドに声をかけた。
「ああ、監督生さん」
「そういえばこれこの前オンボロ寮に来た時の忘れ物…」
そういって監督生は鞄からハンカチを取り出すとジェイドは勢い良くバッ!っとハンカチを監督生から取り上げた。
監督生はあまりにも急だったので何が起きたかわからずに首を傾げていた。
「僕の物に触れないでいただいても?」
その時、監督生は初めてジェイドの目を見た。
その時全ての時が止まったように感じられた。頭に血が昇っているのか顔が熱い。
汗が背中を伝う。
胃の奥がぎゅっと縮まる。
監督生が見たのは、“感情”のない、“嫌い”もない。“怒り”でもない。ただ何もない。
ただ命令を待つ人形のように、意志の欠片すらない空虚を持った……。
瞳だった。
監督生は怖気付いた。恐怖を抱いた。
いつもは監督生への粘着が凄いのに、今日は触るなと言っているようで、目は何もない。そんな光景、信じられるはずがない。
理解できなかった監督生はその場から走って逃げ出した。
暫く廊下を走っていると人にぶつかってしまった。
「ごめんなさいっ!」
監督生は咄嗟に謝った。だがその目の前にいたのは眼鏡をかけたアズールだった。
「!アズール先輩!助けてください!実はジェイド先輩がっ…。っ!!!」
監督生はアズールを見た瞬間助けを求めようとした。
だが、アズールの目も、また“あの目”だった。感情が一切感じられない瞳。
「ぶつからないでもらえます?貴方の人材で。」
そのほんの少しの言葉はナイフのように鋭く、監督生の心を一瞬にして貫いていった。
「あっ、ああ」
監督生は今にも泣きそうだった。だが、涙をこらえてアズールとは別方向へと走り去っていった。
それを角からみた女生徒はニヤリと口を歪めた。
「それでさ、ジェイド先輩とアズール先輩、目に光がなくて、いつもと全く対応が違ったんだよね」
監督生がしずんだ表情でビーフシチューをスプーンですくって食べながら言った。
「きのせーなんじゃねーか?ジェイドのやつもアズールのやつも、ほぼほぼ目に光ねぇーじゃねーか」
グリムが肉を大きな口でほおばって食べながら監督生を見た。
「いや、でも気の所為ってレベルじゃない、ような…」
「じゃあちょっくら調べてみる?」
エースがニヤリと笑った。
「前だってマジフト大会の事件だって解決したわけだしさ♪それがユニーク魔法のせいなのか、ただそうなってるだけなのか」
「いいかもな、監督生も困ってるし、実際つらいだろ?」
「うん、まぁ…」
優しく対応してくれるエースとデュースに嬉し涙が溢れそうになる。ありがとうと感謝を述べた。
それから、エース、デュース、グリム、監督生で、ジェイドとアズールの瞳に関する情報を集めていた。
「うーん、これが魔法だとしても、ジャミル先輩とかラギー先輩とかじゃないと思うんだよね。よりにもよって何でオクタヴィネルの奴らなんかなーって」
エースがメモ欄を見ながら言った。
「たしかに…」と口揃えてグリムとデュース、監督生は言った。
会話をしていると、前から焦り気味のフロイドが監督生をめがけて走ってきた。
「えぇ!!??」
監督生は咄嗟に目を瞑った。グッと監督生を片腕だけで押した。
「どうしたんですかフロイド先輩」
「一回小エビちゃんは黙ってろ」
「!?」
その冷たい声にジェイドやアズールのようになっているのかと瞳を見た。だが、フロイドの目には監督生が見ても分かるハッキリとした“意識”があった。
その瞳に少し安心を覚えながらフロイドに身を任せる。
エースとデュースは心配そうに監督生を必死で追いかけていた。
フロイドは周囲を警戒しながら気配がないか確認し、人気のない更衣室へ入った。
「何でこんな所に?」
「待ってて、今ここにだれもはいれねぇーようにすっから」
そういって魔法をかけるとフロイドは地面に座った。ついでについてきたエースとデュースはフロイドの顔色を伺いつつ話しかけた。
「あの、監督生をここに連れてきたのって何か意味があったりするんですか?」
「…………」
何を言ってもフロイドは何も言わない。聞く耳は持っているのだが、言葉を発するのに迷っているように感じられた。
「何か、ジェイド先輩とアズール先輩について知っていることってありますか?」
監督生が頼ま込みで聞くとフロイドはマジカルペンを取り出した。
そして何も言葉を発さず、空中に文字を書いた。
「?」
4人はフロイドの書く文字を淡々と眺めていた。そして、最後の言葉が書き終わる時、4人は絶望していた。
“小エビちゃんが危ない”
そう空中にかかれていた。
たったそれだけだった。それなのに強烈な嫌気が指した。
これ以上、書きたいことがあった。監督生は殺される、転校生が黒幕、ジェイドとアズールが操られている。書きたかった。書こうと思ってた。だが、手がそれを書いてはならないと悲鳴を上げながら拒否をした。
フロイドの意思ではなかった。体が自分の知らないものになるような気分がしてとても気持ちが悪いかった。
フロイドは何も話せない。
何故ならあの光は彼女にとってのGPS。フロイドのユニーク魔法でも太刀打ちができなかった。何かをいったら直ぐに魔法にかかっていないことが判明してしまう。兎に角、これだけは、言っておこうと思ったフロイドの行動だった。
4人で固まっているとフロイドは1人で先に何処かへ行ってしまった。
「おい、あれどういうことだよ」
エースが跳ね打つ心臓の音と共に監督生へ聞いた。
「僕だって分からない…」
分からないが、今、何かが起こっていることだけは分かっていた。
「オレ様今回の調査はもうやめるんだゾ…全身の毛がゾワゾワするんだゾ」
「ああ。もう辞めよう。これ以上、調査したら何か監督生の身に何か起きそうだ。」
「でもさ、ほおっておいたら更に酷くなるとかは?」
エースが心配そうに尋ねるが監督生は「もしかしたらフロイド先輩のあの焦り様だとどう転んでも悪い方に行きそうな感じがする。」と怯えながら答えた。
「でも…」と何か言いたそうな表情をしたが、エースは「まぁそれもそうか」と収めた。
解散したあとでも、エースはずっとそのことについて悩み続けた。授業もまともに集中して受けられなかった。
部活でエースはフロイドにあのメッセージの意味を尋ねても、険しい顔をするだけで、決してそのことに関しては何も触れなかった。
4
「さぁ!今日は宴だ宴!!!!お前ら!歌え!踊れ!!メシもじゃんじゃん食えよ!!!」
笑顔で寮生達に呼びかける、声が高く元気で明るい少年、カリム。カリムは宴を開いて寮生達と料理を食べていた。
監督生とグリムも交えて。
二人はただ、ジャミルのような心理を操る魔法を使える人に、話を聞きたかっただけなのだが、カリムが折角だからと二人を巻き込み宴を開き始めてしまったのだった。
「すまないな、二人とも」
後ろからジャミルが少し汗をかいて帰ってきた。
「おー!ジャミル!二人がジャミルに用があってきたんだけどジャミルが部活だったから宴開いといたぜ!」
「またそうやって…」
ジャミルがカリムに向かってやれやれと溜め息をついた。
「それで、話というのは?」と直ぐに切り替えられた。急に辺りの温かい風が逆に変な汗をもたらす原因になったように感じられた。
「あ、あの…実は…」
ーーーーー
「成る程…そういう事か…」
ジャミルは険しい顔をしながら考え続けてくれていた。辺りは暗く、フードをしているせいで余計に顔が暗くなりよく見えないが、真剣に考えてくれているのがよく分かった。
途中グリムはカリムに青カビチーズを食べさせられに連れて行かれていた。
監督生とジャミルだけになった時は不安が込み上げて来たが、いざとなったらジャミルが守ってくれそうな気がした。
「ジェイドとアズールだろ?」
「えっ、あっ、はい。」
「フロイドは?」
「えっと…険しい顔はしていましたけど、まだ意思はあるっぽいです…」
「そうか……。!!もしかしたら…!」
ジャミルが突然閃いたように頭を上げた。
「何かわかったんですか?!」
監督生が少し明るい顔を見せると「犯人は分かっていないが」と言いながら続けた。
「ジェイドとフロイドは授業やクラス、部活以外ではずっと一緒にいる。その日はバスケ部はなかったし、あの三人は常に一緒にいるはずだろう。」
「確かに…」
「もしかすれば、フロイドはジェイドとアズールになにかが起こる瞬間を見てしまったんじゃあないか?」
その言葉にハッと監督生は今朝のフロイドの行動を脳内で再生した。
決して何かが起こったとは言わなかったが、あの焦りようが全てを示した。
「…フロイドの様子がいつもと違ったんだろう?何も言わなかったのか?」
「……はい。決して何も」
「ということは、その場を彼奴が体験したのかもしれない。フロイドのユニーク魔法は魔法を弾き返すものだ。前に俺もやられたことがあるからな。彼奴がそれほどな表情をするのは、実力はマレウス先輩と同じ位かもしれないな…」
「嘘…でしょ??」
フロイドはマレウスには決して怯えはしなかった。フロイドは人に怯えるタイプではないと思い出した今、危機感が膨れ上がった。
「おい!!お前ら!料理食わねぇーのか?たっぷりあるから食っていけよ!!」
カリムが今の恐怖で満ち溢れた雰囲気を、一気に明るく変えてくれた。
「お前はまた……」とジャミルも呆れるが監督生は少し苦笑した。
それからスカラビア寮生達と宴を開き、女生徒や調査も忘れて夜遅くまで楽しんだ。
だが…
監督生とグリムが帰ってきた時の女生徒の顔はとんでもなく鋭かった。
ーーーーーーーー
女生徒は監督生が帰ってこないことに違和感を持ち、監督生にあらかじめつけておいたGPSを辿り監督生の場所を突き止めた。
彼女はまた腹を立てた。もう少しの辛抱だと思いつつも。
彼女は行動に移った。出掛ける用意をしてスカラビアに向かった。
鏡をすり抜けると明かりが灯り賑やかな声が溢れていた。まさかと思って彼女はこっそりとスカラビアの中へ入った。
彼女が見た光景は監督生とグリムがスカラビアで宴を楽しんでいる様子だった。何故自分を差し置いていつも…と拳を強く握り歯をギシギシといわせた。思う以上に自分が必死になっていることにも腹が立ちつつも、準備をして監督生達がスカラビアを出るのを待った。
少し経ち、宴が終わり、辺りは静まり返った。監督生とグリムが宴の事を楽しそうに話しながら帰っていた様子をみてから動いた。
「すいません!カリム先輩いますか?」
彼女が声を出した少し後に、暗闇からジャミルがやってきた。「?何だ君は」と怪しそうにするも首を傾げると彼女は宝石を差し出した。
「これ、カリム先輩のだと思ったんですが…」
宝石は確かに熱砂の国で取れる宝石だった。異世界から来たということになっているため、熱砂の国の宝石は持っているはずがないとジャミルは思い、カリムに渡しておく。と言おうとした。だが、彼は“もしかしたら”と思った。
あの二人をそうしたのは…と考え、ジャミルは勝負に出ることにした。
「そうかもしれない。最近喪失していたものはこれかもしれないな。是非中に上がってくれ」
ジャミルは嘘の笑みをみせてスカラビアに招いた。
ジャミルはカリムの宝を管理しており、カリムのものじゃないかくらい、呼吸をするくらい簡単にわかった。
たが、何か引っ掛かるものがあったため、何らかの方法を使って話を聞き出そうとした。
「ここが保管所だ。」
「わぁ、凄いですね!沢山宝物があります!」
「ああ。本当に凄いだろ……!!!」
その瞬間、彼女に大量の魔力がある事を察知したジャミルは急いで後ろに引き下がった。
「どうしたんですか?」
女生徒は不思議そうにジャミルを見つめるが何かに気づいたのか彼女は人間とは思えないほどの瞬発力でジャミルの首を掴んだ。
「!!やっぱり……!!」
苦しそうにもがくが決して彼女は手を離さなかった。
そして、アズール達の時と同じように光で部屋は満たされ、光がやむ頃には、ジャミルはもう既に操り人形となっていた。
そして……物音がして駆け付けたカリムも……。
次の日、夜中まで宴をしていたせいか何となく疲労がたまっていた監督生は少しフラフラしながら学園に行く支度を整えた。
「あっ、おはよう☓☓☓さん」
昨日の顔のことも監督生がぎこちなく挨拶をするが彼女は自然と笑顔で「おはよう」と言っていた。
前までは絶対に笑顔を見せなかったのにどういう風の吹き回しだと怖くなるが、彼女がご機嫌な様子をみて安心する。
グリムは「カリムみてぇーだな」とボソリと一言。監督生は急いでグリムの口を抑えるが彼女は全く気にしていない様子だ。胸を撫で下ろして学園へ向かった。
グリムは何故か彼女を敵対視していたが監督生は別になにも敵対視はしていなかった。
その日は特に目立ったことは起きなかった。
主な出来事はエースとデュースに宴でのジャミルとの会話を話していたくらいだ。
ジェイドにもアズールにもフロイドにも、合わなかった。
そしてカリムとジャミルにも。
次の日、教室にエースが来た時、顔がいつもより険しかった。
「どうしたのエース?」
不思議に思った監督生は問うが言いづらそうに監督生へ歩み寄った。
「昨日、バスケ部あったじゃん?その時、まだ練習中なのにフロイド先輩もジャミル先輩も同時にピタッて!直ぐにバスケットボールを置いて同じ方向に行ったんだよな…フロイド先輩はよくあることなんだけど…ジャミル先輩までっておかしくない?」
隣にいたデュースも不思議なものを感じていた。
「そういえば、昨日ジャックも、最近ラギー先輩がおかしいって言ってたな」
「ラギー先輩もか…」
グリムは「んじゃあスカラビアとオクタヴィネル以外の寮長に聞き込みに行ったらどうだ?カリムはなにも知らなそうだったかし」と提案した。エースとデュースはその提案になったが、もしも誰かのユニーク魔法だとしたらあの用心深いと有名なアズールをも従える能力をもつ者がいるなら、寮長だとしても油断ならない。警戒心を持って調査をしようと決めた。
「俺らは寮に戻ったらリドル寮長に言ってみる」
「今日は取り敢えずブッチ先輩がおかしいってなっていたキングスカラー先輩と何か知ってそうなドラコニア先輩やヴァンルージュ先輩の所に行ってみるか」
「そうと決まったら、食堂でまずはサバナクローのレオナを探そうぜ」
ーーー
そして昼、レオナはジャックの更にやたらと野菜を乗っけていた。いつもはラギーも共にいるはずが、ラギーの姿が何処にも見受けられなかった。
「あの、少しいいですか?」
監督生が話しかけると機嫌悪そうに「あ?」と返してくるレオナがいた。
よかった。レオナ先輩はまだ大丈夫そう。と監督生は心で安心をした。
「ラギー先輩は一緒じゃあないんすか?」
「ああ。彼奴の行動がここ最近妙に変でな。彼奴がいつも俺を起こしてたから今日は起きられなかったじゃねぇーか」
いやそもそも自分で起きて下さい。という言葉を飲み込んで本題へ入った。
「最近、心のない目になったり、急に動きを止めて何処かへ歩き出すっていうことってありますか?」
「……ああ。心のない目ってんのは多分ねぇーけどな。途中で俺の部屋の片付けをやめて何処かへ歩いてった。」
「やはり…何かありそうだ。」
監督生はもう早く解決してほしい。という思いとともに皆が心配という気持ちが込み上げてきた。
不安という言葉が自分をなぞる。
「ありがとうございます。では僕達はこれで失礼します」
そういってその場から去ってランチの列へ並んだ。話していたから遅くなったせいか殆ど列の人集りはなくなっていた。
「次はディアソムニアの人達だけど…俺はマレウス・ドラコニアと喋んのは無理だかんね?」
「分かってるよ…もう…僕が行けば良いんでしょ」
しょうがないなという呆れた表情でいう監督生へありがとうというポーズをした後、監督生とグリムはディアソムニアのセベク、シルバー、リリア、そしてマレウスが座る席へ向かった。
「あの、すいません会話中に」
「?なんじゃ?その顔だと、何か事件か?」
話が早くて助かる。とホッとした。
「実は最近……」
「成る程……そういうことか…それは何かあるかもしれんのう…。わしらの寮生は問題あるまい。じゃが最近、たまにとんでもない量の魔力を感じることがあるのじゃ。それもマレウス以上にのう。」
「ああ。僕でも凄まじいと思うほど。」
それほど…?と監督生は身体が震えた。
「セベク、お前は学年が一緒じゃろう。調査に手伝ってやればどうだ?」
リリアがにんまりと笑い何も言い出せないセベクは口を歪めさせていた。
「でも…」と何か言いたげだったが、マレウスの一押しで完全に完敗し、監督生の方へ仕方なさそうにやってきた。
少し申し訳なさそうに頭を下げ、セベクを連れてエース達の所へ戻った。
「エース!デュース!セベクが協力してくれるっ…て…」
監督生は段々と喋る気力を無くした。それに気になったのかセベクは監督生の顔色を頭一個分くらい背の高さで覗き込んだ。
セベクは監督生の目を見るにほんの少しの恐怖を体で感じた。震える監督生の目の前には、まるで意思のないような目をしたエースとデュースが口だけで楽しそうに話していた。
「二人…とも?」
監督生が震える声で問いかけた。
「あ?お前かよ…」
エースが監督生に対して怠そうに、面倒くさそうに溜息を吐いて、ゴミでも見るかのような目で此方を見てきた。
「もういいって、お前、目障りだから。どっか行ってくんない?」
その冷たいエースの声と顔は監督生だけではなくセベクの背筋を凍らせた。
「ああ。エースの言う通りだ。今更なんだ。もうお前は俺等とは関係ない存在なんだから。」
デュースまで…と監督生の涙腺は緩くなった。
まるで監督生と突き放すようにエースがグリムの手を引き自分の元に引っ張った。
少し涙が出そうになったのに気付き、何かがおかしいと思ったセベクは軽く舌打ちをして監督生の手を引いて自分の元に寄せ、周りの人に監督生の泣き顔が見えないように右手で隠した。そしてそれと同時にその場から急いで2人は離れた。
「何なんだ彼奴等…!いつもと様子が全く違うではないか!!!」
相変わらずの大きな声で監督生へ言った。
「そうなんだよ…さっき話した通りの現象がついにエースとデュースまで起こっちゃって………」
「なるほどな…僕にもよく分からないが彼奴等は自分の意思で言っているのではないんだよな?」
「…………そう、信じたい…詳しいところわかんないけど…」
監督生はもしも自分の意思で動いてたとしたらと考えれば考えるほど涙が浮かんで来た。
「ああ、もう…!!!」
セベクが少し呆れたように監督生を個室へ連れて行った。
「彼奴等があんな調子ではまともに授業を受けれないだろう。本当はサボりは良くないが……今は別だ。ここでしばらく休んでいろ」
そういってセベクは監督生を近くの椅子へ座らせた。暫く使われていなかったせいか少し冷たくて埃がついていた。
次の授業で自分がそこを離れるまで監督生にセベクはずっと寄り添っていた。
エース、デュース、エペル、ジャック、セベク、そして監督生はいつも一緒に何かをしたり、遊んだりしていた。とても仲の良かったためセベクも監督生へ同情してしまった。
セベクは一人でエースとデュースに直接聞いてみることにした。監督生が辛い顔をするのを見たくなかったからだ。
「おい!エース、デュース!!」
廊下中に響き渡るセベクの声に周囲の人はギョッとする。いつになってもセベクの大声にビクリと驚かない人はいない。
「あ?何?なんか用?」
エースがいつもの調子で振り向いてきた。デュースも「セベクどうした?何かあったら言ってくれ」と変わりようがなかった。不思議と違和感を抱いたセベクは監督生の話題を振ることにした。
「お前等、監督生の事について何か知っていることはあるか」
そう口にした途端、エースとデュースの顔色は一気に変わり果て、目は冷たく、感情の入りの欠片もない風になってしまった。
セベクは心臓が跳ね上がった。彼らに何が起こったのか。何が起こっているのか。何が気に食わないのか。それらを聞いただけで2人は「お前は彼奴の味方すんの?」と問いかけられ、暫く何も言えなくなってしまった。
「…貴様ら!どういうつもりだ…!!」
やっと言葉が出てきたと思っても、エースはセベクの肩をぽんっと軽く叩き「お前もあの人に従ってりゃあいいんだよ。」と言った。デュースも頷き、「あの人は凄い人だからな」と褒め称えるような発言をした。
「…!何だ、彼奴等とは……、!!」
セベクは一言口にすると走って反対方向へ走ってしまった。
「なんなんだろ、彼奴」
「あんな監督生に構うなんて、良いフリにも程があるよな」
「な、どーせ彼奴は死ぬんだしどーでもよくね?」
「ふっ、…ああ。そうだな」
二人は暫く楽しそうに会話を続けた。
次々と変になっていく生徒、友達、この状況が過去の自分に想像ができただろうか。
最初は不安だったけれど、段々共にいることで沢山の思い出を作り、仲を深めたはずなのに。それなのにこのような事態になってしまったこと。それが頭に回り続けていた。
セベクが冷たく冷えた空き部屋に来た時の顔はとても辛そうで、何かを言いたそうだが言うのも迷うような感じに口を歪ませていた。
監督生は青くなった口を震わせるばかりだった。
その日はグリムを学園に残してオンボロ寮に戻ることにした。グリムはエースとデュースのところへ行ったっきりだったが、帰ってくるだろうという思いで置いてきてしまった。
一人ぽつんとオンボロ寮の自室のベットに座った。涙が自分の手の甲に落ち、冷たさを感じる。
「どうしてだろう2人までそうなっちゃったら…」
考えたくない。
だが頭に嫌というほど思い浮かんできた。
でも何故監督生に対してこんなに冷たいのか。それが気になって気になって仕方がなかった。自分自身に何か問題があるなら改善する。だから言ってほしい。あの感情のない目は、自分に失望しているのかもしれない。最初はそう思った。だが、エースとデュースは少し急すぎたのかもしれない。ディアソムニアの人達と話している間に、2人の身に何が起きたのか。
セベクにもこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。思えば自分に協力してくれた人が今の所皆やられてしまっていた。次はセベクなのかもしれないと監督生は焦っていた。
その日は疲労とストレスでそのまま布団で寝てしまっていた。
4
それから数日が経った。
エースとデュースが変わってしまってから状況は一変し、段々とおかしくなっていた状態から、大勢の人が監督生を敵対視をするようになった。
最初は感情の欠片すらなかった目をしていたアズール、ジェイド、エース、デュース、話によればフロイドもジャミルもカリムも同じ状態だったらしい。だがその人達は全員、元通りの瞳に戻っていた。
だがその人達や、他の人も含め、暴言、陰口、いじめ、暴力、等、これらを本来ならやらなかった生徒が監督生へやってしまう人が続々と出ていた。
監督生はボロボロになった精神を何とか残りの変わらない生徒たちへ笑って誤魔化したが、一度傷ついた心は一度紙を破いたら二度と元の綺麗な紙には戻れないかのように、監督生の心はもう復元ができないぐちゃぐちゃの状態へと化していた。
リドル、レオナ、ジャック、エペル、イデア、マレウス、リリア。この7人だけが唯一の監督生の味方だった。
それ以外はもう、監督生の事を見向きもしなかったり、暴力を振るったり、暴言を吐きつけたり、陰口を言ったりと、ほぼ学園中で監督生をいじめる事態が起こっていた。
唯一の残りの人達はこの現状の犯人を探すことにした。監督生は反対したが、リドルもジャックもエペルも、全員がその黒幕の正体を暴こうとしていた。
その日はまず監督生への事情聴取をするためにセベクが慰めてくれた時に一度来たことがある空き部屋に入った。あの時は優しかったセベクも、今では目が合うだけで睨まれる。だがそれは最初のこと。今では眼中にもないらしく、声もかけられない。いつも女生徒とマレウスのみに話しかけない。まるで女生徒は本来ならではの監督生の立場かのように。
オンボロ寮には女生徒がいるため、気軽に利用はできないという結果になった。
レオナがここは埃があるだ蜘蛛の巣があるだ汚いだ言っていたが監督生が何とかおさめ、レオナは舌打ちをしたが話に集中し始めた。
「監督生、おかしくなったのはいつの日だ?」
リドルが怖がらせないように優しく監督生へ問いかけた。監督生の精神面も危ないということに気付き、彼なりの気を使ってくれていたようだ。
「確か…転校生が来て次の日くらいですかね…」
その回答に全員はハッとしたような顔を見せた。
「ああ。何だ簡単じゃないか。ありがとう監督生、おかげで黒幕の正体が分かったよ」
リドルが自分の苛立ちをおさめるかのように息を吸って吐いてを繰り返していた。彼の唇はとても震えていた。
「それだけで?!」と監督生は驚くが全員深く頷いて話し始めた。
「黒幕は最近転校してきた女生徒だろ。彼奴が来てから様子が妙に変だ」
「ああ。僕も思った。ジェイドはいつもと変わらないと思っていたけど監督生への態度が明らかに一変していたと聞くと、彼女は監督生への感情をなんらかの魔法で操作している可能性もある。」
「そうするとなると彼女の魔力はとても強力じゃのう。この学園に其奴が来てから魔力量が妙に増しておる」
黒幕の正体が分かったとしても、証拠と対処を考えなくてはいけない。今回は自分たちより強いかもしれない相手に真っ向から戦っても無駄だと誰もが思った。あのマレウスですら。
「話を聞くかぎり彼女の魔法を唯一防げていたのはフロイドだ。フロイドのユニーク魔法は魔法を逸らす事が出来るからな。」
「でも、結局やられてるってことはフロイドのユニーク魔法に2度目はなかった。ということか」
フロイドも結局は彼女の操り人形になってしまった。もうラギーやジャミル、ジェイドのような心理を操ったり、体を自由に動かさせたりできる人もいない。
「なら、お主のユニーク魔法ならどうじゃ?リドル」
リリアが問いかけるもリドルは「難しいですがやってみる価値はあるかもしれません。でももしかしたら破られる可能性もあります」と険しい顔を見せた。
「なら、リドル先輩の所まで誰かが誘き寄せる必要がありますね」
「じゃあエペル氏とジャック氏が同じ1年として転校生をリドル氏とのお茶会に誘えば自然的にいけるんじゃないすか?」
タブレット越しに発言をするイデアにエペルとジャックは「やってみます」と言い強い顔をみせた。
「もしも僕が失敗した場合に直ぐに太刀打ちができるように他のメンバーをハーツラビュル寮の薔薇の迷路で待機させよう。彼処ならきっと彼女を逃さないだろう」
「ああ。俺も夢ん中であの迷路には苦労させられたからな」
レオナはリドルの夢の中の事を思い出して溜息をついた。
未だ相手の強さも、どんな魔法を使うのかも正確には分かっていないため対処法に悩む。
今はそう、考える余裕がある。だが、災いは突如として起こった。
そう。先程までは生き生きとしていた人達が度々動きを止めた。一つの線を切ったら沢山の線も同時に切れるように、レオナとイデア以外がショートした。
「っ…!!」
監督生は動かなくなった人達から一歩、二歩と足を後ろへ引きずった。レオナも尖った八重歯をむき出しにして舌打ちをして「何が起こってる」と苛ついていた。レオナはマジカルペンを構えて辺りを見渡し警戒を続けていた。イデアは相変わらずで監督生の後ろに隠れた。
暫く経ち、何もないかと思われた人達が、一斉に目を開いた。
「…!目を覚ましたぞ」
レオナがそういうと監督生は顔を青ざめた。
「…いや……違う。これは…」
その目の奥にいたのは、いつもの表情をした皆だった。だが、目を見開くとき、微かに、アズールやジェイド、エースやデュースがなっていたあの“目”になっていた。その一瞬のことを監督生は見逃さなかった。
あのトラウマをそう早く克服はできない。
「君、何故ここにいるんだ。今すぐここから離れろ!!!」
「っ!!!」
ビクリと監督生の肩が上がった。心臓が跳ねた。リドルがマジカルペンを構えながら監督生を睨んだ。
監督生はまた一歩後ろに引き下がった。
「おい監督生!どうなってんだこりゃあ」
レオナがいつもと様子が違う監督生をみて困惑していた。
だがその質問に応じられず、監督生は口を震わせていた。
「人の子よ。これ以上僕の前にその姿を見せればどうなるか分かっているだろうか」
マレウスが手から黄緑色の炎を少しだけ出していた。その炎は少しでも、血の気が多かった。
「ツノ…太郎……」
監督生はやっとのことマレウスの事を呼んだが、彼の怒りは収まるどころか悪化してしまった。
「お前…どの口で僕をその名で呼ぶ」
物凄い怒りと共に近くへ大きな雷が堕ちた。
レオナが急いで監督生を庇う。
「キングスカラー…貴様はそちらの味方をするのだな…なら、2人まとめて仕留めるだけだ」
そういって監督生とレオナへ沢山の雷をおとした。
「この部屋からでんぞ!!」
レオナが勢い良く監督生の手を引っ張りその場から早くに脱出するために全力で走った。そしてその時ついでにレオナは咄嗟にイデアのタブレットを掴んだ。
監督生はもう何も考えられなくなっていた。
只々、グッと目から溢れそうになる涙を一生懸命こらえていた。
6
「……で、どうなんってんだ彼奴等」
レオナが退屈そうに胡座をかいた足に肘をのせて言った。
「それが僕にも………詳しいことはよくわからなくて…」
サバナクロー寮にある一室。咄嗟に逃げ込んだのがレオナの部屋だった。
マレウスが怒って雷をずットおとしてきたため逃げる事が非常に困難だった。なんとかサバナクローに続く鏡へ入り込み逃れることが出来た。
「だがこういう状況は前にもあったんだろ?」
「はい…。」
少し長い前髪が目に被って良くは見えないが監督生の目からはキラリと光る涙が浮かんでいた。
「……ったく……」
レオナはそう一言いうと監督生をそっと自分の胸元へと寄せて抱き締めた。優しく、とても温もりとともに安心が感じられた。自分はお前の味方だ。と、口では言っていないのに、自然と頭に入ってきた。
「あり…、が…とうござい、ます……」
「……何がだ」
「あっ……いえ…何でも……」
一人だけでも自分の事をわかってくれる人がいてくれるということがこんなにも心強い事だとは知らなかったと監督生は思った。だが、エースもデュースもグリムも、他の人もいない中で監督生の心はまだ不安の中だった。
「……あ、あの〜……」
「…?」
少し低い声が後ろからして、何かと思い振り替えるとイデアのタブレットが浮いていた。
「…!!」
監督生が目を見開くとイデアは早口で話し始めた。
「あ、、あのさ…す、少しお楽しみの所悪いんですけど、あっ、いや、け結構いい雰囲気だし結構なお楽しみのところすっごい悪いし怖いし申し訳ないんっすけどこれからどうすんの?だってもうリドル氏もリリア氏も、あの史上最強とも呼ばれているマレウス氏だってもう味方じゃないしこれからどうしょうもなくない??もう無理だって、結構ゲームオーバー、いやもう確実にゲームオーバー!!!!」
「……チッ…いちいちうるせー奴だなテメェーは」
かったるそうにタブレットを見るレオナの顔は半分どうしようか悩んでいる顔だった。
「こっちだってわかんねーっつーの…。何であの場で彼奴等がかかったのか、俺はどうしてかかんなかったのか、何一つわかんねぇーよ」
レオナは自分が分からないことに腹をたてていた。少しでもあの転校生の目論見が分かればこの事件を解決できるかもしれないのにと。
すると部屋の窓の隙間からラギーが放心状態のままフラフラと何処かを目掛けて歩いている様子が見受けられた。
「………!そういえば、ラギー先輩もフロイド先輩もジャミル先輩も、皆不規則な時間で行動をやめてフラフラと一定の方向の何処かへ向かっていってるって言ってた……」
監督生がつぶやくとイデアは「それだ!」と叫んだ。
「マレウス氏やリドル氏みたいに勘の鋭い人以外の人がその状態になるのをまって、その状態になったらそいつらの背中を追いかければいける説ない!?」
イデアの発言に「それだ」と二人は少し表情を明るくした。
「こんな機会は滅多にない。……ラ、ラギー氏を今からつけるしかない。」
「…チッ…とっとといくぞ草食動物!!!」
そう言うのと同時にレオナは監督生の手を引いて部屋を出た。
レオナの足の速さにはいつも圧倒されている。いつも風圧がとても凄まじかった。
そして暫くの間、ラギーをつけ回したところ、校庭まで辿り着いた。校庭まで辿り着くまでに植物園、コロシアム、教室等様々な場所を歩かされた。お陰でレオナはもう面倒くさがっていた。
校庭から見える無数の雲が呑気に青空を泳いでいる。
虎視眈々と三人でラギーを見つめていると人の気配を悟ったのか此方を振り返った。
急いで太い木の後ろへ隠れたがラギーがまたあの“目”で此方を睨んでいた。そしてマジカルペンをそっと取り出した。彼は此方の気配に気付き威嚇を続けていた。
すると、ラギーの方からボソリと感情が一つも感じられない声を発した。
「あの方のためなら俺は何だってするッスよ。たとえレオナさんだろうがイデアさんだろうが。」
その言葉に鳥肌が立ち、逃げようとした。たが、イデアのタブレットが動かなかった。
「何してる?!」
そうレオナが叫んでもタブレットはビクともしなかった。只のタブレットと同一化してしまった。
「イデア先輩…!!」
監督生が顔を青ざめながら呟いた。だがその声はイデアの心には届くはずもなく、聞こえもせずその場の空気に消されていく。
「レオナ先輩、もういきましょう。僕もうどうなってるのか………!!」
涙をこらえる監督生はレオナを見た瞬間涙腺が一気に緩んだ。
「レオナ先輩……、」
監督生は絶望したように肩を落とした。声も出す気力がなくやっていき段々と弱くなっていた。
監督生が見たのはまた同じ光景。レオナが放心状態のままその場で突っ立っていた。完全に無気力になってしまった。綺麗な茶髪の長い髪を頬に垂らして揺らしていた。
そしてレオナが目を開けるとまた一瞬だけ、目がギランと赤く光り出した。
レオナは口をゆっくりと開けると眉間にシワを寄せて監督生に向かって怒鳴り立てた。
「おいテメェーら!!ぼーっとしてねぇーで彼奴を殺せ!!!!」
監督生はレオナが口にした言葉に「死」という言葉が頭をよぎった。目の前に「死」があるような恐怖心。その場に立っているのもやっとなくらい怖かった。
その場の空気がすべて棘のように自分へ刺さるように感じられる。一生懸命走ったが元々運動神経が悪い事と恐怖のあまりに震える足のせいでレオナにはすぐに追いつかれた。そして首根っこを掴まれ思いっきり投げられた。
地面の草に手足が擦り、皮膚が薄くなり血がじわじわと滲み出ていた。
手の傷口を軽く抑えて逃げようとした。だが周りには自分の事を敵視する数々の光る闇のような瞳がいくつもあった。
ハーツラビュル、サバナクロー、オクタヴィネル、スカラビア、ポムフィオーレ、イグニハイド、ディアソムニア、これらの寮長や生徒達が監督生へマジカルペンを向けていた。
「ご、ごめ…ごめんなさ……い」
口から出るのは情けない声と言葉だった。
「キミが何の罪を犯したのかまだお分かりではないのかい??!!キミが犯した罪は重罪だ!!!今!直ぐに!!この学園から出ていってもらう!!!」
リドルが顔を林檎のように赤くして冠のついた杖を此方へと向けた。
「まだ懲りないのか。人の子よ。抗えば痛みが続くだけだ。」
前だったら一緒にいただけで心強かったマレウスも今ではもう敵で、決して此方の意見など聞いてはくれない。
「もういいよ。だりぃーからとっとと締めよーぜ」
気力をなくしたかのようなフロイドの目は赤く、残酷に映っていた。
一体皆から自分の立場がどうなっているのか。どういう風に映っているのか。何故皆は自分を責め立てるのか。
「全ては君が悪いんだ。何故分からない。お前はこの学園の生徒を殺したり、転校生に毎晩暴力を振るい限界というまでに罵って彼女を追い詰めて殺そうとしたそうじゃないか」
ジャミルが監督生へ存在しない事実をきっぱりと言った。
「そんな…!僕はそんな事本当にしてません!!」
「嘘を言ったって無駄だ!!」
必死で否定する監督生をリドルの鋭い口が遮った。
「…!でも!!本当に!!僕は暴力を振るったりも罵ったりも人を殺すことも一切やってない!! 」
「そんなこと言って誰が信じんだよ」
「…!」
目の前に立っていたのはエースだった。今まではずっと楽しく隣で過ごしてきたのに。もう彼は自分の事を只の憎い“敵”としか認識してくれていないのだと。
自分は本当のことを言っているのに誰も信じてはくれない。この場にいるものがこの存在しない事実を本当のことだと信じ込んでいる。
いつもの皆ならば絶対にそんなことはしない。監督生の話しはちゃんと最後まで聞いてくれる。なのに。なのにと考えるうちに堪えていた大粒の涙が目からポロポロと溢れ始めた。
「今更泣いてごめんなさい?ハッ、笑えない冗談すぎるって。そんな事しといて許せるはずねぇーじゃん」
冷たい視線が此方を刺す。一言一言が重い槍のように心臓を迷いなく突き刺す。
「なぁ、☓☓☓」
そうエースがチラリと後ろに目をやった。
監督生もつられてエースの目の方向を見やった。
するとそこには、女生徒が立っていた。
予想はついていた。既に黒幕の正体は分かっていた。
なのに、目の前に現れたことでショックさが増した。
涙でよく見えない視界を目を擦り涙をぬぐって視界を明るくした。
「転校生ちゃん、コイツに暴力振るわれてたんだよね。」
「はい。そうなんです。」
「怖かったよね。でももう大丈夫!オレ達がいるし!」
ケイトは転校生の肩に手を置き親しさを見せた。
「どうして…!?証拠もないのに…!」
「証拠?それならここにちゃーんと、おさめてあるよ」
「え…?」
ケイトはスマホを監督生の目の前へ突きつけた。スマホの画面には動画が表示されてあった。
監督生はその動画の事実無根の内容に腰を抜かした。
その動画は監督生が人をナイフで刺して殺したり、女生徒を殴ったり、髪の毛を掴み罵ったりしている映像が映し出されていた。
「……な………に……こ、れ……」
もう頭が真っ白になった。
段々と自分の事もよくわからなくなってしまった。
震える監督生を皆は気にすることもなくマジカルペンを再び強く握った。「覚悟はいいかい?」という恐ろしいリドルの顔を見た瞬間、リドルの持つ杖から激しい炎が放たれた。必死に避けたが監督生の周りを囲うかのように焼き尽くし逃げ場を一瞬でなくした。火力が高いせいか全身が熱く、頭が痛くなる。
その後、エペルとジャックが箒に乗りながら魔法を放ち、フロイドとジェイドは悪魔のような笑みを見せながら監督生を攻撃し続けた。マレウスも、気にすることもなく雷を撃ち続けた。
ただただ鳴り響く戦闘音。
監督生は全身ボロボロの血だらけになりつつも、一生懸命、一生懸命、走り続けた。
足がくたけ散っても、手がなくなっても、自分を限界まで生きさせた。
辛い。痛い。苦しい。
監督生はそれしか感じない。
目から溢れるのは大量の涙で、顔中の傷によく滲みた。
体力が限界に達し、アキレス腱がやられ監督生は地面に勢い良く投げ飛ばされる形で転んだ。
耳が擦れて血だらけになってしまった。
そんな監督生を見ながら、全員が監督生の周りを囲む。
その時、監督生は終わりを感じた。
もう辛さも、痛さも、苦しさもなかった。
ただ一つだけ。
一つだけあったのは。
寂しさだった。
あんなに仲良くしてくれた人達の前で、その人達の手によって、自分が今、この場で殺されてしまう。そう考えると、どうしても、寂しさが心に残った。
最後に。と思い監督生は最後の力を振り絞り、声を出した。
「皆、愛してたよ、死んでも、本当のみんなは、だいすきだよ」
涙が溢れた。
一斉にマジカルペンを振りかざす。
無数の光が放たれ監督生を襲った。
暫く辺りは白い強い光に覆われて、気がついた時には、もう、監督生の体には魂は、宿ってはいなかった。
7
それから暫くが経った時のこと。
監督生が死亡してから数ヶ月が経った。
もう3年生は学園を離れ様々な会社や研究をしにいく季節となる。エースも、デュースも、皆、留年せずに進級することができた。
こんなに嬉しいことは他にないだろう。そう、思っていた。
だが、何故か心が痛み始めた。
女生徒もいる。友達もいる。全員が進級することができた。
なのに。
なのに。
心が、監督生を殺した日から、ずっと、ずっと刃物で突きさされるかのように痛かった。
グリムは記憶を改変させられ、女生徒の相棒となり、監督生のことなど全く覚えてはいなかった。
女生徒は見事に監督生の立場を勝ち取り、今ではいわゆる愛されキャラとして学園生活を優雅に過ごしていた。
そして、ほぼ全ての人が監督生を忘れた頃の5年後
彼女の魔法が全て解けた日が来た。
理由は彼女の目的はただ、学園にいる間だけ、皆に愛されていればいいと思っていたからだった。
学園を卒業した彼女は皆と生活する場所とは遠くに行ったため、魔法の持続意味がなくなってしまったからだ。
グリムは邪魔になったため、そこらのゴミ捨て場に捨ててしまっていた。
なにせ、彼女は最低な女なのだから。
グリムは1
その時、魔法をかけられた全ての人が心に空いていた空洞のような場所が、一斉にはまり始めた。
ーーーーその時
のしかかった自分の犯した罪に、心が耐えられなくなった。
ーーーーーーーーーーー
誰もが忘れていた監督生の存在。
監督生は皆から愛されていた。
自分達は監督生を心から愛していた。
それなのに。
それなのに自分の手で彼を殺してしまった。
その記憶を思い出すだけで、体と心には絶望の嵐が降り注いでいた。
元ナイトレイブンカレッジ生らは、お互いに連絡を取り合い、元々自分たちが通っていたナイトレイブンカレッジへ集合することにした。
それは寒い、寒い、日の事だった。
8
「ああ。皆久しぶりだね」
リドルが気力をなくしながらも一生懸命皆へ最低限声をかけた。
リドルの目の下にはクマがついていた。それはリドルだけではなく他の全員も目の下にクマを浮かべていた。
「………全員状況は同じようね」
ヴィルは空を仰ぎ見ながら言った。
「取り敢えず、監督生さんの死体を探しましょう。まだ、きっと何処かに骨として残っているはずです」
アズールは学園内の方へ向うと、皆もそれについていった。
暫く、監督生の死体が何処かにあると信じ、何時間も、何時間も探し続けた。
その日は学園が休みだったため探す時間の余裕ができた。
そして探し続けてから4時間後、皆自分でもよく諦めなかったな。とどこかで感心していた頃。監督生の死体が見つかった。
見つけたのはエースとデュースだった。古い物置と化した元あった空き部屋に、監督生は骨にならずに、顔や体の形を残したまま、静かに息を引き取っていた。普通なら絶対に骨になっているはずの監督生が、まだ5年の月日も経てもその体を維持し続けていたなんてと考えるだけで、二人は涙を流した。元々仲が良く一緒にいたマブ的存在。そんな立場だったからこそ、監督生を操られてたとしても、自分の手で殺してしまったことがたまらなく悔しく、辛いのだと思う。
全員、彼女に操られていた頃の記憶も、全て覚えていた。
勿論仲が良かった頃の記憶も、共に冒険をした日々をも。
監督生の死体を見つけてからすぐに全員に連絡をとり、監督生を広々とした外へ運び出した。
「監督生、ずっとそんなせまっくるしーとこいて、疲れただろ」
エースがそっと監督生の髪を撫でて、優しさで包みこまれるかのような声で言った。
デュースも監督生の周りにしゃがみ込み、監督生の手をぎゅっと、強く握った。
「ごめんな……!!監督生……。ずっと、ずっと、ずっと一人にさせて。辛かったよな。今までずっと一人で生きてきたのに……。5年間も……ずっと、気づいてあげられなくて……」
涙がただただ止まらない。視界が涙で覆われる。
監督生の手に沢山の涙がおちていき痩せ細って乾燥した監督生の手にじわじわと染みていった。
「あの時…僕が彼女の魔法に囚われていなければ、監督生さん。貴方はまだこの世にいたのですか」
ジェイドは監督生へ問いかけた。
だが、聞こえていたとしても、答えられるはずもなく、静かな風とともに消えていった。
「情けねっ………こいつ一人守れないで何が王子だ。最後まで残ってたって、誰一人倒せなきゃ意味ねぇーんだよ……」
最後、監督生を目の前にして自分の意識を喪い監督生の事を殺してしまったという記憶が頭を過る。
長い髪を一つに束ねたレオナはただただ自分を恨み続けることしかできなかった。
全員。ここにいる全員、監督生を殺した罪があるのだ。
監督生はツイステッドワンダーランドという異世界にとばされて、ずっと一人で不安だっただろうに、学園の人々と、できる限り仲良く、笑顔で接し、沢山の思い出を作り、過ごしていた。
そこで得た信頼も多いだろう。きっと監督生は大変だっただろう。それでも、監督生は諦めずに、きっと元いた世界へ帰れる。そう信じてこのツイステッドワンダーランドという名の世界で生きてきた。なのに。信頼を築き上げてきた仲間にしばられ、殴られ、陰口を言われ、殺されてしまうなんて。監督生にとってはどれだけ辛いことか。
おまけに相棒だったグリムまで暴れ、今はゴミ捨て場に一匹取り残されているなんて。
そんな辛いことは他にないだろう。
「辛い思い、、させて……ごめんな………ごめんな………監督生…ごめん、ごめん……ごめん……」
誰もが泣き叫んだ。
監督生の死に。5年越しの「ごめんなさい」という、6文字の言葉を告げた。
監督生は風に髪を靡かせているだけで、誰の言葉にも決して返事はしなかった。
でも、監督生の魂は、まだそこへ宿っているように感じられた。
全員、声を上げて、監督生へ泣き叫んだ。
9
寒い中、一匹、いや、一人、寒さの冬の中に取り残された者がいた。
グリム。
監督生という存在を思い出した時の悲しみは計り知れないほどだった。
本当の相棒を失った今、生きる道も、未来も、何も見えなかった。
ただ、寒く、震えながら、何もない中、本当の子分を探し続けるグリムは、もう限界に達していた。
「…………こ……、、……ぶ……、ん」
そう、最後の力を振り絞り声を出した。
グリムの魂はゆっくりと空へ舞い上がっていった。
10
校庭は、泣き叫ぶ22人の元ナイトレイブンカレッジ生達で溢れていた。
どうしてあの時監督生の身に何かが起こっていることに気がつけなかったのか。
どうしてあんなにもわかりやすかった黒幕の正体に気づけなかったのか。
どうしてもっと前から策をうてなかったのか。
どうしてこんなにも自分が未熟なのか。
どうして。どうしてどうしてどうして………。
どうして、あんなにも大切な監督生を、この手で、殺してしまったのか。
自分を殺して監督生の所に行きたいと思うくらい。自分には地獄がお似合いだと思うくらい。
彼らの心の傷というものは大きかった。
きっと監督生は今頃疲れ果てているだろう。
目覚めることが、絶対になかったとしても。
奇跡は起きないとしても。
きっと監督生の心は未だ生きているだろう。
「監督生は自分の掌で殺した。」
「誰かが殺したんじゃない」
「俺たちが殺したんだ。」
「僕たちの手で。」
「それが彼女の意思だったとしても」
「それに抗えずにいた自分が憎い。」
「この手で監督生を殺したくなかった」
「まだ生きていてほしかった」
こんなところで、自分達をおいて監督生が先に旅立ってしまったことが、辛く、とても悲しかった。
もし会えるとしたら、なんて考えない。
彼は元の世界で幸せに暮らしていてほしい。
それが、全員からの願いだった。
自分たちが監督生の元の世界に帰りたいという願いを砂に変えたのだから。
だから監督生にはもうここにいなくていいよ。と。
全員が監督生の身により添い、全員が一輪の薔薇を監督生の周りにそっと置いた。22輪の薔薇は監督生を囲むようにして広がった。
その時、監督生の口角が少し上がったように感じられた。
それに、心がぎゅっとなった。
「監督生、もし望みが叶うなら次は君の世界に連れて行ってくれないか」
デュースがそう言った。
「あっ、俺も連れてけよー」
エースも軽く微笑んだ。
「いいなーボクも連れて行ってほしいな」
「貴様ら!僕も連れて行け!!勿論若様も共にな」
「ハッ聞き捨てられねぇ。俺も連れてけよ」
エペルも、ジャックも、セベクも、困ったように笑った。
監督生があの体から段々と解放され、天へ舞っていく姿が感じられた。
全員その監督生の姿を空を仰ぎ見ながら眺めた。
そして、皆が口を揃えながら言った。
「ああ。これが自分たちのした罪か…………」
fin