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「引っ越しぃぃぃぃ!?」
いきなり隣の洗面所に引っ張り出されたと思ったら突然引っ越し宣言ですか!?
私は目を大きく見開いて驚いた。
「ちょっと、2階にも聞こえてしまうわよ。静かに。」「だーとーしーてーもーさ!なんで黙ってたの!?そんな大事な事!」「明希静かに!」
あっ。
私は軽く咳払いしてから、母さんをちょっとにらんだ。
「で、なんで引っ越しすんの?」「あのね、お父さんが働いてる会社が破綻しちゃったの。」「うん、それは知ってる。」「それで、新しいお仕事もすぐ見つかったんだけど、1番近いのが〇〇にあるらしいの。」「え………!?〇〇って結構遠いよね?往復に結構時間かからない?」「そうなのよ。だから、〇〇に引っ越しをしないかって話になったの。おじいちゃんもおばあちゃんも承諾しているわ。」「……別に私はいいけど、ナグはどうするの?」「それはもちろんナグも一緒に引っ越しするわよ。」「ふーん。まぁ母さんが無理でもおばあちゃんがそうしそうだけど。」
私は、内心モヤモヤしながら2階に戻った。
この土地を離れるってことは、天音や叶実とも離れ離れになってしまうってこと。
引っ越しはちょうど私が中学生になる春というだいぶキリのいいところ。新しい土地の中学校では友達作らない主義で行きたいなー……天音と叶実いるし。普通に連絡取れるし。
あれこれ思考回路しながら寝室に入ると、部屋に出る時はまだグースカピーと寝ていた天音が起きて、叶実も着替えをしていた。
「おは〜」「あ、明希ちゃんおはよう。このベットめちゃ寝心地よかったよ。」「同じく!」「えーありがとうー!着替え終わったなら、下でもう母さんが朝ごはんの準備してるから下行こー。」「オッケー。」
2人を家まで母さんの車で送ったあと、私が寝室を片付けているときだった。
とことことナグが部屋に入ってきた。
「あのさ、ナグ。私達引っ越ししちゃうんだって。」
私の声を聞き取ったのか、ナグは大きく目を見開いたような感じだった。
「お母さん達はナグも一緒に引っ越すって言っていたけど………。」
私は頭の中であのことを思っていた。
ナグの…ルナの元の飼い主と話した時だ。
「どうしてあんなかわいい猫ちゃんを捨てるなんて最低なことしたんですか………!?」「それは…………」
それから飼い主の女の人は、しずしずと語りだした。
「あの頃は頭に血が上がっていたんです…………建築会社の人と話し合って作った家なので、ずっと綺麗にしていたいと思っていました。ルナは家に来てからは、よく部屋を散らかすようになってしまって……最初の頃は怒らなかったんですけど、どれだけ綺麗にしても部屋を散らかすから、だんだんイライラしてきて………ある日家に帰ったら、ルナはいなくなっていました。」「そ……そうだったんですね………。」
ナグは私の家に来てからもよく部屋を荒らしてしまうことはあった。けれど、おばあちゃんが動物との関わりもたくさんあったから、その時その時で後始末を適切にしていたから、ナグも落ち着いたけど、確かに掃除し続けても散らかし続けたら、イライラしちゃうのは分からなくもなかった。
「ルナが家か出ていった原因は私にあります。私が家から追い出したようなものなのです。ルナを捨ててしまったこと、ずっと後悔しているんです。どうか、ルナを私の家に返してくれませんか。」「…………ごめんなさい。私だけではとても決断できません……。」
そう言ってあの件は一度落ち着いたけど、私達夢城家の引っ越しを機に元々住んでいた家に返してあげるのもいいけど…………
「……ルナ。ルナはどっちがいい…………?」
消え入りそうな声でつぶやいたけど、ナグには聞こえなかった。