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「……尊さん、私、すっごく楽しい」


「そりゃ良かった。旅行に来た甲斐があった」


彼はそう言ったけれど、私は小さく首を横に振る。


「旅行も勿論なんですけど、尊さんと一緒にいられるのが凄く嬉しい。それにこういう話をしてホテルで過ごすって、修学旅行みたいで楽しいんです」


「俺も楽しいよ。……六歳差だったら修学旅行に行けねぇしな。……大人の修学旅行だな」


「やだ、なんか急にエッチになった。AVのタイトルにありそう」


「なんでもAVにする……」


暗い中、尊さんが「ぶふっ」と笑う音がする。


「あ……っ、アニマルビデオだもん……」


「ぶふふっ……、ニャンニャンビデオなら、幾らでも見てぇな」


「ニャンニャンとか言わないでくださいよ。エッチ」


「どこが?」


「もぉ……」


私たちはそんな話をして小さく笑いながら、布団の中で手を繋ぎ、眠くなるのを待っていた。




**




翌朝は朝食ビュッフェで腹ごなしをしたあと、チェックアウトしてタクシーに乗り、西区にある白い恋人パークに向かった。


言わずもがな、北海道土産の定番のお菓子を製造しているところを見学できる、テーマパークだ。


建物はレンガ造りの洋館で雰囲気があり、窓辺に雪だるまの飾りがついている。加えて時計塔まであり、本当にテーマパーク感がある。


隣接する土地にはサッカー場があり、多分ここで試合や練習が行われているんだろう。


「ここ、夏場に来ると花まみれで綺麗なんだけどな。バラの季節はバラ園もやってるし、今度また、あったかい時にな」


「はい」


「中心部から少し離れているあいの里にはロイズの工場もあって、その周りもバラ園になってるんだ」


ロイズも北海道土産の定番で、生チョコで有名なチョコレートメーカーだ。


「ただそこは見学できなくて、石狩川を挟んだ所にある、ロイズタウンまで行かないとならない。JRでロイズタウン駅まで三十分近くかかるから、車で十五分程度のこっちのほうが近いんだ」


「凄い。駅名がロイズタウンなんですね。……まぁ、お楽しみはあとにとっておきましょう。北海道銘菓の根城を、一つずつ落とすんです」


「悪役みたいな事を言うなよ……」


「クックック……」


私は悪い顔をして笑い、館内に満ちるチョコレートの香りを胸いっぱいに吸い込む。


そのあとチケットを買い、館内を見学し始めた。


特に要予約ではなく、当日に飛び込みで行っても全然大丈夫だそうだ。


ガラス張りの向こうの模型を順番に追って、チョコレートができる工程を見たあと、プロジェクションマッピングの映像を見る。


私たちはイシヤの歴史を壁に描いたエリアを回ったあと、レストランをチラッと覗く。


ここで食べるのも魅力的だけど、尊さんが別途ランチを予定しているので我慢した。


なんとなくここでお菓子を買っていきたい気持ちがあるけど、尊さんが『荷物になるから、空港で買ったほうが効率がいい』と言ったので、そうする事にした。


観光が終わったあと、またタクシーに乗って中心部に戻るんだけど、尊さんは貸し切りタクシーを頼んでいて、同じ車で移動できるのはありがたい。


その分、費用もかさむんだけど、……あとで何かお礼しないと。


「朱里、温泉行く前に菓子買っとくぞ」


「えっ? お菓子ですか?」


「そ、オススメの店。昨日は『ラ・メゾン・デュ・ショコラ』のチョコレートを約束したけど、チョコレートもケーキも絶品の店だから、東京に帰ったあと用に買っておいて損はしないと思う」


「尊さんがそう言うなら、食べたいです!」


食いしん坊センサーをピンと立てた私は、迷わず即答していた。


「あらかじめ予約しておいたから、俺が目星をつけたのはすぐ受け取れる。朱里のミッションは、温泉で食べたいケーキを二店舗で一つずつ厳選する事。駐車場のない店だから、サッとな」


「えっ? 分かりました」


やがて、タクシーは広めの道路の脇にある、深緑色の外観をしたお店前に停まった。


「説明はあと。サッと行くぞ」


「はい!」


お店に入ると、ガラスケースに綺麗なケーキが並び、隣には色とりどりの宝石みたいなチョコレートも並んでいた。


横手には焼き菓子もあり、迷いすぎて挙動不審になってしまう。


タイミングよく人がいない時だったらしく、尊さんが「予約していた速水です」というと、スタッフが注文の確認と商品の用意を始めた。

部長と私の秘め事

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コメント

3

ユーザー

↓↓うん(*-ω-)♡ ケーキ食べた~い🍰💕💕

ユーザー

↓うんうん🫠食べたくなっちゃうよね〜🤤

ユーザー

あーん、ケーキ🎂食べたくなっちゃった(´>∀<`)ゝ

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