テラーノベル
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3話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
数日後の昼休み。
レトルトは、教室の隅でプリントを配っていた男子に、笑いながらお礼を言っていた。
「ありがとう、助かった〜」
ただの礼儀。普通の会話。
けれど――それを教室のドア越しから見ていたキヨの目には、違って見えた。
(なんで……また笑ってる)
(俺以外の人間に、なんで、そんな顔……)
キヨは拳をぎゅっと握った。
唇を噛み、息を吐く。そして──そのまま教室へ入っていく。
『レトさん』
突然の声に、レトルトはビクッとする。
「あっ、キヨくん……どうしたの?」
『ちょっと、来てほしい場所あるんだけど』
言うが早いか、手を掴まれる。
驚いたまま何も言えず、引きずられるように連れて行かれたのは――体育倉庫。
ガチャ。カチャン。
内鍵がかけられ、薄暗い空間に閉じ込められた。
「……キヨくん……?ここ、鍵……」
『レトさん、俺以外に、笑わないで。』
キヨくんの声は低く、震えていた。
怒りとも、悲しみとも違う。壊れかけた、危ない温度。
『俺の前では泣くくせに、なんで他の男には笑うの?
お礼?助かった?……ふざけんなよ』
「ちがっ、キヨくん、あの子はただのクラスメイトで──」
『じゃあ証明しろよ』
キヨがぐっとレトルトを壁に押しつけた。
背中が固い壁にぶつかる。次の瞬間、制服の襟が乱暴に掴まれた。
『“俺のもの”って言って。言えよ。今、ここで。』
「キヨ……く、やだ、こわ──」
『怖くてもいい。俺のこと、怖くなってもいい。
でも、“俺以外”を見てる方がもっと怖いんだよ』
叫ぶように、キヨはレトルトの口をふさいだ。
荒い息遣いのままキスが落ちる。
暴力的で、執拗で、愛情と嫉妬の混ざった――キス。
レトルトはもがきながら、涙をこぼす。
「やだ……やだよ……キヨくん……っ」
『俺がどれだけ、レトさんのこと好きか……
全然わかってないでしょ。
壊れてもいい。レトさんが泣いても、壊れても、
俺が全部、直してあげるから。』
「キヨ……くん……」
『ほら、泣きながらでも、俺の名前呼んで。
俺がいないとダメだって、教えて?』
キヨの手がレトルトの指に絡みつき、そっと耳元に囁く。
異常なまでの執着と乱暴な愛。
「….もう、こんな…の。嫌…だ」
涙でぐしゃぐしゃになりながら
小さく呟いたレトルト。
目を伏せて悲しそうな顔のキヨに
レトルトは気付かなかった。
あれ以来、キヨは変わった。
あれほどグイグイだったのに、今では廊下ですれ違っても目を合わせない。
話しかけても、どこかよそよそしい。
「……おはよう、キヨくん」
『あ、どーも』
まるで他人みたいに。
そして廊下の窓際、キヨはクラスの女の子と笑い合っていた。
(なに、あれ……)
胸が、ズキズキと痛む。
いつもならキヨがこちらを見ていた。
どんな時でも追いかけてきて、しつこいくらいに「好き」って言ってたのに。
今はそれが、ない。
──レトルトは、ようやく気づいた。
自分が泣いてばかりで、怖がってばかりで、
キヨの気持ちを拒み続けた代償に。
(あんなに俺ことだけ見てたキヨくんが……
いま、他の子と……)
視界が滲む。
悔しい。
寂しい。
どうして、あの時、もう少し素直になれなかったんだろう。
放課後、帰りの廊下。
レトルトは意を決して、キヨに声をかけた。
「ねぇ、キヨくん」
『……なに?』
その声はどこか冷たい。
優しさの皮をかぶった、距離のある声音。
「最近……冷たいよね」
『別に。レトさんがそれを望んでたんじゃなかったの?』
「そんな……っ、違うよ……!」
思わず掴んだキヨの袖。
その手を、キヨはゆっくりと解く。
『もう、いいかなって思ったんだ。
俺が好きって言うたびに、レトさん泣いてたからさ。
……俺、そんなにレトさんを傷つけてたんだなって、やっとわかった。』
「ちがう、そんなつもりじゃ……
俺…その、ただ……こわくて……」
『じゃあ、俺が他の人に行っても、文句ないでしょ?』
ニヤッと笑ったその顔は、作りものの笑顔だった。
でも目の奥が、ほんの少し濡れていた気がして、
レトルトは、そこで耐えきれなくなった。
「……いや、いやや。……キヨくんが他の人といるの、見たくない」
『……』
「俺…ずっと見てた……
俺以外の子と話してるの、笑ってるの……
すっごく、胸が苦しくなって……」
言葉が途切れた。
涙がぽろぽろ落ちる。
キヨが今度は一歩、近づいてくる。
『じゃあ、言って。
“俺のものだ”って。
言わなきゃ、もう戻らないから。』
レトルトの喉が、ひくひくと震える。
「……キヨくん、お願い……
俺だけ見て……
俺、キヨくんじゃなきゃ、だめだから……
俺はキヨくんのものやで」
その瞬間、キヨの瞳が濡れた。
無理に笑っていた仮面が、ゆっくり崩れる。
『ほんと、バカだよね。俺。
こんなに好きなのに、一度は諦めようとしたとかさ。諦められねぇよ。ずっと好きだったんだから。』
優しく、でも強くレトルトを抱きしめる。
『もう逃げんなよ?」
深く響くその言葉はレトルトを甘く束縛する愛の言葉だった。
つづく
コメント
2件
ありがとうございます💘 共依存系ゾクゾクしていいですよねぇ🤤
このドロドロな共依存みたいな感じとてもすこです、、