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#宮舘涼太
クリオネ?
938
#渡辺翔太
コアラと木の実
1,382
その日。
いつもの時間を過ぎてもーー
目黒蓮は来なかった。
病室の時計。
秒針の音だけが、やけに大きく聞こえる。
「……」
〇〇は、じっとドアを見ている。
コン、コン。
いつもなら、聞こえるはずの音。
でも――
来ない。
「……」
胸の奥が、ざわつく。
「……なんで」
ぽつりとこぼれる声。
分からない。
名前も、関係も、何も。
でもーー
「……来るはず、なのに」
理由のない確信。
心臓が、少しずつ早くなる。
息が浅くなる。
「……やだ」
小さく、首を振る。
じっとしていられない。
ベッドから降りる。
スリッパも履かずに、そのままドアへ。
「……どこ」
廊下に出る。
誰かに止められることなく、〇〇は歩き出す。
「……どこに、いるの」
足取りは、不安定。
それでも止まらない。
気づけば、病院の外。
冷たい地面。
裸足のまま。
でも、そんなことどうでもよかった。
「……っ」
走ろうとする。
でも、うまく力が入らない。
ぐらっと体が揺れて――
ドサッ
砂利の上に、転ぶ。
「……っ、い……」
手のひらが擦れて、赤くなる。
でもーー
「……やだ」
すぐに立ち上がる。
また、走る。
「……どこ……」
また、転ぶ。
膝が擦れて、砂がつく。
痛い。
でも、止まれない。
「……会いたい」
ぽろっと、涙が落ちる。
「……誰か、分かんないのに……」
自分でも分からない。
「……なんで……っ」
息が乱れる。
視界が滲む。
それでも、足を動かす。
その頃ーー
「〇〇ちゃんがいない!?」
看護師の声が、廊下に響く。
「さっきまで部屋に……!」
慌ただしくなる空気。
「外に出た可能性があります!」
複数の看護師が、急いで病院の外へ向かう。
「〇〇ちゃん!!」
呼ぶ声が、あちこちに響く。
でもーー
〇〇は、聞こえていない。
「……っ、はぁ……っ」
息が苦しい。
足が震える。
それでもーー
「……来て……」
無意識に、言葉がこぼれる。
「……来てよ……」
涙が止まらない。
「……なんで、来ないの……」
その時。
遠くから、車の音。
「……?」
〇〇が顔をあげる。
ぼやけた視界の向こう。
誰かが、走ってくる。
「……っ、〇〇!!」
聞こえた声。
心臓が、大きく跳ねる。
「……あ……」
誰か分からない。
でも――
「……来た……」
安心したように、力が抜ける。
そのまま、崩れ落ちそうになる体を――
ぎゅっと、抱き止められる。
「何してんだよ!!」
荒い息。
震える声。
目黒蓮だった。
「なんで外出てんの!!裸足で……!」
〇〇は、ぼんやりとその顔を見る。
「……」
分からない。
でもーー
涙が、また溢れる。
「……遅い」
小さく、かすれた声。
蓮の動きが止まる。
「……遅いよ……」
その一言に。
胸が、締め付けられる。
「……ごめん」
強く、抱きしめる。
「ごめん、来れなくて……」
〇〇は、力なく服を掴む。
「……こわかった……」
震える声。
「……いなくなるかと思った……」
その言葉に。
蓮の目から、涙が落ちる。
「行かない」
低く、でも強く言う。
「どこにも行かない」
〇〇を抱きしめたまま、離さない。
「……ちゃんと来る」
何度も、繰り返すように。
「絶対、来るから」
〇〇は、少しだけ目を閉じる。
「……うん」
そのまま、蓮の腕の中で力が抜ける。
やっと、安心したみたい。
遠くで、看護師たちが駆け寄ってくる。
でもその前に。
蓮は、もう一度強く抱きしめる。
「……探しに来てくれてありがと」
誰なのか分からなくても。
“会いたい”と思ってくれたことが、
何よりも嬉しかった。
コメント
1件
読了したわ。第8話、すごくよかった……。 記憶喪失で「誰か」もわからないのに、それでも「会いたい」って無意識に体が動いちゃう〇〇の切なさが胸に刺さった。裸足で転んで擦りむいてまで走る姿に「やだ」って泣きながら呟くところ、ほんとにもう……。 最後、蓮が抱き止めて「行かない」「絶対来る」って言うシーン、涙腺やられたわ。まだ8話、これからどうなるんだろう。続き楽しみにしてる🔥