2月13日。それは、世の人々が恋人や友達に「想い」と共に渡す「あるもの」を作るために奮闘する日。
それは俺も例外ではく、明日「2月14日」の「バレンタインデー」に向けたバレンタイン大作戦が始まったのである___
「ひぇ、今日もさみーっ、」
冬がさらに深まり、ふと吐いた息が白くなる2月。すでに、1月が過ぎ去って行ったという衝撃と共にその日はやってきた。
明日はキヨと付き合ってから初めてのバレンタインデー。付き合う前は男同士でチョコを渡しあったりっていう行為は基本的にはしてこなかった。(本当は、友チョコ……なんてのもあげてみたかったけどね。)
……だからこそ、今回が重要なんだよ!!!!
普段は見せる機会があまりない、俺の女子力を見せる時ってもんよぉ!!!!
だけど、何かと最近は事件続きでキヨに喜んでもらいたいという気持ちが何よりも理由となり俺はチョコを作ることを決意した。キヨ、きっと俺がチョコをあげたら喜ぶよね。
俺達2人のことで、最俺メンバーにもその都度お世話になった訳だし、せっかくだしメンバーにもチョコを作ろっかな。なんて考えていると、すごくやる気がみなぎってきた。 よーし!頑張るぞ!!
意気込みは十分。それでもレシピを見なければ、さすがの俺でも作ることは不可能だ。
「さーて、何を作ろっかな」
某クッ〇パッドを開きお菓子のレシピ一覧ををじー……っと眺める。
クッキーに生チョコ。タルトにプリン。どれも甘くて、美味しそうなものばかりだなぁ……。
ところで、キヨは何が好きなんだろう? いっつも緑茶ばかりを飲んでるイメージがあるから、抹茶の何かだと喜ぶのかな……?
そう思った俺は、キヨが美味しそうに食べていたものはなんだったかな……と思考を巡らしてみるが、ペェやチョコレートケーキ……ケーキ……ケーキ……ケーキしか思いつかなかった。
だけどさぁ……
「さすがに俺、ケーキは作れないよ…泣」
手先は割と器用とはいえ……料理はあまり得意ではないし、さらにお菓子作り初心者にいきなりケーキ作りはハードルが高すぎる。
でも、……せっかくのバレンタインだしケーキを作ってあげたらキヨは喜んでくれるのかな……。
「バレンタインに、あまぁーいチョコレートケーキかぁ……」
……っ!!「これしかない!!!」
チョコレートケーキにビビッときた俺は、早速レシピを調べて作ることにした。
レシピに一通り目を通し、必要な材料を全てきちんと揃えた。入れる分量もしっかりと測った。
なのに……なのに、…… 全然上手くいかないじゃんーーーーーーーーーーー!!!泣
生地がどうもふんわり焼けないし、クリームもへたってしまう。
「書いてある通りなのにどうして上手くいかないのぉ、、」
自分で考えたところで、全くと言っていいほど解決策が分からなかったので、俺は大人しくインターネットを頼ることにした。
Gogle 🔍チョコレートケーキを上手く作る方法
調べてみると、説明が乗った記事がずらりと表示される。その中で一際興味を引かれる記事が俺の視界に飛び込んできた。
それは「バレンタイン❤︎あなたと彼の恋のおまじない」というものだった。
恋のおまじない?それってなにかのオカルト的なもの?なんて思ったが、幼い時姉と共にこういう「おまじない」を試したことだがあったっけ。
今の歳になって「おまじない」なんて信じるってばかかもしれないけど……キヨとこの先もずっと一緒にいたいから、少しだけ信じてみてもいいよね。
おまじないのやり方に一通り目を通してみる。なになに……?バレンタインで渡したいものに血を混ぜて、それを食べてもらうことで永遠に2人は結ばれる……。へー、そんな感じなんだぁ。よしやってみるかぁ〜……じゃないのよ!!!!!!笑
こんなの倫理的にやばいでしょ!!笑
どれだけキヨのことが好きで、どれだけずっと一緒に居たいとしても、さすがにこれは良くないと思った俺は、やっぱオカルト系なのね〜。と思いその記事を閉じた。
そんなことをしている間に、時は刻一刻と過ぎていった。
「やば、もう0時なっちゃうじゃん……」
このままだと、明日のバレンタインに間に合わなくなっちゃう……泣
help!!と猫の手も借りたいような思いで、俺はある相手に連絡をした。
━✕分後━
ピンポーン。とインターホンが鳴る。ガチャっとドアをあげて俺は「いらっしゃーい!!!」と笑顔でおで迎えした。
少しそわそわした様子で「こんな時間にどうしたんだよ〜まぁ来たけどさぁ」という男。それは「人助けが趣味」のような男、ヒラだった。
俺はヒラからの問いかけを「まぁまぁまぁまぁ すぐにわかりますから!」と可憐にスルーし、キッチンへと案内した。
キッチンを見た途端ヒラは悟ったように口を開き 「えっと…お菓子作りが上手くいかなくて、俺を呼んだ……ってことなのね。」という。それを聞き「ご名答!ただね、ただお菓子作ってる訳じゃないの!」と返す。その瞬間「やっぱり、ねぇ…」とヒラは小声で呟いた。
「バレンタインデー、明日だもんね。」とヒラは若干複雑そうな顔で言ってきた。
そうなんだよ!!明日っていうか、もう今日だけども!!(焦)
「そうなんだよ!なのに失敗続きで……誰か手伝って欲しかったの!俺1人じゃ、心折れそうで、、」と伝える。すると「だとしたら、俺お菓子作りどころか料理もできないし、こーすけとかが適役だったんじゃない、?」と問いかけてくる。それを聞いた俺は勢いよく「ヒラがいいの!!!」と伝えた。
こーすけは確かに料理が上手だけど、「おぉい”!そこはSASUGANI違うって!!゛」と言った感じで熱血指導してきそうだから…ね笑
それに、今の時間だとお酒飲んでるかもだし、ヒラならきっと俺を助けに来てくれると思ったから、俺はヒラを呼ぶことにした。
俺の言葉を聞いたヒラは少し顔を背けた。
あれ、もしかして時間も時間だし呼び出されて嫌だったかな……。なんて思ったが、ヒラが「よし!じゃあ頑張っちゃうか〜」と言ってくれたので、俺とヒラのバレンタイン大作戦(再)が今ここに幕を開けた___
「それ〇〇グラムで〜、あっそこは冷やしながらやるといいって!!」
「ここは〇〇グラム?」
「そうそう!ベーキングパウダーね!」
「待ってそれ違う粉だよ〜!?」
「ああ”ほんとだぁああ”!!!」
……てな感じで、2人して助け合って大苦戦した後
「「で、できたーー!!!!!」」
ようやく、チョコレートケーキが完成した。2人で作ったチョコレートケーキはどこか不器用だが、努力が見える正真正銘のチョコレートケーキだった。
「ふぁあ……。あとはラッピングだね〜。頑張ろ〜」とヒラが言った。
そうだ、ラッピングしなきゃだった……〜、ふぁ ぁあ……。眠い……。
夢中で作っているうちに朝を迎えた俺達は、眠気最大値のままラッピングに取り掛かった。
最初は無言でもくもくとラッピング作業をしていたが、このままだと寝る!!と思った俺はヒラにある話を振った。
「ねー、ヒラはさぁ。このケーキ誰か好きな人にあげるのー?…」
俺の質問を聞いて、ヒラは少し間があったあと口を開き 「そうだね〜、せっかくだし大好きな人に食べてもらいたいから、渡そっかな〜。…」と言ってきた。
それを聞き「そっか〜」と俺は返事をする。……ん?あれ今なんて?……大好きな人に食べてもらいたい……?
眠さが限界で、頭が上手く働かないが、ぐるぐると思考をめぐらした末ようやく理解した。その途端眠気が一気に吹き飛んでいき 「ラーヒー好きな人いたの!?!?!?」と大きな声を出してしまった。俺の声に驚き、ヒラは一瞬びくっと肩を揺らす。そして「いるよ。そりゃ、俺だってね〜、」と言ってきた。
人の恋路って気になるものだけど、あんまり自分から深堀しちゃうのは悪いよなぁ……と思った俺は「なんか相談事とか、困ったこととかあったら言ってね。」と一言伝えた。
俺がキヨのこと好きだって話をやな顔せず聞いてくれて、キヨとのことで迷った時、辛かった時、いつだって相談に乗ってくれたのはヒラだった。
だから、俺もヒラの役にいつか立てたらいいな。1番頼れる存在になれたらそれってとっても素敵だよね。
そんなことを考えながら、またお互い作業をもくもくと進めていった。
そして、ようやくラッピング完了。
…もうバレンタインデーはこりごりだ。笑
でも、とっても楽しかった。
ヒラと2人でこんなふうに協力して何をしたのは久々かもしれない。改めて俺はヒラに向けて「ヒラ、ほんと来てくれてありがと!!すごく助かった。」と感謝を伝える。すると「こっちこそ、頼ってくれて嬉しかったから。ありがとう。」と言ってきた。
バレンタインデーの準備が終わった今、玄関で靴を履き「また来てね〜」と言おうとしたその時だった。
「はいこれ。せっかくフジと作ったのに、フジ、バンドメンバーとか、家族とか、色んな人にあげるから、自分で食べる分ないでしょ。だからね、」
「これ、あげる。俺と一緒に作ったケーキ、フジにしっかり食べて欲しい。」 と言い、俺にさっき作ったケーキを渡してきた。
まさか俺の分のことを考えてくれるなんて思ってもみなかったから 「え、!?」と思わず声が出た。そして慌てて
「こ、これ、ヒラ大好きな人にあげるんでしょ!?俺貰っちゃったらあげらんないよ!?」と伝える。
すると、ニコッと笑ったヒラは 「そうだよ〜。だからいいんだよ。」と伝えてきた。
ラーヒーが優しいのは知っていたけど……まさかこんなに友達思いだとは……。泣
「ラーヒー、一生一緒に居ようなぁ……泣」と俺は感極まって言った。それを聞いたヒラは「もちろん!」と返す。
これだからうちのメンバーは最高なんだよなぁあ!
感動して、目頭がジーンと熱くなっていた(深夜テンション)俺に向けて「そういえば」と一言いった後、ヒラは自身のカバンをガサゴソと漁り、何かを引っ張り出した。それを見て「ラーヒーそれなに?」と気になった俺は問いかける。すると「これはね〜ウイスキーボンボンっていうチョコ!」と答えてきた。
あ〜ボンボンね。あれ美味しいんだけど、なかなか買える機会ないんだよなぁ。なんてことをぼんやりと考えていると、ヒラが「食べたい?」と問いかけてきた。
それに即答で「食べたーい!!」と返事をすると、突然口に何かが飛び込んできた。
「…んぐ、っ」!?、
…っ咄嗟の出来事だったが、口に入ったものをよくよく味わってみると、まろやかな口どけの良いチョコレートの中からトロトロと溢れだしてくるお酒。とても上品で、甘いお菓子だった。
食べたいとは言ったけど!!笑 いきなり食べさせてくんなよ!!笑 と思ったが、これもヒラの宇宙人ぷりかと思ったら、「いつものこと」だと思い、何もツッコまないことにした。
俺はただ一言 「おいしい、ありがとう」と伝えた。
その後ヒラを駅まで見送ったあと、俺は1人部屋でぼんやりと「ヒラの好きな人」について考えてみた。
ヒラは、そもそも女の子とあんまり絡んでるイメージはないんだよなぁ〜。
俺とキヨも、男同士で好きになったわけだし、もしかしてヒラはこーすけを……??その場合、幼なじみ恋愛ってこと……!?
「何それラブコメじゃぁーん〜〜」なんて俺は呟いていた。
深夜テンションが徐々に落ち着いてくると、ふと体から力がぬけて 「ふわぁ…。」と大きなあくびが出る。
自分の吐息から、ほのかにお酒の香りがする。もしかしたらあのボンボン、結構アルコール度数高かったのかなぁ。なんて考えていたと同時に「キヨに渡したいものがある」ってLINEをしなきゃ!と思ったけれど、なんだか意識がフワフワして動けない。
そして、ふとした瞬間に強烈な眠気が襲ってきて、俺はパタリとフローリングに横たわる。そしてそこで意識が途切れた。
(続く)
コメント
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あ、ラーヒー 好きなのはわかる でもそれは… いいよ!全然いいよ!関係が壊れなければ…の話だけどね