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「えっと、それなら…キーマカレーとか、スルスル食べれるスープ系がいいなって…」
「親子丼の具とかご飯にかけるやつ買っておいてもらえると、僕一人でも作れるから…注文多いんだけど…いい、かな?」
少しでも彼の負担を減らしたくて、リクエストも交えながら尋ねる。
「ふふっ、りょーかい。買い込んどくね」
「…ぁ、ありがとう…」
「ひろが美味しいって感じるもんならなんでも作るから、いつでもリクエストしてね」
敦は再び椅子に戻り
「じゃあ、食べよっか」と笑って、食事を再開すると
僕も箸を掴んで、ジンギスカンを口にした。
先ほどよりも、ずっと味がはっきりと分かる気がした。
香ばしい醤油ベースの甘辛いタレと、ラム肉特有のコクが絶妙に絡み合い
久々に美味しさを感じる食べ物だった。
それを咀嚼する時間は、久しぶりに心の底から温かいものだった。
◆◇◆◇◆◇
それからというもの────
僕の味覚の異変に寄り添うように、敦の料理や買い出しの傾向はガラリと変わった。
「味付けが優しくて、ご飯に乗せるだけのものが嬉しい」と伝えると、
辛くないマイルドなレトルトカレーや焼き鳥の缶詰、作り置きの唐揚げを用意してくれていたり。
「食欲がない」と言うと、夜ご飯はツルっといけるうどんを作ってくれたり。
気を利かせてか、僕の好みに合わせてチョコレート菓子を作ってくれたり
プリンやアイスを買ってきてくれるようになった。
僕が少しでも「美味しい」と思える瞬間を
敦はどこまでも優しく作り出そうとしてくれていた。
そんなある日の午後────
「ひろ、それは味する?」
敦の平日休みを利用して、敦にチョコカップケーキを振る舞ってもらっていた。
外は気持ちのいい晴天で、窓から差し込む木漏れ日がテーブルを照らしている。
「うん!…すごいの、ちゃんとチョコチップの味するの…!チョコの甘さが口の中で広がるし…ココア生地も優しくて…こんなに美味しいの久しぶりかも」
嬉しさに胸を弾ませながら、カップケーキを頬張る。
「ふふっ、ならよかった」
敦は嬉しそうにコーヒーを淹れながら、自慢げに解説を始めた。
敦曰く、今回作ってくれたチョコチップカップケーキは、
市販の硬いチョコチップではなく
敦がお店で使っている最高級のカカオ分50〜60%くらいのクーベルチュールチョコレートを
あえて不揃いに刻んで、焼き込んであるらしい。
そのおかげで、一口ごとに違った表情を見せるのだという。
その上、変化する口どけで
焼き上がりの熱で、生地の中でとろっと溶けている部分と
冷めてサクっとした部分が混ざり合っているおかげか
噛むたびに豊かなチョコの味が口いっぱいに広がって、最高のマリアージュを奏でていた。
#prtg
@ きみ以外なんて選ばないよ
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