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濃厚なカカオの香りと、計算された食感のコントラスト。
それが僕の鈍麻していた味覚に、鮮烈な喜びを与えてくれる。
「やっぱり…しゅんの作るチョコが1番好き」
自然と、本音が口から溢れていた。
「ふっ、急にどしたの?嬉しいけど」
敦は少し照れたように頭を掻く。
「なんか、再確認したというか…?初めてしゅんのお店でチョコ食べたときの感動とか、大学の帰りにガトーショコラとか食べに行ってたの思い出して…」
「懐かしいねぇ…ひろくんに試食とかしてもらったこともあったし、来店しては何個も注文してたっけ」
敦も目を細めて、過去の記憶を愛おしそうになぞる。
「はは…っ、それがなんか、懐かしくて、味をあまり感じなくなってから…もうあの美味しさ感じれないのかなって不安で」
胸の奥に、ふっと寂寞とした思いが過る。
「…ひろ……」
敦の表情が、少しだけ切なげに陰る。
「…でも、こうしてまたしゅんの作るチョコの味を感じられるのが嬉しくて…安心したのかも」
「そっか…いつか、治るといいよね」
「うん…」
敦とお喋りしながら食べたカップケーキはこれまで以上に、より一層甘くて幸せな味がした。
この穏やかな時間がずっと続けばいいのにと、心から願った。
◆◇◆◇
食事を終えると、お腹もいっぱいになってしまって
満腹感と心地よい疲労感から、ソファに寄っかかってダラダラとしていた。
すると
「ひろ、大丈夫?」
後片付けを終えてキッチンから戻ってきた敦が、隣に腰掛けてきた。
すっと僕の体に、彼の体温が近づく。
「う、うん。ちょっとぼーっとしてただけ」
「具合悪いとかじゃない?」
「もう、心配しすぎだって…しゅんのチョコレート食べたお陰で少しは元気だよ」
苦笑しながら答えると、敦はほっとしたように息を漏らした。
「そう?よかった」
「そういえばしゅん、今日…火曜日は休みなんだっけ」
「そうそう。火曜と木曜は定休日にしてるからさ、今日は一緒に家でゆっくりしよ?」
「うん…!しゅんと一緒にいれるの嬉しい…」
素直に喜びを表現すると、敦は愛おしそうに僕の髪に触れた。
「…ふふっ、なんか映画でも見る?」
「あっ、映画いいね…!なにあったっけ?」
「んーとねー…」
敦がテレビ下の棚からいくつかのパッケージを取り出してくる。
それから僕たちは、家に置いてあったDVDを見始めた。
部屋の明かりを少し落とし、一つの画面を二人で眺める。
(今はこれでも、いいのかな)
休むことに精一杯でしゅんと外でデートもできていないし、えっちをする機会もない。
味覚障害が治ったわけでもないけど、敦とこうして一緒に過ごす時間が心地よくて
それだけでポッカリ空いた心の隙間が満たされていく気がした。
このまま、上手く身体が休まれば、いつか元に戻れるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いていた。
#prtg
@ きみ以外なんて選ばないよ
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