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船の前には、全身包帯巻きのクロードがいた。痛々しい様相だが、こちらを睨み――何かを叫ぶ。
「ラスティ!! 貴様を絶対に許さん!!」
まーだ、あんな事言っているし! 懲りない奴だなぁと呆れていると、こちらに向かってきた。
「俺たちは大神官から出て行くように言われたんだが」
「黙れ! アルミダ様が何を仰ろうと関係ない。これは俺と貴様の問題だ!」
「最初から問題なんてない。抵抗もしないから、そこを通してくれ」
「なら、スコル様を返せ。貴様には相応しくない」
「だってさ、スコル」
俺は、背後にいるスコルに視線を合わせる。すると、スコルは憤慨した。
「勝手に決めないで下さい、クロード! わたしは、ラスティさんが良いんです! これ以上の侮辱は許しませんよ」
「ほう、許さない? なら、その男を拘束し、死刑にしてやる……罪状はそうだな、スパイ容疑でいいだろ!!」
んな、無茶苦茶な。クロードといい、アルミダといい……なんだか怪しいっていうか、やりすぎだ。
とにかく、ボロディンは脱出するべきだ。俺はスキルを使って状況を打破しようとしたのだが、スコルが更に怒った。
「もういいです。しつこい人は大嫌いです……!」
スコルの魔力が急上昇する。
……まて、なんだこれ。
今まで感じた事のないレベルだぞ。
「ま、まさか……!」
俺は驚く。
スコルにそんな力があったんて。
やがて、スコルは手を翳してクロードに魔法を撃ち込んだ。――いや、これは魔法ってモンじゃない。大魔法だ。
「テンペスト!!!」
ごうっと強風が吹き荒れ、クロードとエルフの剣士数名が吹き飛ばされていく。
「なんだこの風!? う、うああああああああ……!!」
立っていられない程の大嵐にクロードとその他は海へ投げ出された。……す、凄い強風だったな。ていうか、スコルが魔法を使えたなんて――いや、思い出した。最初に会った頃に大魔法を覚えているって言っていた。
でも、レベルが足りなくて扱えなかったと。けれど、今はレベルアップして使えるようになっていたんだな。
「ナイスだ、スコル! 魔法を覚えたんだな」
「自信が無かったんですけど……上手くいきました」
はぁと溜息を吐くスコルは、緊張していたのか脱力する。初めてにしては上出来だ。あのクロードを痛快にぶっ飛ばしてくれた。
ハヴァマールやストレルカも拍手していた。
「凄いな、スコル! 余は、スコルをか弱いだけと思っていたが、その認識を改める必要がありそうだな」
「わたくしもです。スコルさんは料理だけでなく魔法の使い手でもあるのですね。さすが聖女様」
二人が絶賛すると、スコルは顔を真っ赤にして俯く。褒められて照れているな。
「ほぉ、私も驚きました。スコル様がこれほど成長していたとは……!」
テオドールさえも感心していた。
そうだな、俺もビックリした。
スコルの成長は喜ばしい。
このまま最強の聖女になって欲しいな。
船に乗り込み、後はストレルカに任せた。直ぐに船は動き出す。夜で視界が悪いけど、オケアノスの万能の力が働いているから、関係ないらしい。
「今日は船内にある部屋でお過ごし下さい」
ストレルカは、船長室へ向かった。俺達も部屋へ。一眠りして、明日には島に帰れるだろう。なんだか騒々しい一日だったなぁ――。