テラーノベル
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すべてが始まる前、俺らの距離は、ただの「同じ大学に通う生徒」でしかなかった。
その日、佐久間大介は、単位のことで教授に呼び出された帰り道を、ひどく憂鬱な気分で歩いていた。
夕方の校舎は静まり返り、オレンジ色の斜光が廊下を長く染めている。
ふと、誰もいないはずの教室から、微かな声が聞こえた。
――Amazing Grace, how sweet the sound……
足を止めた。
それは、小さく、だけど驚くほど優しく透き通るような歌声だった。
まるで胸の奥にすっと染み込んでいくような、どこか儚い歌声。
そっと教室の扉の隙間を覗くと、夕日を浴びて佇む一人の女の子がいた。
耳にイヤホンをつけ、外の景色を見つめながら、ただ静かに、自分の世界で歌を口ずさんでいる。
彼女は佐久間の視線に気づいていない。
佐久間は、その光景をただ呆然と見つめていた。
胸の奥がトクン、と動いた気がした。
#ご本人様には関係ありません
るる

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コメント
1件
第1話、読了しました。 冒頭の「すべてが始まる前、俺らの距離は」という一文から、これから何かが動き出す予感がして、すごく好きな入り方でした。 誰もいない教室で聞こえてきた『Amazing Grace』。その歌声の描写がとても繊細で、夕暮れの静けさと相まって、胸にじんと響くシーンでした。 佐久間くんが“トクン”と鼓動を感じるラストも、過剰じゃなくて、自然でいいですね。 この出会いからどう距離が変わっていくのか、気になります。素敵な作品をありがとうございます!