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今日も今日とて💚💙
第二十一話 煙のあと
翔太 side
朝。
カーテンの隙間から入る光で目が覚めた。
頭は少し重い。
昨日、飲みすぎたかもしれない。
隣を見る。
亮平はもう起きている。
手を伸ばすとそこは、すでに冷たくて、随分と前から亮平が起きていることが窺えた。
慌ててベッドから飛び起きると、ズシンと頭に痛みが走る。
ベッド脇に腰掛けて、キラキラと光るサンキャッチャーに朝の挨拶をした。
「おはようさっちゃん。飲みすぎちゃった」
ベッドボードに置かれたミネラルウォータ。
きっと心配して亮平が置いてくれたものだろう。
幸せな朝。
一口飲むと、乾いた喉を冷たい水が通っていく。
リビングのソファに腰を下ろす亮平は、朝からスマホで調べ物をしていた。
「……おはよ。お水ありがとう」
「おはよ。飲むのは俺の前だけにしてね」
良かった怒ってない。
いつもの優しい声に安心する。
昨日、変なこと言ってないよな。
たぶん大丈夫。
……たぶん。
亮平が振り向く。
「翔太」
「ん?」
「昨日さ」
止まる。
何かが引っかかる。
「……なに」
亮平は少しだけ口元を緩める。
「覚えてる?」
「何を」
一拍。
そして。
「亮平さんにしか満たされないって」
――停止。
空気が止まる。
思考が一瞬遅れて追いつく。
「言ってない!」
反射で叫ぶ。
亮平は即答する。
「言った」
「酔ってた!」
「知ってる」
冷静。
逃げ場がない。
亮平は淡々と続ける。
「あと」
嫌な予感。
「……もっと欲しいです」
死ぬ。
顔が一気に熱くなる。
耳まで熱い。
「うるさい!」
枕を掴む。
そのまま勢いで布団に潜る。
完全防御。
視界ゼロ。
聞こえない。
聞こえない。
聞こえない。
布団の外で、亮平が小さく笑う気配。
「翔太」
無視。
「聞こえてるだろ」
布団の中から答える。
「……聞こえてない」
沈黙。
そのとき。
ふと、頭の奥に何かが引っかかる。
玄関。
壁。
亮平の声。
――俺じゃ足りない?
断片が、浮かぶ。
さらに。
自分の声。
『亮平さんにしか満たされない』
思い出す。
……。
もう一つ。
『もっと欲しいです』
完全に思い出す。
今日も今日とて、赤面案件。
布団の中で、固まる。
「……翔太?」
亮平の声。
布団が少し揺れる。
顔が、たぶん真っ赤だ。
ゆっくり布団をめくる。
亮平がこっちを見ている。
口元が、少しだけ笑っている。
「……思い出した?」
終わった。
「……忘れて」
「無理」
即答。
「酔ってた」
「知ってる」
亮平が少しだけ身を乗り出す。
距離が近くなる。
「でもさ」
低い声。
「嘘じゃないだろ」
一歩近づく。
「俺じゃないとダメなんだろ」
言葉が詰まる。
目を逸らす。
でも。
逃げ場はない。
亮平の指が顎に触れる。
上を向かされる。
逃げようとしても、視線が外せない。
視線が合う。
「で?」
低い声。
「今も?」
意味は分かる。
でも答えたら終わる。
数秒、黙る。
そのあと、小さく息を吐く。
「……欲しい」
亮平の呼吸が止まる。
ほんの一瞬。
そのあと。
腕が背中に回る。
一気に引き寄せられる。
完全捕獲。
「逃げんな」
低い声。
「逃げてない」
「布団潜ってた」
「防御」
亮平が小さく笑う。
距離が近い。
近すぎる。
「翔太」
「ん」
「昨日言ったこと」
額が触れる。
「撤回なしな」
そのまま、キスが落ちる。
逃げる気は、もう最初からなかった。
「ドキドキうるさいね」
「亮平のせい……」
「じゃあ責任取らなきゃ。心臓無理そう?」
「はい、またです」
クスッと耳元で笑った亮平。
ベッドが、二人分きしんだ。
コメント
2件
キュンキュン案件!!!💚💙 あまーい!💚ちゃんの男らしいところきゅんきゅんしちゃう〜!