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#普通
野々さくら
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ありあ
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その日の夕方。
焔垂は自室のベッドに横たわり、ただぼんやりと天井を見つめていた。
飛鳥から聞かされた真実が、頭の中で何度も繰り返される。
「あの優しかった三瓶先輩が・・・」
信じたくなかった。
あれほど優しく、誰よりも部のことを想ってくれていた鈴蘭が、千歳を死へ追いやった中心人物だったなんて。
否定したい。夢であってほしい。
けれど現実は、あまりにも残酷だった。
焔垂は目を閉じ、小さく息を吐いた。
◇ ◇ ◇
去年。
まだ怪異探求倶楽部が正式な部として認められた直後の事。
鈴蘭は焔垂の目を後ろからそっと覆い、廊下をゆっくりと歩いていた。
「まだだからね?」
どこか楽しそうな声が耳元で響く。
「まだ開けちゃダメだからね?」
焔垂は苦笑しながら答えた。
「あ、あの先輩?ドッキリか何かですか?」
鈴蘭はくすっと笑う。
「それは着いてのお楽しみ♬」
その弾んだ声に、焔垂も自然と笑みを浮かべた。
(どうしたんだろう?)
胸に小さな期待を抱きながら歩いていると、鈴蘭が優しく声をかける。
「はい♬もう目を開けて良いよ♬」
焔垂はゆっくりと瞼を開いた。
「一体何が──」
次の瞬間、その光景に目を見開き、思わず息を呑んだ。
「こ、これは・・・」
鈴蘭は満足そうに微笑む。
「驚いた?」
焔垂は言葉を失ったまま、目の前を見つめ続ける。
そこには、新しく掲げられた部室の表札があった。
『怪異探求倶楽部』
それは正式な部活動として認められた証だった。
鈴蘭は嬉しそうにその表札を指差した。
「怪異探求倶楽部が、やっと正式に
部として認められたからね、そのお祝い♬」
焔垂は胸が熱くなるのを感じた。
「あ、ありがとうございます♬」
深々と頭を下げる。
鈴蘭は優しい笑みを浮かべたまま尋ねた。
「気に入ってくれた?」
焔垂は力強く頷く。
「はい!もちろんですっ!」
鈴蘭から贈られたプレゼント。
焔垂はその文字を見つめ、決意を新たにする。
「俺、頑張ります!」
その言葉に、鈴蘭は心から嬉しそうに微笑んだ。
◇ ◇ ◇
あの日の優しい笑顔。
自分の夢を誰よりも応援してくれた先輩。
だからこそ焔垂には、飛鳥が語った残酷な真実と、鈴蘭との思い出がどうしても結びつかなかった。
「どうして・・・・」
焔垂の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「あんた・・何泣いてんの?」
声をかけて来たのは、焔垂の母・|鳴子《なるこ》だった。
「な、泣いてねーよ!てか勝手に
入って来て何の用だよ!」
呆れたように声を荒げると、母の鳴子が苦笑しながら言った。
「茜ちゃんが来てるわよ」
焔垂は思わず体を起こす。
「え? 茜が?」
すると鳴子の背後から、ひょこっと茜が顔を覗かせた。
「お〜っす♬」
焔垂は目を丸くする。
「急にどうした?」
茜は少し照れくさそうに笑った。
「いやさ・・・ちょっと心配で」
焔垂は首を傾げる。
「心配? 心配って何がだよ」
茜は焔垂の顔をじっと見つめる。
「いや、なんか落ち込んでないかな?って」
焔垂は慌てて視線を逸らした。
「いや、別に落ち込んでなんか──」
言葉が続かない。
その様子を見ていた鳴子が、腕を組みながら二人を見比べ、口元にいたずらっぽい笑みを浮かべていたからだ。
焔垂はその視線に気付き、顔を真っ赤にする。
「何笑ってんだよ!さっさと行けよ!」
鳴子は肩をすくめる。
「はいは〜い♬邪魔物は消えま〜す♬」
意味深な笑みを浮かべたまま、静かに扉を閉める。
「ったく・・・」
焔垂は頭をかきながら小さくため息をついた。
茜は部屋を見回し、苦笑する。
「てか相変わらずのオタク部屋だね
オカルト雑誌ばっか」
焔垂の本棚には、オカルト雑誌『MW−ムウ−』がズラリと並んでいた。
茜はその中から一冊を抜き取り、興味深そうにページをめくる。
焔垂は申し訳なさそうに頭をかいた。
「悪かったな」
茜は笑いながら肩をすくめる。
「こんなんじゃ当分彼女はできないな」
「余計なお世話だよ」
焔垂は呆れたように返し、改めて問いかけた。
「てか急に来てどうしたんだよ」
茜は雑誌を閉じ、真面目な表情になる。
「だからさっきも言ったでしょ?
落ち込んでないか様子見に来てやったの」
焔垂は苦笑しながら首を振る。
「落ち込むって何に対してだよ」
一瞬だけ言葉を選ぶように間を置いた茜は、静かに答えた。
「三瓶鈴蘭の事だよ」
その名前が部屋に響いた瞬間。
焔垂の表情から笑みが消え、部屋の空気が一気に重く沈んだ。
コメント
1件
うわぁ…焔垂くんの心情がグッとくる😭🌸 鈴蘭先輩の優しい思い出と、今の残酷な真実のギャップが辛すぎる…!あの表札のプレゼントのシーン、めっちゃほっこりしたのに、それが今はこんなに重くのしかかるなんて。茜ちゃんの何気ない気遣いも温かいし、最後の「三瓶鈴蘭の事だよ」で空気が一変するところ、ゾクッとしたよ…!次が気になりすぎる、続き楽しみにしてるね📖💕