再び展開された五条悟の「無量空処」。無限の情報と感覚が鋼谷を包み込む。時間の流れすら無意味になるその空間では、一瞬が永遠に感じられる。
鋼谷の脳は、洪水のように押し寄せる情報に耐えきれず、悲鳴を上げていた。体は動かない。目に映るのは意味を成さない記号の羅列、耳に届くのは断片的な音。
「これが僕の領域の本質だ。」
五条が歩み寄り、鋼谷を冷たく見下ろす。
「無限の情報が流れ込み続けるこの空間で、お前は何もできない。ただ、無限に近い時間を感覚だけで過ごすしかない。」
鋼谷は必死に考えを巡らせる。ここで負けるわけにはいかない。
「俺が…このままやられるとでも思ってるのか?」
その瞬間、鋼谷の目が鋭く光る。彼の異能デバイスが微弱な振動を始めた。それは五条にも察知されないほどの微細なエネルギー波だった。
鋼谷の持つデバイスはただの空間補正装置ではなかった。その本質は「情報の変換」。情報をデータとして扱い、それを無効化する能力だった。
「無限に近い情報?面白い。じゃあ、俺も無限を使わせてもらう。」
デバイスが赤く輝き始め、領域内の情報をデータ化して吸収し始めた。
五条は驚きの表情を浮かべる。
「お前…領域の情報を…取り込んでいるのか?」
鋼谷はニヤリと笑う。
「そうだ。このデバイスは、空間や情報を『処理』する能力を持つ。無量空処が無限の情報を送り続けるなら、その無限ごと吸い尽くしてやるさ。」
デバイスの光が強まり、無量空処の空間が徐々に歪み始めた。五条は冷静さを保ちつつも、僅かに眉をひそめた。
「なるほどな。でも、無量空処は僕の絶対領域だ。お前のデバイスごときで完全に壊せると思うなよ。」
鋼谷は苦笑しながら答える。
「俺が狙ってるのは、お前の領域を壊すことじゃない。『出口』を作ることだ。」
デバイスが放つエネルギーにより、鋼谷の周囲に空間の裂け目が生じた。その裂け目から、鋼谷は飛び出し、無量空処の外に脱出することに成功する。
五条は領域を解きながら、鋼谷を見据える。
「やるじゃないか。僕の無量空処を二回も突破した奴なんて初めてだ。」
鋼谷は肩で息をしながらも笑みを浮かべる。