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「………外、出るの」
まだ虚ろな目のうたいさんは、心なしか辛そうに聞いた。
「ちょっと用事があって…ごめん、なるべく早く帰るよ。」
うたいさんはこくりと頷き、ベットに寝た。
「…行ってきます。」
「あ、ニグさん…」
落ち着かない様子で立っていた凸さんに近づくと、凸さんはなんとも言えない、悲しそうな顔をしていた。
カフェの中に入った俺達は、取り敢えずどちらもホットコーヒーを注文する。
運ばれてきたコーヒーを啜りながら、俺は凸さんに聞く。
「…単刀直入に聞くけど、うたいさんと何があったの?」
しばらく頷いたままの凸さんに、俺は口調を強めて「何があったの」と聞いた。
「さも、さんが…」
…さもさん?なんでさもさんの名前が…
「…さもさんのことが、好きになったんだ…」
コーヒーで暖まったはずの俺の体は、急速に冷えていくような気がした。
「他の人を好きになったのに、うたちゃんと居る権利は俺に無いと思って…それで、別れようって言ったんだ…それで…」
俺は凸さんが言い終わるのを待たずに、立ち上がって凸さんの胸ぐらを掴んだ。
「ふざけるな!うたいさんがどれだけ辛い思いをしてると思ってるんだ!うたいさんは自殺する一歩手前まで行ってたんだぞ!」
俺は周りの目も気にせず凸さんに怒号を浴びせる。
「それは…俺も後悔してる…」
「それなら!次に行動するべきだったのは、出ていくことじゃなくて、うたいさんともっと話すことだっただろうが!なんでうたいさんのことが大切だったのだら、それが出来なかったんだ!」
俺は「はあ、はあ」と荒くなった息を整えながら、凸さんの胸ぐらを離す。
「………ごめん、なさい、ごめんなさい…」
凸さんは項垂れたまま、謝罪の言葉を呟き続けた。