「は、ハックが居ないぞ…!?」
全てはこの一言で始まった。
いつも通りハックのいる秘密結社ヤルミナティーの部室に向かうが、そこには誰も居なかった。
サブローは校内を走り回って探すが、どこにも姿が見当たらなかった。
「もしかして、闇の組織に拐われたのか…?」
少し額に汗をかきながら外に飛び出す。
だが外は土砂降りの雨で案の定びしょびしょになってしまった。
やばい、ママに怒られる…!
だが、せっかく外まで来た為戻る訳にはいけないのか
周りを探し始める。
「うぅ…びしょ濡れっす…」
「ギャパパ!チェンソーが錆びちまうぜ」
「俺のエロ本がァァァ…」
ヤルミナティーの声が聞こえた途端、サブローは走って声の方向まで向かってゆく。
「あれ、サブローくん」
「ってなんでそんなびしょ濡れなんすか!?」
「べ、別にハックを探してたとかそんなんじゃないぞ」
腕を組んで顔を逸らしながらそういう。
「謎のツンデレきたな」
予想通りのツッコミが来た。
「ハック!今日は僕の真の力をお前にたっぷりと見せてやるぞ!」
「タブー帰るか」
「ギャパパ!そうだな」
サブローのいつもの厨二病に付きまとわされるのも面倒だったのか、キリンとタブーは帰って行った。
「じゃあ俺も今から帰るんで…」
「なーっ!!」
リュックを持って、傘立てに置いてあったビニールの傘を持ちそう言う。
「ちぇ、折角探したのに……」
そう頬をふくらませて拗ねていると
ハックは振り向いた。
「はぁ……」
「俺ん家来るっすか?」
「っ〜……!」
「行く!!」
目を輝かせてそう言うと、ハックはある事をふと思い出した。
「そういえば俺ん家マンションのメンテナンスあって8時まで帰れなかったっす…」
顔を合わせてそう言うと、サブローはにっこり笑ってこういった。
「僕の拠点を特別に招待してやる!」
「ただいまー」
「お邪魔しますっす」
傘立てに傘を置き、靴を脱ぎ始めた。
「あらサブちゃんおかえりなさい!」
「って、なんでそんなにびしょ濡れなの!?ママ傘渡したわよね!」
「ちょっ、静かにして!今人が来てるから…」
華麗なる親フラを見せられていたハックは今でも吹き出しそうなくらい笑うのをこらえていた。
「あら!サブちゃんのお友達?ゆっくりしていってね」
「あ…はいっす」
苦笑いをしながらそういい、二人はサブローの部屋がある二階の階段を登っていく。
「うわっ、厨二臭」
「失礼だぞ!」
「適当に座っていてくれ。そのうちマ…」
「母さんが茶を入れてくれると言っていたからな」
咳払いをして誤魔化す。
ベッドに2人は座った。
ハックはパーカーのチャックを少し下に下げた。
二人は何も喋らないまま、外に鳴り響く
ポツン という雨の音をただひたすら聞いているだけだった。
「……その、サブローくんっていつから厨二病になり始めたんすか?」
「僕の記憶にはないな、本能だ」
「へぇ……」
会話が続かない
焦り始めた2人は何かしら話しかけようとするが
特に話の話題が無く、無言が続いてしまった。
「サブローくんは好きな人とかいるんすか?」
「すっ、好きな人!?」
”好きな人”という単語にものすごく動揺したサブローは顔を赤くする?
「その反応、もしかしているっすね?」
気になったハックはサブローに近寄り、探り始める
「い、いない!あと近いぞっ!!」
「いいじゃないっすか、恋バナっすよ恋バナ!」
「僕に近寄ると闇の力が作動してお前に攻撃を食らわせてしまうかもしれない!!」
動揺しすぎて厨二単語を次々と言う。
ドサッ
「っ!?」
ハックは勢いでサブローを押し倒してしまい
ベッドで床ドン状態になっていた。
顔が物凄い勢いで真っ赤になり、目が回った。
「サブローくん……」
顔がとても近く、酷くなっている心臓の音が聞かれてしまうほど距離は近かった。
「…は」
「サブちゃん!お茶入れてきたわよ!」
何かを言おうとした瞬間、ノックもせず入ってきた母親がお茶を持ってきた。
「まっ、ママ!ノックしてよ!!」
「あっ…ごめんなさいね〜ごゆっくり〜」
何かを察した母親はお茶を机に置いてそそくさと部屋を出ていった。
ハックは押し倒すのをやめた。
さっき下げたチャックを上にあげる。
「そろそろ帰るっす」
「だっ、ダメだ」
立ち上がろうとした瞬間、サブローは帰ろうとしたハックの手を握り帰るのを止めた。
「まだ、一緒に居たい」
顔を真っ赤にしながらそう言うと
「っ〜!?」
釣られて顔を赤くしてしまった。
「わ…かったっす」
いつもの調子に整えようとするが、心臓の音が鳴り止まず更に悪化してしまった。
こんなのおかしいっすよ!
俺がサブローくんにドキドキするなんて…
「サブローくんのバカ…っす」
耳を真っ赤にさせながら小声でボソッとそう言った
「…(言うチャンスを逃してしまった)」
僕がハックの事を
”友達対象”として好きなことを───
【 オマケ 】
「雨止まないであります…」
昇降口で雨が降り続いている中、シャボは雨が止むのを待っていた。
「生憎、傘を持ってくるのを忘れたであります…
拙者としたことが……」
今日はティラ様におつかいをたのまれているというのに…
「くよくよしても仕方ないであります!雨が止むのを待つであります!」
そう言って地面に座り、雨が降り続いている情景を眺めていた。
「ギャパ?」
「どうした?タブー」
一緒に帰っていたタブーとキリン。
タブーはシャボが昇降口で座っていることに気がつく
「おいカッケーサメ!」
「タブー殿でありますか!」
「こんな所で座ってどうしたんだ?」
「傘を忘れたであります。だからここで雨が止むのを待っているであります!」
シャボはキラキラしながら話す。
「雨は止まないぞー、今日はずっと雨予報だからな」
「シャーッ!キリン!」
「そんな警戒すんじゃあねぇよ!」
キリンがタブーの後ろからひょっこり出てくると
シャボはとても警戒していた。
「雨、止まないでありますか…」
ショボーンと落ち込んでいると、タブーが傘を閉じて言った。
「ギャパパ!俺様の傘貸してやるぜ!」
「い、いいでありますか…?」
「おう!明日返せよ!」
そう言って傘を渡して二人は帰って行った。
「タブー殿は、どうしてそんなに優しいでありますか」
「拙者には、人間の心がよく分からないであります」
そう呟き、ニコニコしながら傘をさして歩いていった
コメント
6件
お、押し倒す、、、だと?
うわぁぁ! ハックさんが…サブローくんを…
もう一回読み返したけど、やっぱ尊いぃぃ それと、サブロー君のお母様はあちらがわですか?(^o^グヘヘ) 良ければ一緒に語りません((殴