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真夏がこの世とも思えないような忌まわしい事件とともに過ぎ去ろうとしていた。
ぼくの心の中で口すさんだ悲しい歌も、もう歌うことは無いんだね。でも、父さんと母さんは、あそこにはいなかったのかな?
では、どこへいったのだろう?
杉林の獣道を歩いて、村田先生が吐血しながら話しだした。
「この街から出なければね。そう、遠くへと……」
「村田先生はどうやって、あの村へ来たの?」
「車だよ。看護婦長と一緒にね。看護婦長は君のお父さんとお母さんを乗せて、一足先に帰って行ったんだよ」
「え!?」
ぼくは驚いた拍子に、後ろへ転倒しそうになった。
空腹感も消えたこの体には、生命という名のエネルギーはないに等しい。後ろへ倒れるとそのまま動けなくなってしまいそうだった。
「言うのが遅かったかね。でも、仕方ない。さて、この道を真っ直ぐ降りていけばいい」
そういうと、村田先生は散弾銃の弾込めをしながら、咳き込んだ。
べっ、と血を吐いたテープレコーダーのような声の村田先生は、どこか遠い目をしていた。
「君の心の旅ももう終わった。後は警察や大人に任せればいい。さんざんだったけど、これもこの街では起きうることなのだよ」
「え? 真相? まだあるんだ」
枝葉が靴の隙間に入っていたけど、ぼくは歩を進める。
汗が時折、耳の中に入った。
じんわりとした夏の生暖かい風は、ぼくのお腹の出血を撫で、不快な感情を醸し出していた。
「そう。まだ、終わっていないんだ。残念だけどね」
風が弱いながらも、汗の覆う顔を撫でた。
そういえば、三部木さんたちがいたんだ。
村の人たちは、帰る場所を失い。もう不死の儀を行うことはないはずだし、いくら不死な彼らでも永久腐敗? で消滅してしまうんだろう。
「村田先生。永久腐敗って何?」