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全てが順調に進んでいたと思っていた、 りょうちゃんとの仲も活動も。
でもある日、若井の前では泊まって帰る、と言ったりょうちゃんがやっぱりどうしても今日は帰る、と夜になって帰った時があった。
その時の理由はなんだったろう、他愛もない理由だった、けどその理由は嘘だとわかった。
そしてそれら良くない色でなにか不安なことがあるような感じだったから俺は受け入れる仕方なかった。
そのあたりからりょうちゃんは3人で居てもぼうっとしたり2人きりでもたまに何か考えているようでしかもあんまり眠れてないのが明らかだった。
「体調悪い?」
「大丈夫だよ、ごめんね」
大丈夫が嘘なくらい、俺じゃなくってもわかる。けど理由なんて聞いても彼は俺のために言わないだろう。
でもそれから少ししてそのりょうちゃんを悩ませているのは何かにはっきりと気づく出来事が起きた。
「ん、ん゛···っ」
「···?りょうちゃん?」
隣で苦しそうなりょうちゃんに気づいて目が覚める。
ぎゅっと目を閉じてうなされているみたいで額にうっすら汗までかいて頭を振っている。
「いや···っ、やだ、いかないで···」
「りょうちゃん?俺はここにいるよ」
「いかないで···!おねがいっ···わかいっ···」
若井?
今、若井って言った···よね?
りょうちゃんの肩を揺するとハッと目を開ける。
はぁはぁと苦しそうに呼吸して涙が溢れた目元をわけもわからず擦っている。
「ごめ···僕なんで···」
「うなされてた、何度も···」
「怖い夢見てたの···」
自分自身の小さく震える肩を強く抱いてりょうちゃんは泣きそうな顔をして怯えていた。
そんなに怖かった?若井が居なくなることが?
りょうちゃんが縋るほど好きなのは、夢にまで出てくるのは俺じゃないんだね。
「行かないでって言ってた。若井行かないでって」
「···ちがう」
「違わないよ。はっきり言ってた。りょうちゃんの心にいるのは若井なの?」
「違う!若井が···最近、僕のいない時に女の人を家に呼んでるから!それに香水の匂いつけて帰ってきたり、きっと色んな女と···そういう事してる···」
まさか。
俺の知っている若井は確かにモテるけどそんな誰でもいいなんて奴じゃないし、しかも家に連れ込んだりする奴じゃない。
「元貴の家に泊まって帰ったらわかるんだ、部屋の匂いとか··見たことない化粧品とか···」
それが本当だとしても若井も男だし、褒められたことじゃないけど遊びたい気持ちくらいあるかもしれない。
問題はそこじゃない。
どうしてりょうちゃんがそれにそこまで傷ついて行かないでって泣くほどなのかってことだ。
「りょうちゃんは若井が他の人とそういう関係なのが許せないの?だから辛いんじゃないの?···りょうちゃんが好きなのは俺じゃなくて···」
「違う!ちがうっ!好きじゃない、若井のことなんて···!若井なんて···僕は···きらいだ···」
りょうちゃんがこんなにも感情的になるのは珍しくて、そしてその嘘に見えた色は嫉妬を色にしたような黒いくらいの赤だった。
そんなにも若井はりょうちゃんをこんな風にさせるんだ···。
俺は聞かなくてもりょうちゃんの答えがその時は簡単に想像できた。
きっとりょうちゃんに俺の事好き?って聞いたら好きって返ってくるだろう。
それは嘘のない無色透明な答え。
それはたぶん俺の存在がりょうちゃんを揺るがすほどのものじゃないからだ。
「···わかった。また眠れそう?それとも帰る?」
「少しして落ち着いたら寝るよ。明日もあるし···元貴、先に寝てて。起こしてごめんね」
俺は1人でりょうちゃんの温もりが残るベッドで横になった。
寝て、と言われてもうまく眠れそうにもなかった。
自分が前に感じたものは外れてはなかったようだ。りょうちゃんは、若井が好きだったんだね。
それを俺は優しさにつけ込んで、見て見ぬふりして、自分さえよければって縛りつけた。
どこかでわかっていた、けどいつかは本当になるとも信じていた。
どこか落ち着いているのは予言してたからか?それともショックですぐには実感がないだけかわからなかったけど、涙は出なかったし前みたいに自分を傷つけるような気持ちにもならなかった。
時間は静かに過ぎていく。
···りょうちゃんはいつまでたっても俺の隣には戻ってこなかった。
コメント
3件
藤澤さんは遊び歩いている若井さんを、大森さんは傷つけられて苦しんでいる藤澤さんを、それぞれ思って待つ。意味合いや状況は違うけど、帰って来ない人を待つのって辛いよね⋯⋯