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敵として。
その言葉を、
誰かが口にしたわけじゃない。
ただ、
もうそうなってしまった、というだけだ。
yは、
一人で歩いている。
ラグドの隣じゃない。
同じ屋根の下でもない。
交差しない道を、
選んだ側の足取り。
⸻
画面に流れるのは、
いつも通りの数字。
ログ。
履歴。
処理結果。
正常。
想定内。
最適化完了。
世界は、
今日も自分を正しいと言っている。
yは、
それを見て
鼻で笑った。
「ハッ….……便利だな」
⸻
code。
それは、
世界が嘘をつくための言葉だ。
誰も選ばなかったことにするための、
書式。
誰かが死んでも、
事故。
誰かが切り捨てられても、
必要な処理。
選んだ“誰か”は、
どこにも存在しない。
yは、 そのcodeを壊す。
もう、
迷っていない。
⸻
最初は、
小さく。
順序を一つ、
入れ替える。
次は、
大胆に。
優先度を、
根こそぎ書き換える。
⸻
救われる命と、
切り捨てられる命。
両方が、
同時に生まれる。
⸻
yは、
画面から目を離さない。
「……おい、泣くなら
後にしろ」
誰に向けた言葉かは、
分からない。
⸻
ニュースが、
yの存在を騒ぎ始める。
危険。
異常。
倫理の破壊者。
⸻
yは、
その呼び名を受け取る。
拒否しない。
修正もしない。
⸻
敵でいい。
悪でいい。
⸻
そうでなければ、
この世界は
自分の嘘を認めない。
⸻
一瞬だけ、
yの脳裏に
ラグドの笑顔が浮かぶ。
前向きで、
迷いのない顔。
⸻
「……ちゃんと、
前に進めよ」
小さく、
それだけ言った。
⸻
次に再会する時。
それは、
同じ道の先じゃない。
⸻
壊す側と、
守る側。
⸻
yは、
歩き続ける。
完全に違う歩き方で。