みずちゃんが来てから三月が経った。
「くもくんくもくん!あっちで富さん達がお洋服配ってるよ!貰いに行こ!」
「あ、うん、いこっか。み、みずちゃん」
「今週はどんなのが貰えるのかなぁ。富さんたちお洋服作れるなんてすごいよね」
「ほ、本当にね」
やや他人行儀ではあるが、だいぶ仲良くなったようだ。
ここまでの道のりは凄かった。
みずちゃんが触ったら壊れそうと言って少年のところに行けずにいて、少年はそれを見て悲しそうな顔をして、みずちゃんが焦って、神王様が笑って……まさにカオス。だるかった。
「富さーん!くもくん連れてきた!」
「あら、くもくん!あなたの為に現世の若い男の子の間で流行っているようなお洋服を作ってみたの!どうかしら?」
「え、えと……僕には、ちょ、ちょっと、は、派手すぎませんか……」
「ええ〜、そんな事ないよ!かっこいいよ!着てみてよくもくん!」
「え、ええぇ……み、みず、ちゃんが、そんなに、い、言うなら……き、きてみま、す……」
「わ!恥ずかしがってる〜、かわいいなあくもくんは〜」
「え、えへへ……か、わいくない、よ……」
あの後、みずちゃんが少年のことをなんと呼べばいいかわからなかったらしく、雲のように白い肌に、薄らだけど、ころころと変わる表情がすぐ形を変化させる雲に似ているということで、くもくん、という名前がつけられた。
すごい考えたねと言ったら、「文学には自信があったんですよ。将来は作家になるのが夢でした。賞状を17個も貰えたんです!すごいでしょ」と、目を伏せて苦しそうに言った。
輪廻に、戻ってくれれば、地獄に行かせることもなかったのに。
そんな、悲しい顔を見ることもなかったのに、少年と出会うこともなかったのに、苦しい思いをすることも無く、自分が病に倒れ死んだことなんて忘れて新しい人生をえがけたのに。
巫というのは本当に愚かで哀れな一族だ。
コメント
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てんしのおしごとだぁぁぁめっちゃ好き!