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りょん.
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次の日。
スタジオ。
「……」
元貴はスマホを見つめたまま、小さく眉を寄せていた。
既読がつかない。
連絡もない。
涼ちゃんが遅れること自体はたまにある。
でも——
今日は、なんか嫌な感じがした。
「……若井」
「ん?」
ギターを触っていた若井が顔を上げる。
「涼ちゃん来てない?」
「まだ」
若井もスマホを見る。
通知なし。
「寝てんじゃね?」
軽く言う。
でも元貴は黙ったままだった。
「……元貴?」
「……昨日さ」
低い声。
「電話きた」
「え?」
若井が目を瞬く。
「夜中」
「……俺にも」
その瞬間。
2人の空気が変わった。
「……は?」
若井が顔を上げる。
元貴はスマホを握ったまま続ける。
「なんか普通に喋ってたけど」
「……」
若井の脳裏にも昨夜の通話が蘇る。
“また明日な”
『……うん』
あの少し震えた声。
「……っ」
急に胸がざわつく。
嫌な予感が一気に広がる。
「……若井」
元貴が静かに言う。
「家、見てきて」
「……」
「なんか嫌な感じする」
その声は真剣だった。
若井ももう、
“考えすぎ”では済まされない気がしていた。
「……分かった」
立ち上がる。
心臓が嫌な音を立てる。
“まさか”
その考えを振り払うように、
若井は急いでスタジオを飛び出した。
車を走らせながら、
若井は何度も涼ちゃんに電話をかけていた。
「……出ろって」
コール音。
でも繋がらない。
既読もつかない。
昨日の通話が頭から離れない。
“また明日な”
あの時、
なんで気づかなかったんだろう。
なんで普通に電話を切ったんだろう。
「……っ」
ハンドルを握る手に力が入る。
嫌な予感ばかり膨らむ。
⸻
マンションに着くと、
若井は走るように中へ入った。
エレベーターを待つ時間すら長い。
「……っ」
20階。
扉が開いた瞬間、涼ちゃんの部屋へ向かう。
インターホン。
反応なし。
「……涼ちゃん?」
ドアを叩く。
返事はない。
「おい、いるんだろ!?」
もう一度。
静か。
昨日と同じだ。
その瞬間、
若井の背中に冷たいものが走る。
「……っ」
急いでポケットを探る。
合鍵。
震える手で鍵を差し込む。
ガチャッ。
「涼ちゃん!!」
ドアを開けて飛び込む。
部屋は静かだった。
綺麗すぎるくらい綺麗で、
生活音が何もない。
「……」
嫌な静けさ。
「……涼ちゃん?」
若井は奥へ進む。
その時、
机の上に白い封筒が見えた。
「……は」
足が止まる。
封筒には、
自分と元貴の名前。
嫌な汗が一気に出る。
「……やめろって」
震える声。
視線を逸らしたくなる。
でも、
若井はゆっくり封筒を手に取った。
その時。
奥のベッドが目に入る。
「……っ」
若井は息を呑む。
ベッドの上で、
涼ちゃんが静かに横になっていた。
眠っているみたいに。
「……涼ちゃん?」
急いで駆け寄る。
肩に触れる。
「おい」
返事はない。
「……涼ちゃん」
呼吸を確かめる。
その瞬間、
若井の目から一気に涙が溢れた。
「……っ、」
まだ、
温もりが残っていた。
「……っ、涼ちゃん……!」
声が震える。
遅かった。
昨日、
あの電話の時、
もっとちゃんと聞けばよかった。
“疲れちゃった”
あれは、
ただ眠いって意味じゃなかったのに。
「……っ」
若井は涼ちゃんの肩を抱き寄せる。
涙で視界が滲む。
静かな部屋の中で、
若井の掠れた呼吸音だけが響いていた。
次回5000