テラーノベル
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「何よ、なによ、ナニヨ……みんなしてこんなただの召使いの肩を持つの?そんなの、ただの偽善者じゃない!心の中では見下しているくせにっ!」
「本当に……残念なくらい……アナタは電車の中で無実の私の父の手を掴んで“痴漢だ”と言った日から何も成長しないどころか……日々腐っていっている。それは今も進行中で……テストを受けたくなかったという嘘をついた娘をそのまま甘やかした母親も同罪だと思います。あなたたちは、私たち家族を犯罪者と犯罪者家族にした……父と母がどれだけの努力をしたって、元通りの生活は手に入れられない苦しみが…あなたたちに分かりますか?」
遥香の叫びのせいで、池田でなく先に遥香へ……分かりますか、と言っても分からないと感じていた。
でも、もう遥香たちも元の状態へ戻るのは難しいと思うから、その苦しみをその身をもって知ればいい……それだけよ。
それに、何を言っても配信されている彼女の言葉は未来の彼女を苦しめるはず。
十分だわ。
「甘やかしたって…誰だって我が子は可愛いでしょ?」
「そうですね。だからこそ、真奈美さんのご両親は真奈美さんにも苦労をかけることになってどれほど苦しまれたか……想像を絶する苦しみですね…胸が痛い」
奥様の声に続いたのは、今着いたばかりの車の後部座席から降りたご主人様で、話が分かっているということは、カメラマンの配信を見ながら帰って来たのだろうと思う。
「そ、そ、そうですけど……遥香も子どもでしたから……」
「それなら子どもに代わって、親のあなたが謝罪に伺いましたか?真奈美さんとご両親に頭を下げて謝りましたか?」
押し黙ってしまった奥様から視線を動かしたご主人様は、私を見て
「先日まで、真奈美さん家族が被害者となった冤罪事件について知らなかった……再婚時に何も聞かされていなかったというのも言い訳がましいが……一度は彼女たちと家族になった者として、心よりお詫びします。謝っても許されることではないけれども、多大な苦労、苦悩を与えてしまったこと、それが今も続いていること申し訳ない。今、ご両親へも謝罪に伺いました」
と、予想外のことをおっしゃった。
「そんな……そんなつもりではなかったんです……ただ…」
どうしよう……中園へは迷惑をおかけしただけでなく、謝罪なんて……
「父のけじめだから大丈夫。真奈美さんは真奈美さんの“つもり”を貫いて大丈夫だから」
篤久様がそう言って私の背中をポンポン…とすると
「ああああ、あなた謝罪に行ってくださったのね……良かった……」
「そうよ、これで、終わりでいいでしょ?こんなことで許せないくらいの迷惑を被っているんだけど、私。どうしてくれるの?」
場違いにホッとする奥様と、私を睨みつける遥香が……きっとカメラにズームされている。
「ご自分でどうにかしてください。そういう中で私も生きてきましたから」
「バカにしないでっ!アンタと私は生きる世界が違うのよ!一緒にするなっ!」
「そうですね、一緒にして欲しくないのは私も同じです。でも……どの人間も同じ世界に生きていると思いますよ?アナタだけが違うみたい…」
口を開けたまま固まった遥香を無視して、私がご主人様を見ると
「彼にも何か?」
と池田を手で示される。
「いえ、特には何も。あの人に指示されるのはおかしいとずっと思っていましたし、あんなこともされてもう顔も見たくないです。どんな人か多くの方に知ってもらえたから…もういい」
「そうだね。被害届を出すことも出来るが、それはあとで相談するとして、すぐに視界から消えてもらおう」
「お願いします」
私がご主人様に会釈するタイミングで、車を置いてきた運転手さんがやって来て、池田を連れて行く。
「で、さっきの話ですが、私が謝罪に伺ったことを“よかった”とは、どういう意味でしょうか?」
ご主人様が奥様に静かに聞き直すと
「私の代わりに行ってくれたのだから…事件も収束ってこと」
と、とんちんかんな答えが返ってくる。
「代わりになど行っていませんが?」
「えっ…?」
「じゃあ、何のために行ったの?」
本気で驚く奥様と、本気で分からない遥香は本物のバカだ。
「私は私として、申し訳ない気持ちをお伝えしてきた、それだけです」
そうよね、中園建設工業の社長が子どもの使いのように動くわけがないでしょ?
コメント
12件
一度は家族になった‥意味深‥。家政婦のいない生活‥。ざあまな感動的ラスト‥レッツゴー!!
母娘共に最低だわね。 再婚した旦那様が謝罪に行ったのは、貴女達の為ではないのよ。 さっさとこの2人を追い出して欲しい。
さぁ、家政婦さんのいない生活を遥香親子には経験してもらいましょ😝 一生…