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控室で待つこと30分程で、俺と露理葉さんの迎えが来た。
装備のチェック・手入れ等は前日に済ませているし、召喚システムも問題無し。MPも専用の保管器具に充填済みである。
暫くして露理葉さんと別の道に案内されてさらに歩くと、外への出口が見え、歓声が聞こえてきた。
サッカースタジアムに似た県営の運動場の向かい側の入り口からは露理葉さんが歩いて来ていた。
声援に応えて手の一つでも振ればいいのかとも思ったが、案内の人に強めに誘導される。
誘導先は運動場の中央で、むき出しの地面が程よく整地されている感じだった。
事前に聞いていた話だと運動場の中全体がバトルフィールドとなるはずだが、観客席に近い辺りには芝生が残っている。
芝生がダメになったら後で賠償請求されないだろうか、とボンヤリ考えていると、
「お待たせいたしました!それでは○×県冒険者支援イベント本選第一戦をこれから執り行います!
進行と実況は私、○×県庁冒険者支援課課長、役所 勤 と解説は現役B級冒険者の雷 電次郎さんでお送りいたします!
雷さん、本日はよろしくお願いいたします!」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
「いや~、それにしても雷さん、冒険者同士の戦いという事ですが、雷さんはこの組み合わせでどちらが勝つと思われますか?」
「勝負は水物、と言われますが、私の見た所だと小野麗尾君は手堅く実力を積んで、
露理葉さんは召喚モンスターに頼る部分が結構大きいので、どうでしょうねー……
小野麗尾君が彼女のモンスターにどれだけ対策してきたか、そこがこの戦いのポイントになると思いますよ」
「なるほど…… ご意見、ありがとうございます。では間もなく試合開始となります。両名とも開始位置に移動願います」
整地の中央付近に白線が二つ引かれている。距離は50m位か。
試合開始前にモンスターは呼べないしボウガンで狙いを付けておくのもダメだって言われたし、開始の合図は聞き逃さない様に……
”パンッ”「それでは第一戦、開始です!!」
出遅れてはいないはず。まずはボウガンで牽制射撃!
露理葉さんの召喚機の操作を邪魔できれば上出来である。
と、思っていたら矢が彼女の召喚機に命中。
続けて撃っていた矢も彼女の左腕の革防具に命中。
ここに来て最上の目が出たようだ。
すかさずボウガンを収納し、自分の召喚機を操作する。
「仕事の時間だ、飲んだくれ共!プランA!30秒で支度しな!!」
通常より大き目のゲートが開き、筏のような丸太の柵が飛び出してくる。ゲート越しに柵はいくつも投げ込まれて、最後には
大きな鉄の扉を2枚担ぎながら10人を越えるドワーフの戦士がやって来た。
最初に投げ込まれた柵を立てて杭を打ち込んで固定しては次の柵を隣に立てるのを繰り返し、ゲートを中心に高さ10mの星型の防護壁を10分程度で組み上げたのを確認し、物陰に隠れながらセキローを召喚して指示を出した後、最後に鉄扉を取り付けて、第一段階完了。扉の設置に併せて建てさせた物見櫓の上に上り、持ち込んだ荷物の中から法螺貝を取り出すと思いっきり吹き鳴らす。
ブオオオー!ブッ!ブオオオオオオォォォォー!!!!!
「ちょ!小野麗尾!アンタ何やってるし!?何コレ!?マジ何なの!?」
フッ、動揺しておる動揺しておる……
選手に着用が義務付けられているインカムから会場放送で流される露理葉さんのパニック具合にほくそ笑みながら荷物からレンタルした拡声メガホンを取り出し、
「フゥーハハハハハハハ!此れなるは我が小野麗尾家が配下:怒倭悪腐衆一門の習作、風雲:小野麗尾城ver.0.01なり!
露理葉 青葉!我が首欲しくばこれからちょこっとだけ開ける正面正門より入り我が元まで見事辿り着いて見せるがよい!!!」
「それ、何のキャラだし~!?」
城内の仕掛けの具合はどうだろな、と
自家用のインカムを口に近づけてスイッチオン。
「こちらコールサイン:BAKATONO。コールサイン:SASUKEは返答されたし」
「こちらSASUKE、聞こえております」
「仕掛けの設置状況はどんなものだ?」
「もう間もなく仕上がります」
「よし、それじゃあコールサイン:MUSCLEに通達、城門を人一人が通れる程度に開けられたし。
これより敵士気に対する攻撃作戦:サスケェ!を開始する!妨害要員以外は事前に決めていた待機場所に移動せよ」
「ウオオオオオオオォォォォ!宴じゃああああ!皆、早く行くぞ!おビール様がワシらの到着を待っておる!」
ジジィ共が年甲斐もなくはしゃぎ出す。まぁ、無茶な納期の仕事をさせたし、少しくらいは多目に見るか……
さて、露理葉さんはまだ入ってこない。彼女が偵察に出しそうな召喚モンスターを考えるとこっちもそろそろ召んでおくか。
召喚機を操作すると小型のゲートが浮かんで、大きな蜂の頭がこっち側を覗き込んできた。
「ギギッギギッ」
「ああ、今日は蜂蜜の話じゃないよ。そっちのソルジャービーを何体か貸して欲しいんだけど」
「ギギギギギ」
「ああ、巣箱の件は今ジジイ共に作らせているからもう何日か待ってほしいかな」
話が終わると、6体のキラーソルジャービーと1体のキラーナイトビーがこちら側にやって来た。結構な大盤振る舞いである。
「お疲れさん、今日はよろしく。敵は多分バードマンでそろそろ……」
来た。
「あれだ。殺れ」
キラーナイトビーを先頭に一斉に襲い掛かるキラーソルジャービー達。
バードマンも手に持ったショートボウで応戦を開始するが、キラーナイトビーの装甲を傷つけることもできず、
四方八方から槍のような針にメッタ刺しにされ、武運拙くオタッシャ。
彼らが遺体を俺のところまで運んできて、
「ギチギチギチ」
「うーん。ちょっと待ってて」
再び拡声メガホンを手にして、
「露理葉さ~ん!家のキラービー達が君の所のバードマンの遺体をお土産に持ち帰りたいって言うんだけど、良いかな!?」
「いいとも~♪ って言うと思う訳!?遺体は速やかかつ丁重に返還するし!」
「身代金はいくら出す?」
「ちょっ!?フザケンナ!アンタそれ最低だし!?」
「我々の間には一切の交戦規定が結ばれていない。繰り返す、我々の間には一切の交戦規定が結ばれていない。
こちらの提示した正門からの入場ではなく、飛行による不法侵入に対する罰則の上限もまた定められていない。
これらの事案に関してよく考慮されたし」
こちらの掌の上で踊るしか選択肢は与えない。
あ、何か俯いて肩を振るわせ出した。
しくじった。追い込み過ぎたか!?
「分かったわよ。あんたの言うとおりにしてあげる。その代わり、私があんたの所まで辿り着いたらバドちゃんは返してもらうし!!!」
オオオオオオオオ!!!歓声が沸く!!! 客席の方が何故か盛り上がってまいりました!!!
だがここまでだ。
「コードネーム:SNAKE、出番だ。一撃で仕留めろ」
次の瞬間、ビー!!!と言うブザー音が鳴り響き、審判が試合終了と俺の勝利を宣言する。
さて、ジジイ共に声を掛けて撤収するか。
バードマンの遺体を背負ってえっちらおっちらと歩き出す。
商店街の肉屋で代わりの肉買えるだけ注文出しておかないとなぁ。