夢を見ていた…
私が入院している部屋に母が来ているという、現実とはあべこべのシチュエーションで
‘才花の父親から預かっているお金が十分にあるから、ダンスも他のこともお金がないからと諦めることはない’
と現実にあったように、青白い母が私に通帳を渡した。
諦めないとダメな状況なんだよ、お母さん。
魔法の言葉も、いずれ使わない方が良い呪いの言葉になる例だね。
「才花、起きたか?」
私が動いたからベッドも動いたのだろう。
私をそっと抱きしめていた羅依の声が髪に当たる。
「…ごめん…起こした…」
「まだ寝てなかった」
「何時?」
「12時くらい。腹へってないか?」
「どうだろ…夢見てた…」
「俺の夢?」
「ふふっ…ごめんね、お母さんの夢…お父さんの存在が分かる記憶…でも名前も何も知らない……」
「会いたいか?」
「会いたい……?…分からない…」
「そうか」
「これまで考えたことないの。はっきりと知らないけど、お母さんと結婚出来ない事情があったようだし…多分、私と会うのも迷惑だと思うよ?」
「そうか。今、初めて考えて、もし今後会いたいなら会えばいい」
「どうやって?」
「探せる奴がいるだろ」
「私のこと調べたみたいに?」
「そういうことだ」
「…そっか…羅依…シナモンのホットミルク作って」
チュッ…頭へのキスで返事をした羅依は
「俺好みのお願いが出来たな。いい子だ」
ぎゅう……っと私を抱きしめてから部屋を出た。
「羅依はご飯食べた?」
「食べたし、ワークアウトもした」
ベッドで羅依にもたれて座りながらホットミルクを飲む。
美味しい……
「私も…ちゃんとするから」
「そうか」
後ろから私のお腹の前で手を組む彼は‘何を?’とも聞かずに‘そうか’と言う。
「羅依の‘そうか’は心地いいから好き」
「そうか…才花限定にしようか?」
「ふっ…タクのいつもの冗談より、羅依のたまに言う冗談の方が面白いね」
「冗談は言ってないが?」
「そうか」
「才花の‘そうか’もいい」
「そうか…羅依限定には…出来ないね。考えて話するのは難しい」
もう一口ホットミルクを飲むと
「ちゃんと食べて、リハビリして…あとは分からないけど…そのふたつはちゃんとするから」
と伝える。
自分で言葉にするのも大切だと思った。
何をするのか分からないけれど、青白い母を思い出すと、食べて動かないといけない気がする。
「ふたつも出来れば上出来だ」
「そう?ささみの鍋、タクに教えてもらおうかな?」
「いいんじゃないか?」
「うん、そうだよね。そうする」
「才花。アパート出ろ。ずっとここにいろ」
羅依が後ろから私の肩口に顔を埋め、懇願するようでありながらはっきりと命じた。
コメント
1件
才花限定と俺好みといい子いただきましたっ✨✨✨この3つ私好み🫰🏻➰💕 才花ちゃん冗談言い合ってる〜羅依と💕羅依にとっては違うらしけど🤭タクよりたまにの羅依の方が面白いって! 「そうか」 タクは似合わないよ〜😆 お母さん心配で出てらして、生きるという道へ導いてくださった😭少しずつ食べてリハビリして、その後はまたその時考えてその時やりたい事があればやればいいと思う!お父さんに会いたければお願いしてね。 それはここ、羅依のお家で羅依と共に☺️たまにタクも😂