目覚ましが遠くから聞こえる
腕の中で何かが動くのを感じて、徐々に意識が覚醒していく
(ああ、そうや、しょっぴーと一緒に寝たんやった)
目を擦りながら目覚ましを止める
あたたかな体温を見下すと、窓から差し込む眩しさから逃げるように、俺の胸に顔をうずめてくる
「しょっぴー、おはよう」
「んぅんー」
「起きやんと」
体を軽く揺すると、ようやく目を開けて見上げてくる
「おはよう、しょっぴー」
ぱちくり、と音が聞こえそうな瞬きをしたしょっぴーは、ばっと起き上がる
「え!?な!?あさ?、え、なんで!?…あ、起こしてって言ったじゃん!」
「起こしたよ、起こしたけどしょっぴー起きひんかったんやもん」
「え?!…そっか、それはごめん、、、だけど!なんでいっしょ?!」
「ソファで寝かすわけにいかんやん」
「…べつに、いいし、、いや、とにかくごめん!!ありがと!!俺帰るわ!」
「え、朝ごはん食べていったらいいやん」
「いや今日は帰る!昨日はありがと!楽しかった!じゃあ、ごめん!お邪魔しました!」
カバンを引っ掴んであっという間に帰ってしまった
「顔、真っ赤やったな……」
あれは怒ってるんじゃなくて、恥ずかしがってる
流石にそれくらいはもうわかる
「少しは意識してくれてんのかな……だだびっくりして恥ずかしいだけなんか……」
コーヒーを入れて、朝ごはんを作っていると、しょっぴーからのメッセージが入った
【慌ただしく出て行ってごめん。夕ご飯ありがとう。美味しかった。また写真見せて】
【大丈夫やから、またご飯食べにおいでや。写真は今度見せるな】
真っ赤になってた顔を思い出しながら、次を仄めかすメッセージを送って朝ごはんにする
次に仕事で会った時、しょっぴーはちょっと気まずそうに話しかけてきた
「こーじ」
「ん?しょっぴー、どしたん?」
「あの、この前、朝、ごめんな。……ちょっと混乱しちゃって。ご飯ありがと」
「あぁ、気にしてへんよ。こちらこそ写真撮らせてくれてありがとうな」
「ううん」
「写真見るか?」
「うん」
「これ、この前、現像して見せようとしてた分。全部ちゃうけど」
「へぇ、なんか楽屋とかと違うな」
「せやろ」
「あ、これいいな」
「やっぱり?俺もそれが1番いいと思ってん」
「これ、ちょーだい」
「ええで、いくらでも」
「ん、ありがと」
「残りの写真も見たかったら、また家おいでや」
「……いいの?」
「生姜焼きも作ったる言うたしな」
「ほんと?ふふ…楽しみ」
「しょっぴーだけの特別やで」
「……どうせ、みんなに言ってるんだろ」
「そんなことあらへんよ!愛しのしょっぴーのためやんか〜!!」
「うははは笑」
冗談めかして言えば、いつものように大口を開けて笑ってくれた
それに安心して、普段だったらすぐに確認する次の予定を聞かずに、いつも通りの会話を始めた
【生姜焼き食べたい】
そんなメッセージがしょっぴーから来たのは、それから幾日か経った時だった
何回か俺から家に誘ったことはあったけど、しょっぴーから来たいと言われたのは何気に初めてな気がする
(珍し……)
なんとなく期待感が膨らみつつ、仕事の休憩時間中にOKと返事をする
今日は夕方に終わるこの仕事で上がりだから帰りにスーパーに寄って帰ろう
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