カチャンッ。目の前にお茶の入ったコップが置かれる。
「すまないな。お茶しかなくて。」
フレークは小さく頭を下げた。
「いえ、別に…」
その時、ストンッと目の前に彼女が座る。彼女の目は鋭く、でもどこか温かみがあった。
「まぁ、まずは自己紹介といこうか。私はシェリル。ここに長く住んでいるものだ。」
フレークは緊張しながら言った。
「俺はフレークです。で、こっちが俺の妹の…」
「メリアです。」
メリアが小さく付け加える。
シェリルは頷き、
「そうか、メリアにフレーク。そのお前たちがいう化け物というのはいったい何なのだ?」
メリアは言葉を選びながら答えた。
「えっと、今わかってることは、その化け物達は人によって見え方が違う…化け物なんです。私には竜みたいに見えて、兄さんには天使のようなものに見えるそうなんです。」
「人によって見え方が違う…だと?」
シェリルの眉が寄る。
「はい…」
シェリルは何かを考え込むように視線を遠くへ向け、ふっとその場を立った。
「そのような化け物が出てくる本を読んだ覚えがある。」
「本当か⁉︎」
「まぁ、少し待っていろ。」
シェリルは部屋の奥へと向かい、数分後に戻ってきた。
「見つけた。あった。」
「それは?」
「昔の本でな。一度読んだことがあったんだ。ちょっと待ってろ。この本によると…」
シェリルは本のページをパラパラとめくり始めた。
「これだ。この本によるとその化け物の名前は幻影獣…で、何百年か前に一度この星に来て……⁉︎撃退している⁉︎」
「何だと⁉︎」
「その詳細が書かれているページは…っ、古い本だからもしかしたらとは思っていたが…破けている。そのページだけが破られている。」
「くそっ!」
「いや、待て。勇気あるものに光あり。その光とともに月剣を使い醜い魔獣を倒すべし。月剣は月の洞窟にある。だとよ。」
シェリルは本のページをなぞりながら読み上げた。
「何だそれ⁉︎なんだよ月剣って。何だよ月の洞窟って⁉︎」
「この文献…わからないことだらけだな。結局幻影獣とやらがなんなのか全く記されていないし、月の洞窟の位置すら書かれていない。」
「なんなんだよ⁉︎」
「まぁ、イラついていても仕方あるまい。私は月の洞窟について友人に聞いてみることにする。だから少し待っていろ。」そう言うと、シェリルは別の部屋へと入って行った。
フレークとメリアは、彼女の背中を見送りながら、重い空気の中で何が待ち受けているのかを考えていた。静けさの中、次の一手が迫っていることを感じていた。
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