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テラーノベル(Teller Novel)
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『通報者は糸音真弓。20代前半の女性で、深夜、友人達との飲み会を終え、帰宅途中に例の公園で銅像が動いていたのを発見したらしいわ。また、その時変な匂いもしたみたい…とりあえず、情報はこれで以上ね。どう、役に立ったかしら?』

「ええ…ありがとうございます。糸音真弓さんは飲酒をしていたそうで?しかも、かなりの量を」

『みたいね。他の奴らは幻覚だの言っているけど、一応、ね。それに…』

「それに?」

『泥のようなものも見えたそうなの』

「……!そうですか…わかりました。とりあえず監視は続けてみます。では」

『ええ、頑張ってね』

そう言うと、鴉さんは通話を切り、ふうっと息を吐きました。

蝙蝠さん、鴉さん、そして私の以下3名で監視を始めて既に数日が経過。一向に銅像の動く気配はしません。念の為、場所を変えたり時間帯を変えてみたのですが、それでも異常なし。

痺れを切らした鴉さんが、本部に連絡をしたというところです。ですが、情報を聞く限りそんなに役に立つようなものはないようですね。

それにしても、泥のようなもの……。

《泥人形》に記載された人たちは一応、こちらで保護させてもらうことになりました。正直、ずっと観察しているわけにもいきませんし、何より他の任務もありますから。

ですが、泥のようなものが、《泥人形》に関わるものなのでしたら…。

「…監視はとりあえず、このまま続行する」

「これ以上、進展がなかった場合はどうしましょう」

「そうだな…雀に依頼するというのもありだが…」

コードネーム【雀】、情報収集や索敵に特化した能力を持つ、最高幹部の1人ですね。

確かにその方にお願いすれば、何かしらの進展はあるかもしれません。

「だったら、いっそ今ここでしてもらうことは?」

「無理だ、今雀は任務中だ」

「そんな…じゃ、じゃあ場所は?場所次第では近くに来てもらうことも…」

「雀は他の国にいる。近くどころではない」

「そんなああ…」

「……鴉」

すると、今まで黙っていた高森さんが突然口を開きました。何か、あったのでしょうか。

「…銅像の…足…」

「足って……」

蝙蝠さんが指差したのは、カメラの映像が写し出されたモニターでした。鴉さんと私はモニターを確認してみます。

勿論、そこには変わりない犬の銅像があって……。

「ーー泥?」

そう、犬の足元には大きな泥団子が置かれてあったのです。

「…あ、あの…ここの公園に来た人って…」

「…今日1日はいないはずだ」

「さ、さっきまで泥団子って置かれてましたっけ…」

そこまで言うと、鴉さんは慌ててトラックの荷台から出ます。

「あっ、鴉さんっ!」

「………」

小さくなっていく背を、私達は急いで追い掛けました。

♦︎♦︎♦︎

盲点だった。そもそも、異質な匂いがしたと聞いた時から疑えば良かったのだ。可能性ではない、これは確信だ。

これが《泥人形》の仕業だというなら。どういった原理なのかは分からないが、だがアイツが体を乗っ取った瞬間はこの目で見た。それが生物だけではなく、モノに対しても出来るなら。

私たちがいくら監視をしても反応がなかったのも、それのせいならば。

「…はあ…はあ…」

慌てて走ってきたせいで、呼吸が浅くなる。深呼吸をし、息を整えそして銅像の足元を見た。やはり、そこにはモニターでも見つけた泥団子が。それを手に取ると、変な匂いが僅かにした。泥…の様な、違うような。異質な匂いであった。

「鴉さんっ!」

急いで来たのだろう、眠り姫と蝙蝠が走って私の元に近付いた。

「だ、大丈夫ですか?泥団子は?」

「これだ」

手に持っていた泥団子を、眠り姫に渡す。

「これ…は。って、何か変な匂いしますね…泥…でしょうか」

「分からない。泥と何かが混ざっている様だな」

「不気味ですね…」

「だな。ひとまず、この辺りを散策しよう。何かしらか発見できるかもしれない」

そう言うと、眠り姫は元気よく返事をし、蝙蝠は僅かに頷いた。

銅像の辺りを探そうと、足を動かそうとする。と、その瞬間。

ーーべしゃっ。

銅像の後ろから、何か柔らかいものが地面に落下する音が聞こえた。

「ひっ…!?い、いま…!」

「…攻撃体制に入れ、戦闘になるかもしれない」

ピリッとした重々しい雰囲気が我々の間に漂う。そして、慎重に銅像の後ろへ近付いた。

そこにあったのは…。

「泥…!?」

沢山の泥であった。

♦︎♦︎♦︎

銅像の後ろから、公園の出入り口に向かって泥が、まるで足跡のように続いています。

私達を、こちらに着いてこいと誘う様に。

泥を見た鴉さんと蝙蝠さんが思わず黙ります。私も驚きで固まってしまいました。

この泥…まさか。

「ど、どうします。この泥を辿って行きますか…?」

暫くの沈黙。鴉さんは考えている様です。

「……仕方ない。この泥を辿ろう」

「でも…出入り口にまでしかないようですが…」

「……」

鴉さんは何もいわないまま、ずかずかと出入り口の方まで進んでいきます。丁度、鴉さんが出入り口に差し替かり、もう出てしまいそうな時。


ーーべしゃっ。


また、何処かで泥の落ちる音がしました。

「…えっ…!?」

鴉さんの前に、泥が上から落ち、また足跡の様に続いていたのです。

「……どうやら、誘われている様だ」

諦めたように鴉さんはそう呟きます。

このまま行くべきでしょうか…。ですが、このまま行かないと駄目なような気がします。

それに、蝙蝠さんもいるのですから…。

「着いて、いきますか…?というか、これは着いていった方が良さげですよね…行かないと、折角のチャンスを逃してしまうような気がして…」

「…蝙蝠、後ろは頼んだぞ」

「……ああ」

鴉さんと蝙蝠さんはお互いに頷き合います。鴉さん、私、蝙蝠さんの順番で進むことにしました。

泥に沿って、道を進んでいきます。

途中、泥の途切れた場所がありましたが、また新たに上から泥が落ち、また誘うかのような並びで泥が散らばっていました。

…進むしかありません。進まないと、《怪物》いえ、《泥人形》への近道を失うことになりますから。


そして、暫く歩いて。

「ここは…」

鴉さんは少し驚いたような声を出します。背後で立っている蝙蝠さんも、どこか驚かせられたような感じを醸し出していました。

私達の目線の先。

そこは、朽ち果てた廃工場でした。

魔法少女の死にゆく先

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