テラーノベル
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昼食を乗せたお盆を手に、葛葉さんの部屋に向かう
ノックをすると返事が戻って来た
「失礼します」
中に入ると窓辺に2人が立っている
抱き合いながら‥‥
俺が葛葉さんと目が合うと、葛葉さんはセラさんへキスをした
そして唇を離すとまた俺を見た
俺は居た堪れず目を逸らす
セラさんはこちらを一度も見ない
「先にご飯食べてからにしよう。続きはその後で」
「‥‥葛葉さん」
「ほら、出来立て美味そう!小柳さんの腕前をみないと」
「‥‥‥‥」
まるで見せつけているかのようだ
でもここに居る間はこんな状況に慣れないと‥‥
セラさんが椅子に座ると葛葉さんが俺に向かって歩いて来た
「あ、夜ご飯はお酒用意して。なんかつまむ物と。あと‥‥」
さらに俺に近づいて耳打ちをした
「7時くらいになったら勝手に部屋に置いて行ってよ。俺達居ないかもしれないけど」
「‥‥わかりました」
分かってた
分かってるのに実際に目にすると胸が痛い
自分の分に取り分けた昼食も喉を通らない
セラさんの為ならと考えていた自分が情けなかった
7時が近づくとキッチンへ向かい、葛葉さんが言っていたものを用意して部屋に向かう
気が重い
居ないかもと言っていたけれども‥‥
ノックはせずに部屋に置いて行く
俺は言われた通りノックはせずに扉を開けた
「あぁっ!セラフさ‥‥や、またいくっ!」
「‥‥っ‥‥あ‥‥」
そんな気はしていた
仄かなオレンジの灯りの中
セラさんの上で仰け反る葛葉さんがみえた
俺は手にしたものをテーブルに置くと急いで部屋を出た
葛葉さんは何がしたいんだろうか
俺、セラさんの事を奪い取ろうなんて思ってないのに‥‥
自分の部屋に戻るとソファーに膝を抱えて座る
電気もつけずに‥‥
どのくらい経った頃だろう
静かに扉が開く
廊下の光が部屋の中に差し込む
顔は見えないけどそのシルエットから、そこに立っているのが葛葉さんなのは分かった
俺が何も言わずに見つめると葛葉さんが口を開いた
「俺達だけで楽しむのは悪いから、お前にも用意してやった」
「‥‥‥‥?」
「ほら、これ飲め」
「‥‥‥‥」
手渡された一錠の薬
俺薬飲むの忘れたっけ?
手のひらに乗せられた薬を見ていると、それを取り上げ、口の中へと無理矢理押し込んできた
「俺が飲めって言ってんだから早く飲めよ」
その声に抑揚はなく、氷の様に冷たい
俺はテーブルにあった飲み物で喉につかえた薬を飲み込んだ
「あとは2人でヨロシクしてよ」
「葛葉‥‥こんな事しなくても‥‥」
「お前も薬、飲んだだろ?」
「飲んだよ。お前が飲ませただろ?」
「コイツ、好きな奴と一緒になれないみたいだから慰めてやってよ」
「お前っていつも強引で突然なんだよな」
「終わるまで出てくるなよ」
扉が閉められ、真っ暗な部屋に知らない男と2人きり
その男が何か探している
壁に付けられた間接照明が灯った
電気のスイッチを探していたみたい
「君がロウ君?あの日以来だね」
「‥‥‥‥誰?」
優しい声
柔らかい雰囲気
あ‥‥この人‥‥‥‥
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コメント
2件
あの日以来ってだいたい予想は着くけど葛葉が何をしたいか僕も分からないᐡ𖦹 ̫ 𖦹ᐡ 師匠の作品一瞬1秒も飽きないですね✨