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いつからだったかは、覚えていない
何だろう。息が苦しいような…
何不自由ない生活、日常
苦しいはずはないのに
僕は今、幸せ、だよな?
教室が一気に騒がしくなる
次々と荷物をまとめて出ていくクラスメイト達
部活生は部活へ。無所属な生徒は家路へ
(僕もそろそろ行かなきゃ…)
僕は誰とも挨拶など交わさずに、校舎を後にする
部活生であろう活気のある声を背にして。
羨ましいとは思わない。これでいいんだ
部活には入っていない
何かに所属すればルールに従わなければならないから
何かに縛られて過ごすのは嫌いだ
僕は家に帰るわけでもなく、正反対の方向へ向かう
街並みから外れ、薄暗い小さな森に踏み入り、少しの坂を登ったそこにある
街の隅に追いやられて人々から忘れられたような、古びた神社
伸び切った長い雑草を踏み分け、辿り着く
「やぁ、少年。学校帰りかい?」
ツタが絡みつき、塗装の剥がれた鳥居の下で
場違いに見える綺麗な茶髪を揺らしながら、彼女は僕に笑いかける
「はい。学校帰りですよ、暇なので来ました」
「ホント君は物好きだね」
彼女は恐らく、「暇つぶしに、こんな街外れの神社に来るなんて変わってるね」と言いたいのだろう
もっとも、僕の目的は神社じゃなくてこの人なんだが
「部活に入る気はないのかい?案外楽しいと思うよ」
「入る気はありませんね。ルールに縛られるのはどうも苦手で…」
「ふーん」
「僕は部活より、貴方と話している方がよっぽど楽しいので」
「へぇ、嬉しいこと言ってくれるね」
淡々と言葉を交わす
この飄々とした彼女の態度は、人によっては気を悪くするのだろう
でも、僕は寧ろ気楽で話しやすい
この人の隣にいるときは、素の自分で居れる気がして
今日も僕の居場所はここにあるんだ、と安心できる
「仕事終わりですか?」
「私?そうだよ、仕事終わり。早く終わったし、少年が来るだろうと思ってね」
「お見通しって訳ですか」
「ただの勘だよ、勘」
「野生の勘恐るべし…ボソ」
「聞こえてるよ」
「空耳じゃないですか」
「いつからそんな生意気になったのさ…私そんな子に育てた覚えないよ」
「僕も貴方に育てられた覚えはありません」
くだらない、バカみたいな会話
たったこれだけでも、僕は嬉しいし楽しい
そう思うのは、おかしい事なのだろうか
「さーて、今日は何の話をしようか」
「なんでもいいですよ」
「それが一番困るんだけど…それじゃあさぁ」
「幸せ、ってなんだと思う?」