テラーノベル
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ピシッ。
小さな音だった。
だけど。
翼とりいの表情が変わる。
ゆきも思わず顔を上げた。
「今の音……。」
翼が結界へ近付く。
手を当てる。
数秒。
「結界にほころびがあるな。」
「ほころび?」
「小さいけどな。このまま放っとくもんじゃねぇ。」
ゆきは少し緊張した。
初任務。
本当に何か起きるかもしれない。
そんなことを考えていると。
りいが目を閉じた。
「……ん。」
「どうだ?」
翼が聞く。
「何かいる。」
ゆきの背筋が伸びた。
「え。」
「結界の向こう。」
「敵ですか?」
「分かんない。」
りいが森の奥を見る。
「でも動いてるからさ。」
「一応確認しよ。」
翼が頷く。
「ゆき。」
「ん。」
「俺らの後ろな。」
「うん。」
◇◇◇
森の中。
静かだった。
風の音しかしない。
ゆきは周囲を見回す。
少し怖い。
というかかなり怖い。
その時。
ガサッ。
「ひゃっ!?」
思わず声が出た。
足元が凍る。
パキパキと霜が広がった。
「あ。」
ゆきが固まる。
やってしまった。
また能力が漏れた。
◇◇◇
「ゆき。」
りいの声だった。
「大丈夫だから。」
「す、すみません。」
「謝んなくていいの。」
りいは少し笑う。
「初任務だし、」
「怖いよね。」
「……はい。」
「私も最初はそうだったしさ。」
「りいさんもですか?」
「うん。」
「意外です。」
「失礼だなぁ。」
◇◇◇
その時だった。
ガサガサッ!!
近い。
かなり近い。
ゆきは反射的に身構えた。
翼も前に出る。
そして。
草むらから飛び出してきた。
「うわああああ!!」
「ひゃあああああ!!」
叫んだのはゆきと相手だった。
◇◇◇
沈黙。
「……。」
「……。」
そこにいたのは。
小学生くらいの男の子だった。
「迷子じゃん。」
りいが言う。
「迷子だったな。」
翼も肩の力を抜いた。
◇◇◇
「なんでこんなところにいるんだ?」
翼がしゃがみ込む。
男の子は泣きそうな顔だった。
「ボール追いかけてたら……。」
「結界の外まで来ちゃったの?」
りいが聞く。
男の子はこくりと頷いた。
「なるほど。」
◇◇◇
ゆきはその場に座り込んだ。
「怖かったぁ……。」
「悲鳴すごかったね。」
りいが言う。
「りいさんだってびっくりしてたじゃないですか。」
「そこまでは。」
「嘘です。」
「ばれた。」
◇◇◇
帰り道。
男の子を連れて歩く。
「お姉ちゃんたち何者?」
男の子が聞いた。
「秘密。」
◇◇◇
男の子を無事に家族へ引き渡す。
母親は何度も頭を下げた。
「本当にありがとうございました。」
「いえ。」
翼が笑う。
「無事で良かったです。」
◇◇◇
そして。
帰ろうとした時。
男の子が駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん!」
ゆきが振り返る。
「助けてくれてありがとう!」
満面の笑顔だった。
◇◇◇
帰り道。
少しだけ静かだった。
ゆきは空を見上げる。
怖かった。
緊張した。
能力も暴走しかけた。
でも。
「……。」
少しだけ嬉しい。
◇◇◇
「どうだった?」
翼が聞いた。
「初任務。」
ゆきは少し考える。
それから笑った。
「…思ってたのと違った。」
翼も笑う。
「毎年新人はそれ言う。」
「お前ら新人はなに想像してんだか。」
りいも隣で頷く。
「まぁ。」
「百点満点ではなかったけどね。」
「初任務なら上出来かな。」
「ほんとですか?」
「ほんと。」
◇◇◇
結び屋の建物が見えてくる。
ゆきは少しだけ胸を張った。
今日。
初めて任務に出た。
初めて誰かを助けた。
ほんの小さなことかもしれない。
それでも。
長瀬ゆきにとっては。
確かな一歩だった。
コメント
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第10話「小さな一歩」読んだよ!初任務で能力暴走しかけて緊張MAXのゆきちゃんが、まさかの迷子の小学生と遭遇して「ひゃああ!!」ってお互い叫ぶシーン、めっちゃ可愛くて思わず笑ったわ。結界のほころびから始まった緊張感が、あのギャップで一気にほぐれる流れがうまい。翼とりいの先輩コンビが「毎年新人はそれ言う」って笑うのも、チームの空気感が出てて好き。ゆきにとっては小さくても確かな一歩——こういう日常に溶け込んだ成長譚、じんわりくるな。次も楽しみにしてる🔥