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風花🎧🫧🥀@中学受験生
219
かんな
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「……あ?」
居座ること数十分。山崎の視線を無視して土方のデスクの引き出しを片っ端から漁っていた俺は、一番奥の引き出しを開けた瞬間、思わず声を漏らした。
そこに入っていたのは、周りのきらびやかなお菓子の山とは一線を画す、小ぶりで可愛らしいハート型のチョコレートの箱だった。
(ゲッ……ハート型!? あいつ、こんなもん引き出しの奥に大事に隠し持ってやがったのか!?)
一瞬で頭に血が上り、心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
昼間、路地裏で土方が大事そうに抱えていたのは銀色の箱だったはずだ。
ということは、このハート型はあいつが別の誰か――それこそ可愛い女の子からでも直接手渡されて、照れくさくてここに隠した本命チョコなんじゃねぇだろうな。
ドス黒い嫉妬が渦巻く中、俺は呪いのアイテムでも掴むような心持ちで、そのハート型の箱をひったくるように引っ張り出した。
だが、その箱をひっくり返した瞬間、俺の目は皿のようになった。
箱の裏側に、ぺらりと一枚の付箋が貼られていたのだ。
そこには、見慣れたトゲトゲした土方の字とは明らかに違う、どこかねちっこくて綺麗な字で、こう書かれていた。
『万事屋へ♡』
「……は?」
俺は思わず間抜けな声を出し、その付箋を三度見した。
万事屋へ。万事屋へ? 万事屋って、俺のことだよな? え、何これ。ハート型に、万事屋へ?
(ちょっと待て……ってことは何だ? これ、土方くんが銀さんのために用意してくれてたチョコってことォォォ!?)
そう、銀時が知る由もない。
これが沖田総悟による、土方を陥れるための(あるいは二人の仲を絶妙にかき回すための)最高に悪質な嫌がらせの[[rb:種 > 爆薬]]であることを。
総悟があらかじめ付箋を貼って土方に渡し、土方が中身を確かめもせず引き出しにぶち込んだ結果、奇跡の超展開が生まれてしまったという事実を。
そんな真実は一ミリも知らない俺の脳内は、一瞬にしてお花畑へと変貌を遂げた。
「なーんだ!! 土方くん用意してくれてんじゃん!! なに照れて隠してんだよアイツあーーー可愛いっ!!」
さっきまでのドロドロした嫉妬や羨ましさはどこへやら、俺の顔はこれ以上ないほどだらしなく緩みきっていた。
昼間、路地裏でうじうじしていたのも、このハート型を俺に渡すタイミングを計って緊張していたからに違いない。そうに決まっている。
男から貰うより女からの方が良いなんて、銀さん一言も言ってねぇもんな!
むしろ土方くんからの糖分ならハート型だろうが何だろうが家宝にするっつーの!
「おい山崎ィィ! お茶! 一番高い茶葉で淹れろ! 旦那の機嫌は今最高潮だ!」
「えぇぇ!? 旦那、さっきまで般若みたいな顔してたのになんで急に爆笑してんの!? 怖っ!!」
山崎の引きつった悲鳴をBGMに、俺はハート型のチョコを両手で大事に包み込み、土方の座椅子でご満悦の笑みを浮かべた。
あいつ、パトロールから帰ってきたらどんな顔するかな。
「勝手に見るんじゃねぇ!」
って顔を真っ赤にして怒るか? それとも観念してデレるか?
愛おしさとニヤニヤが止まらない俺は、不器用すぎるツンデレ警察官の帰還を、今度は一秒でも早く待ち侘びるのだった。
コメント
1件
うわあ、これはまた見事なまでに沖田くんの思惑通りにはまってる展開だ……! 銀さんの感情のジェットコースター具合が本当に生き生きしてて、嫉妬で真っ黒だった表情が「万事屋へ♡」の付箋一枚でお花畑に切り替わる瞬間、読んでるこっちも思わず顔が緩みました(笑)。土方が隠し持ってたのが実は銀さん用だったっていう構造、最高に胸熱ですね。この先、真実を知った時の銀さんの表情がもう楽しみで仕方ないです。