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さくらぶ
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『本日午後九時、東京都江戸川区にあるRoyal cafeに集まれ』
突如届いたこの手紙。
これが俺らの運命を変えたんだ。
カラン、とベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
いつも通りの声。
いつも通りの空間。
——のはずだった。
「ここ、で合ってる?」
一人の男が少し警戒したように店に入ってくる。
「「え…」」
お互いの顔を見て固まる。
「…しょう「めめ〜!ここなんかな?めめと一緒ですんごく嬉しいわ」
オーナーが何か言いかける前に、また新たな客が来たようだ。
「こーじ、うるさい」
今度の客はくっついて離れない仲のいい二人組のようだ。
いつの間にか最初に来た男はカウンターから最も離れた席に座った。
「たっのもー!ここで合ってる?」
「道場破りで入るとこじゃないでしょ~」
「ここ、でいいのかな?」
「……」
バラバラに集まってくる客たち。
適当に椅子に座りのびのびし始める。
でも共通しているのは一つ。
“同じ手紙を持っていること”
『本日午後九時、東京都江戸川区にあるRoyal cafeに集まれ』
「……なんだこれ」
「悪戯にしては手が込んでるな」
「これ、アニメでよく見るヤツじゃないか!」
そのとき。
カフェの照明が一瞬だけ、落ちる。
『——全員、揃ったか』
どこからともなく声が響く。
「は?誰?」
「姿が見えない…?」
聞こえてきた声に混乱する。
『安心しろ。敵ではない』
低く、よく通る声。
『お前たちは、今日から同じ任務に就く』
“任務”
その単語を聞き、空気が一変する。
「でも、この中には初めましてな人もいるけど…」
髪型や服装から、どこか知的な雰囲気を纏う男が発言すると、
『その状態で組め』
静寂。
「ふざけてんのか」
テクノカットの男が低く言う。
隣に座っていた子犬のような男が怒りを感じ取って少し震える。
『ふざけてはいない』
『この世界で生きるなら——』
『“知らない相手と信頼を築け”』
照明が戻る。
声は消える。
残されたのは、沈黙と違和感。
「……マジかよ」
「無茶苦茶やな…」
その中で、一人。
サングラスをつけていた男が小さく笑う。
「面白いじゃん」
その一言で、少し空気が動く。
静まり返った店内。
見知らぬ者同士が、同じ空間にいる違和感。
「……で、どうすんの?」
ピンク髪の男が口を開く。
「このまま無言ってのも気まずくない?」
「確かに」
知的な男も頷く。
「最低限、名前と能力くらいは共有した方がいいと思う」
「能力まで言うのかよ」
カウンターからいちばん遠い席に座る男が少し眉をひそめる。
「全部じゃなくていいよ」
さっきのサングラスの男が軽く笑う。
「ヒントくらいでさ」
その一言で、空気が少し柔らぐ。
「じゃあ俺からいくわ!」
勢いよく手を挙げるピンク髪の男。
「佐久間大介!動くの得意!以上!能力は得意の演技力が関係してるぜぃ!」
「雑すぎるでしょ!?」
すぐに知的な男がツッコむ。
「でもまあ、嘘は言ってないよね」
ふっと笑い、自分も自己紹介を始める。
「阿部亮平。分析とか、そういうのが得意かな」
「ふーん、頭脳派ってこと?」
カウンターからいちばん遠い男がぼそっと言う。
「まあ、そんなところ」
「ほな次俺いくで!」
子犬のような男が身を乗り出す。
「向井康二!写真撮るのが好きやで!あと創るのも得意やで!」
「創る?」
佐久間が少しだけ反応する。
「んー、なんて言えばええんやろ……ま、そういうこと!」
「ざっくりしすぎだろ」
テクノカットの男が小さく笑う。
「じゃあ、俺」
そのまま続ける。
「目黒蓮。……戦うのは嫌いじゃないと思う。能力は…環境に優しいかな」
ヒントは少ない、それに意味もよく分からない。
でも、それだけで伝わるものがある。
「……物騒だな」
カウンターからいちばん遠い男がぼそっと言う。
「お前は?」
目黒が視線を向ける。
「渡辺翔太。……自分の身は自分で守る」
こちらもこれ以上言うつもりは無いようだ。
「オーナーは?」
佐久間がオーナーに話を振る。
「宮舘涼太。能力は…結構大胆な感じかな」
こちらも言葉は少ない。
「ここのオーナーなのに知らなかったん?」
向井がそう問う。
「俺も君たちと同じで、おそらくここはただの場所として使われただけだ」
「なるほどね」
阿部が小さく頷く。
「でも結果的に、ちょうどいい場所やな」
康二が笑う。
「拠点、決まりってことでええんちゃう?」
誰も否定しない。
「次、俺たち?」
サングラスの男が横を見る。
「……ああ」
無言を貫いていた男も頷く。
「岩本照。力仕事は得意だ。能力は、かなり危険だな」
「かなり危険…?」
不安そうに佐久間が反応する。
「まあ、必要なら見せる」
短く岩本は切り上げ、最後のバトンを渡す。
「深澤辰哉でーす。ふっかって呼んでよ」
深澤がゆるく手を振る。
「サポート系、かな。たぶん一番働くよ?」
「“たぶん”なのが怪しいな」
阿部が笑う。
「ひどくない?」
くすっと、小さな笑いが広がる。
その時。
ふと、視線が交差する。
まだ知らない相手。
でも、どこかで感じるものがある。
「……よろしく、でいいのか?」
誰かが呟く。
「いいんじゃない?」
深澤が笑う。
「どうせ、これから嫌でも関わるんだし」
その言葉に、誰も反論しなかった。
だが、お互いの距離は確実に近づいていた。
にぎやかなやり取り。
その少し後ろで——
渡辺が、カウンターに近づく。
「……コーヒー、ある?」
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ、手が止まる。
「……ある」
それだけ答えて、背を向ける宮舘。
言葉は短い。
距離も、どこか遠い。
カップを用意する音だけが静かに響く。
「……ブラックでいいのか?」
少し間を置いてからの問い。
「……ああ」
それ以上、会話は続かない。
カップが差し出される。
「どうぞ」
「……どうも」
指先が、一瞬だけ触れる。
でも、それだけ。
すぐに離れる距離。
その空気を、横で見ていた阿部が小さく目を細める。
「……知り合い?」
何気ない一言。
「……いや」
「……別に」
ほぼ同時に返ってくる否定。
「……ふーん」
それ以上は踏み込まない。
でも、違和感は残る。
その頃、少し離れた席。
「なぁなぁ!このカップめっちゃオシャレやない!?」
向井がはしゃぐ。
「……ほんとだな」
目黒が答える。
その賑やかさとは対照的に。
カウンターには、静かな空気が流れていた。
宮舘は何も言わない。
渡辺も何も言わない。
でも。
お互いに“気づいていないわけじゃない”
ただ、言わないだけ。
賑やかな声が、店内に広がる。
それぞれが、それぞれの距離で過ごす時間。
——そのとき。
カチッ
小さな音。
店内の照明が、わずかに揺れる。
「……?」
不思議に思い、顔を上げる。
次の瞬間。
——ブツン
すべての明かりが落ちた。
「は!?ちょ、停電!?」
向井の声が響く。
「違う」
すぐに、低い声。
阿部が立ち上がる。
「……さっきと同じだ」
静寂。
暗闇の中、わずかに気配だけが残る。
『——聞こえているな』
あの声。
「……またあいつかよ」
渡辺が舌打ちする。
『お前たちに、最初の任務を与える』
空気が変わる。
さっきまでの緩さが、一瞬で消える。
『場所は——』
頭の中に、直接流れ込んでくるような感覚。
映像。
地図。
そして、“何か”の気配。
「……共有された?」
阿部が目を細める。
「今の……?」
向井も戸惑う。
『対象は能力者一名、暴走状態にある。放置すれば、この区域一帯に被害が及ぶ』
「……初っ端から重いな」
佐久間が呟く。
『制圧しろ』
短い命令。立ち上がり、各々の準備を始める。
『なお——』
わずかな間。
『互いの能力を過信するな。まだ、お前たちは“何も知らない”』
その言葉を最後に、
——音が消える。
パチン、と照明が戻る。
静かなカフェ。
さっきと同じ景色。
でも——
「……行くしかねぇだろ」
佐久間が立ち上がる。
「そうだね」
阿部も続く。
「初任務やなぁ……燃えてきたわ!」
向井が笑う。
「……無茶すんなよ」
目黒がぼそっと言う。
「そっちこそな」
視線が交差する。
その中で。
「じゃ、行きますか」
深澤が立ち上がる。
その一言で、流れが決まる。
誰が指示したわけでもない。
でも、自然と全員が動き出す。
「……ふっか」
小さく呼ぶ声。
「ん?」
岩本が、ほんの少しだけ視線を向ける。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
深澤は軽く笑う。
チームとして、初の戦闘が始まる。
夜。
人の気配が消えた区域。
「……ここ、やな」
向井が周囲を見渡す。
「さっきの映像と一致してるね」
阿部が静かに頷く。
「……気配、あるな」
目黒が低く呟く。
その瞬間。
——ドンッ!!
地面が大きく揺れる。
「うおっ!?」
渡辺がバランスを崩す。
「来るぞ!!」
次の瞬間、影が飛び出す。
人の形をしている。
でも、その目には理性がない。
「——ッ!」
一直線に突っ込んでくる。
「危ねぇ!!」
佐久間が前に出る。
——ガンッ!!
正面から受け止める。
「力、強っ……!」
「ちょっ!単独で行かないで!」
阿部の注意の声。
「みんな!全然連携できてないやん!」
向井の発言。メンバー全員がそれを理解している。
「当たり前だろ!初対面だぞ!連携なんて取れるわけねぇだろーが!!」
思いどおりに行かないイライラできつい言葉を発する渡辺。
「どうすれば…」
それぞれがばらばらに動く。
焦りがどんどん大きくなる。
その瞬間、
敵が消えた。
「は?」
「上!!」
阿部の声。
——ズドン!!
上からの一撃。
「っ……!」
間一髪で回避。
「速いな……!」
「まずい…全然読めない…!」
阿部が焦ったように告げる。
「読む必要ない!相手が早いなら、それより早く動けばいい!」
敵に向かって佐久間が突っ込んでいく。
「…!バカッ!」
阿部がすぐに止めようとするが間に合わない。
しかし
「っ!フェイント…?!」
攻撃が外れバランスを崩す佐久間。
敵がその隙を見て手を振りあげる。
「Hedera(ヘデラ)」
目黒が小さく呟くと、地面が小さく揺れる。
「なんだ…?」
地面の揺れが大きくなる。
と
「うわっ!?」
佐久間が宙に舞い上がった、かと思うとこっちに引っ張られ間一髪で敵の攻撃に当たらずにすんだ。
「佐久間!大丈夫?!」
阿部が急いで佐久間に駆け寄る。
「今の…」
宮舘が目黒の方を向く。目黒は何も無かったかのように敵の方に向き直る。
(ヘ〜、なるほどね。能力は植物系だったか。今の揺れはツタが地面を伝う音。そんで、そのツタが佐久間を捕まえて助けた…って感じかな?)
深澤が静かに今の目黒の行動を解析する。
だが、敵には攻撃が効いていない。
またバラバラに動き出す。
攻撃も当たらない。
そんな戦いを傍観していた岩本がついに口を開く。
「……落ち着け」
低い声。
岩本が一歩前に出る。
「無駄に動くな」
その一言で、一瞬だけ空気が止まる。
「動きは単純だ。力任せ、直線的」
その一言だけで、メンバーの動きが変わる。
「なら…」
向井が前に出て
「動き止めればええだけやん?」
ふっと笑い、
指を鳴らす。
すると、また地面が揺れ始める。
「今度はなんだよ!」
渡辺が叫ぶ。
「地面が隆起してる?」
阿部が呟くと敵が地面に押さえつけられる。
「誰か攻撃してや!すぐ元に戻るで!」
「俺が行く!」
少しずつ。
少しずつ。
バラバラだった動きが、噛み合い始める。
その中で。
「……行くぞ、ふっか」
「りょーかい」
深澤が静かに目を細める。
(ここからが本番)
深澤が、軽く息を吐く。
その瞬間。
空気が変わる。
「……え?」
向井が違和感に気づく。
「なんか……寒くない?」
佐久間が腕をさする。
影が、揺れる。
「——来い」
小さな呟き。
次の瞬間。
——バサッ
巨大な“何か”が、空を裂いた。
「……は?」
夜空を覆う、黒い影。
それは——
大烏
圧倒的な存在感。
「なんやこれ……」
向井が呆然と呟く。
「式神……!?」
阿部の目が見開かれる。
その間にも、敵が突っ込んでくる。
「来るぞ!」
宮舘が構える。
でも——
「動くな」
岩本の一言。
全員が、止まる。
「は……?」
次の瞬間。
——ドンッ!!
大烏が、地面ごと叩き潰す。
「……え」
視界が揺れる。
音が遅れて届く。
「……終わり?」
静寂。
さっきまで暴れていた敵は——
動かない。
「……いやいやいや」
佐久間が後ずさる。
「今の……何……?」
「一瞬やん……」
向井も呆然とする。
その中心で。
深澤は、軽く肩を回す。
「んー、まあこんなもんかな」
「“こんなもん”じゃねぇだろ……」
渡辺が低く呟く。
その横で。
岩本は何も言わずに、ただ、当たり前のようにそこに立っている。
まるで——
これが当然だと言わんばかりに
「……お前ら」
渡辺が小さく言う。
「いつも、こんな感じなわけ?」
「んー、まあね」
軽い返事。
でもその裏にあるものを、全員が感じ取る。
(……レベルが違う)
沈黙。
さっきまでの“初対面のチーム”じゃない。
明確な差が、そこにある。
その空気を、ふっと崩すように。
「……で?」
深澤が振り返る。
「どうする?このまま見てる?」
少しだけ、意地悪な笑み。
「それとも…一緒にやる?」
その一言で。
空気が、変わる。
静寂。
「……終わり、じゃないよね」
阿部が低く呟く。
その直後。
——ビキッ
地面に亀裂が走る。
「え、ちょ……」
向井が後ずさる。
「こーじ!下がれ!!」
目黒が叫ぶ。
次の瞬間。
——ドンッ!!
さっき倒したはずの敵が、歪んだ形で再生する。
「はぁ!?」
佐久間が叫ぶ。
「再生……!?」
「さっきより……デカくなってない?」
異様な圧。
さっきとは比べ物にならない。
「……これは、まずいかも」
阿部の声が少し低くなる。
「んー、さすがにこれはちょっと面倒だね」
深澤も、少しだけ表情を変える。
つまり——
「俺らだけじゃ無理だろうな。全員でやるぞ」
静かに、でもはっきりと。
空気が変わる。
「……やっと出番ってこと?」
佐久間が笑う。
「こっちも楽しんでいいんだね」
宮舘も前に出る。
「ほな俺も行くで!」
向井も前に出る。
バラバラだった動きが、
今度は“同じ方向”に向く。
「阿部ちゃん!」
「おっけー!」
一瞬で状況を把握する。
「核は中央!でも直接は無理!」
「じゃあ崩す!!」
佐久間が一気に突っ込む。
「右、来るよ!」
阿部の声。
「了解!」
佐久間が軌道を変える。
攻撃を回避。
「今や!めめ!」
「……!」
目黒が一気に踏み込む。
——ドンッ!!
強烈な一撃。
「まだ足りない!」
「なら、これはどう?」
宮舘が手を掲げふぅと息を吐く。
「さむっ…」
渡辺が少し震える。
「みんな、敵から10mくらいは近づかないでね。」
宮舘の忠告。
「え?何で?」
その質問にふ、と微笑み、
「凍るよ?」
と一言。
「congelare(コンゲラーレ)」
その直後、敵は固まった。
「……え?」
敵は凍っていた。
「とりあえず動きは止めたけど、またすぐに動くよ。」
「今のうちに!」
少しずつ、崩れていく。
「いい流れだね」
阿部が冷静に見ている。
「でも決定打がない」
氷もどんどん割れ目が入り始め、敵も動き出す。
「……なら、作るか」
深澤が小さく呟く。
「照」
「わかってる」
短い会話。
「止めるよ。3ね」
「了解」
「3……!」
「え、何!?」
「2!」
「合わせろ!!」
「1!!」
——その瞬間
大烏が空から急降下。
敵の動きが、一瞬止まる。
「今!!」
深澤が叫ぶ。
「うおおおお!!」
佐久間、目黒が同時に叩き込む。
「specere(スペケレ)」
阿部が静かに呟き、鋭く目を光らせ、敵を視る。
(核があるのは…腹部か。腹部だけ皮膚が厚くなって防御力も高い。これは、誰か一人の力じゃ無理だな)
「みんな!腹部だ!でも周りの皮膚より防御力も高い。何人かの合わせ技が必要!」
阿部の指示。
「おっけい!あべちゃんナイス!」
佐久間の声を合図に、
——ドォン!!!
すべての攻撃が、中心に集中する。
沈黙。
そして——
敵が、完全に崩れ落ちる。
「……はぁ……」
息を整える音。
「……つ、疲れたーーーーー!!!!」
渡辺が叫ぶ。
「しょっぴー、ほとんどなんもやってないやん!」
向井がそれにツッコみ、笑いが生まれる。
「俺ら、やればできるじゃん!」
「なんか、すごい達成感だわ」
メンバーが各々の感想を言い合う。
その中で。
深澤が、静かに全員を見る。
「……いいじゃん」
小さく笑う。
「チームっぽいじゃん、今の」
誰も否定しない。
むしろ——
少しだけ、誇らしい空気。
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