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Eliminator~エリミネ-タ-

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Eliminator~エリミネ-タ-

120 - 第120話 七の罪状 ~後編⑧ 星霜剣

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2025年06月17日

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「フン……。成長具合が分かるまでに、お前は死ぬさ」



雫も居合いにより納めていた刀身を、ゆっくりと抜いていく。



「フフ……大きく出たね。少しは愉しめそうだ」



そして御互い構える――両者全く同じ構え。まるで合わせ鏡のように。



それにしても、彼等の構えは特殊だった。



左手で逆手に握った鞘を前方へ突き出し、肝心の刀は右手に握られたまま、斜に下げたままだ。



「な、何なの? あの構え……」



離れて見守っている悠莉の眼にも、その構えは奇異に見えた。



「あれが彼等の刀法……」



琉月にはその意味が解ったが、実際この眼で見るのは初めてだった。



「星霜剣刀法――双流葬舞。やべぇ……お嬢、もう少し離れねえと!」



逆にジュウベエは知っている。雫と常に一緒に居、見届けて来たのは他でもない彼だからこそ、これから起こるであろう事を危惧し、悠莉へと促していた。



「えっ? う、うん。ねえルヅキ? ジュウベエがね、もう少し離れた方がいいって」



「その方が良さそうですね……。もう少し離れましょう」



琉月は悠莉を後ろに、今一歩退かせる。彼女にも充分に分かったから。



あの二人の構えから発せられる、得も知れぬ気配――威圧感。彼等が動いた瞬間にも、余波が拡散するだろう事を。



「…………」




「…………」



ゆっくりと――ゆっくりと御互いの鞘が、交差していく。それは正式な決闘への儀式か。



「……行くよ?」



「来い」



それはエンペラーの合図を皮切りにした、次の瞬間だった。



「――って、止まったぁ!?」



両者は踏み込む際の残像だけを残して、激しく切り結ぶ。悠莉が驚愕に叫んだのは、一見すると両者の動きが固まって止まってしまったように見えただけだ。



そしてその虚像すらも、直ぐに消える。代わりに残され――展開されたものは、幾多にも連なる斬撃音と、異なる打撃音。



「衝撃の余波が此処まで……」



琉月は両者のぶつかり合う衝撃から生じる、まさしく突風のような余波に、片手で顔を覆う。それは文字通り、目も開けていられぬ程。



“それにしても、視覚する事すらも困難だとは……”



それ以上に琉月を驚愕させたのは、両者の動きが確認すらも覚束無いという事。



脅威の視神経を持つ琉月でさえ、彼等の一挙一動を何とか追うのがやっとだ。



それにしても――



“何て美しくも、獰猛な……”



両者の刃と鞘による、流れるような連繋。



※星霜剣刀法――双流葬舞。



エンペラーが開祖という、表に記されない裏の剣術――『星霜剣』に於ける基本刀法。



その演舞のように流れる、余りの美麗さとは裏腹の凶悪無比な太刀筋は、斬と打にその真髄有り。



二つの異なる性質を持つその連繋は、とてつもない速度と威力の波状攻撃となって、相手を容赦なく葬り去る。



当然――この剣を使えるのは、エンペラーと雫の二人のみである。



「ね、ねえルヅキ!? 今、幸人お兄ちゃんはどうなってるの?」



琉月の腰にしがみ着きながら、顔を出して伺う悠莉は状況を求めた。



彼女には、両者の動きを全く追えていないのだ。



「全くの……互角」



何とか追える琉月のみが、現在の戦況を心此処に非ずかのように呟いた。



「互角!? か、勝てるよね幸人お兄ちゃん」



琉月が驚嘆に立ち竦み、闘いに魅入られているのも致し方無い。



確かに雫の才は充分に理解したつもりだとはいえ、まさかこれ程までにあのエンペラーと、五分に渡り合えるとは思っていなかったから。



微かな勝機が、現実味を帯びてきた。



そして何時果てる事無く、切り合う両者――



「いやぁ……本当に驚いたよ幸人。まさかこの私と剣で、此処まで切り結べる程に成長するとはね」



切り合いの最中、予想以上の雫の攻勢にエンペラーが誉め称える。



「切り合いの最中だというのに、随分と余裕だな。俺はお前のそんな所が気に入らねぇ」



雫はそれが侮りであると受け取り、攻勢を強めた。



両者の刀と鞘が、全くの同時にぶつかり合い、鍔競り合いの形にもつれ込んだ。



「いやいや、本当に誉めてるんだよ。君は何時かきっと、この私をも超えていくだろう」



「なら……今、超える」



雫は力任せに、エンペラーを押し込んでいく。心なしかエンペラーは、じわじわと後退しているように見えた。



「……だが、それは今は無理な相談だ。例え君がどれ程に強くなろうとも、それでも私には勝てない」



それでも尚、エンペラーは余裕の態度を崩さず、口元には冷笑が浮かぶ。



「ほざけぇ!」



吼えながら雫は強引に押し込んでいき、位置関係でも優位に立っていた。



このままエンペラーの体勢を崩し、その喉元へ止めの一撃を加えるのみ。



「フフ……まだまだ青いね」



「――っ!?」



――瞬間、雫の両掌から圧力が消える。



反らされていたのだ。エンペラーは雫の力に対し、反発から受け流しへと。



「ちぃっ!」



これ迄とはうって変わって、急に反発力が消えた為、雫は前へつんのめるように体勢を崩した。



「君にはまだ、決定的に足りないものがある――」



間髪入れずにエンペラーは、雫の首を薙ぎ払う――が、間に合った。反射的なのか勘なのか、雫は峰部分でしっかりと受け止めていた。



「ほう? 今のを止めるとは……。流石と言っておこう」



“殺す気”で払った太刀が止められた事には、エンペラーは敬意を払うが、まだまだ序の口だ彼にとって。



「舐めやがって!」



再び両者は、引き合うように切り結ぶ。



やはり一見して互角。だが――



“違う……”



最初の一合と現在とでは、僅かだが確実に戦況が違う事に琉月は気付いた。



それは、ほんの些細なもの。だが重要な事。



「ぐっ!」



少しずつだが雫の身体には、切り傷や打痕が刻まれていく。



「……君と私の剣とでは、速度や威力は互角でも――経験が違う、応用力が違う、年輪が違う」



同じ技でも、一つ一つの厚みが違う。



それこそが師弟で在るがゆえに、彼等との間にある決定的な差。

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