アモが話した内容は”天使”との出会い、そして靴を手に入れた経由であった。
「靴を手に入れた時、胸がいっぱいになったの。失くしたピースを見つけたような古びたおもちゃに電池を入れてやっと動き出したような…そんな感じだった。」
「それで?」
「それで…おじさまと喧嘩しちゃって、アモ心がぐちゃぐちゃになってて良くない事も考えてたんだ。それでねお願いしたの “この靴をアモにください” って」
「おじさまはくれたの?」
「ううん。くれなかったの」
「じゃあどうしたの?」
「おじさまと…取っ組み合いになって…それから…そこから、おじさまが落ちちゃった。それで力に目覚めた。」
「天使は帰ってきた?」
「靴貰ってから数ヶ月?ぐらいしたら戻ってきたよ。1人減ってたけどね」
「どうやって境界渡ったのか分かってないじゃん」
「翼で飛んでじゃないの?その後、地平線にスーって消えてったからどこに降りたかは知らない」
「…それっていつ頃の話だ?」
「1ヶ月くらい前かなぁ」
「1ヶ月くらい前…ルドが来た時と同じぐらいだな。」
天使が戻ってきた時期とルドが下界に来た時期が一致していた。
加えて、アモが見た天使の顔はルドの探している人物にそっくりだった。
「あれ、そいつ…」
「?」
「いや…見覚えがあるだけだな…」
「は」
ラムレザルの言葉にルドは固まった。
「ほんとうか…?」
「見間違いかもだけどな。ワタシはこの顔に覚えがある」
「……あなた達もなのね。あなた達…ルドとラムおねえさんも心が “人間” になれたんでしょ」
アモは靴を撫でながらルドに語りかける。
「アモ達のコレはきっと “欠けた人間” と相性が良いの。大きな穴にはその分たくさんの何かを入れないと埋まらない。アモ達に空いた穴を埋めるほどの何かがコレにはあるんだよ。アモは取り戻せた人間が抱くべき “感情” を…」
「(人間が抱くべき感情…ワタシは何を取り戻せたんだろうな…)」
ラムレザルは心臓のある位置に手を当てた。
心音が聞こえない心臓は心臓と言えるのだろうかという気持ちが尚更強くなった瞬間でもあった。
「ほんとに行かねぇの?」
「うん。もう少しここで頭を整理したいから…でもたまにお話ししようねルド、ラムおねえさん」
「たまに、な」
アモと和解した後、一行は禁域”ペンタ”をあとにしようとしていた。
アモも誘ったがアモは断り、その代わりと言ってはなんだが人繋縄を渡しいつでも連絡できるようにしたのだ。
「次来る時は土産を沢山持ってくる。それまでいい子にしてろよアモ」
「なら、ラムおねえさんの話たくさん聞かせてね」
「…じゃあまたな。アモ」
「うん…またね」
アモはひらひらと手を振って一行を見送った。
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