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自分の部屋を持っていないため、兄と使っている子供部屋の押し入れの中でマタールナの研究を始めた。
その一方で、両親が悪い方向に変わったような気がする。
母親は過干渉になった。
私が黒い筆箱を買おうとしたときに、母親は別の筆箱をやたらと勧めてそれを買うことを強制していた。
兄の進路については口を出さなかった。しかし私の進路では、高校は公立のところに通ってほしいことと、大学は学費を払えないから通わせる気はない。
父親は煙草とパチンコにハマるようになった。
暇なときは大抵煙草を吸っているし、休日は毎回パチンコを打ちに行く。
兄と私のことは無関心になっていた。
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マタールナを手に入れてから半年経ったとき。
私は友達もいなくなって1人で登校していた。
歩行者用信号が青になって横断歩道を渡っていると、突然急ブレーキ音が聞こえて目の前が真っ暗になる。
意識が戻ったときには、病院のベッドで寝かされていて右目の感覚が全くなかった。
医者によると、交通事故で右目が失明して右腕は骨折したそうだ。
腕の骨折は4ヶ月で治ったが、右目の視界に色が宿ることは二度とない。
視野が狭くなり、立体感と遠近感をつかみにくくなった。
交通事故の日から初めて小学校に出席したときから、周りは私のことを1つ目女と呼ぶようになった。
教師からは特別支援学級に通うこと勧められて私もクラスメイトと関わらずに済むならそうしたかったが、母親は私を障害者と認めたくないらしく断固拒否した。
そんな私の唯一の生きがいは、玄武岩に外見の似た石…マタールナの研究である。
両親と兄がいない間にマタールナを加熱してみると、物質が固体から液体へと変わる温度である融点は60℃ということが判明した。
同じく融点が60℃の物質は蝋燭の原料に使われるパラフィンワックスだけだが、マタールナはパラフィンワックスではないことは外見ですぐにわかる。
草薙家の娘が幻を見せられると言っていたが、研究を始めてから2年後にその方法がわかった。
主に重曹やベイキングパウダーに使われる炭酸水素ナトリウムとマタールナと幻として見せたい物の混合物を、幻の変えたい対象の全身に塗ることで幻惑を見せられるのだ。
アルミニウムとマタールナを接着させて、それに触れた物を重力などの影響を及ばさずに自在に操れることも発見した。
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中2の夏休みは、宿題を早めに終わらせて殆どの時間をマタールナの研究のために使った。
そして今は、兄は友達と遊びに出かけていて不在で家に残っている両親は喧嘩をしていた。
「また煙草吸ってたでしょ!さっきから臭いのよ!それにパチンコ行くのももうやめなさい!アンタのせいで養育費が減ってんのよ!」
「俺が稼いだ金なんだからどう使おうと勝手だろ!お前だって専業主婦やめて仕事しろよ!」
子供部屋の押し入れの中まで聞こえてきて煩い。
この調子だと同じ階のマンションの人にも聞こえるだろう。
両親の怒声を不快に感じつつも、酸化銅とマタールナを化合させてみる。
「っ!!」
化合物からレーザーのようなものが発射されて、押し入れの扉と子供部屋の床は粉々になった。