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翌朝、仕事へ行く準備を済まし時計を確認する。まだ家を出るまで時間がある。
そこで家事をしている涼太へ近づき後ろから抱きしめた。涼太はビックリしたのかちょっと拗ねた声で俺に悪態をついてきた。
「こら、抱き締めるな」
「なーんで…いいだろ?」
「急にじゃなかったらね」
「じゃもっと抱き締めていい?」
「…まぁ」
合図と同時に俺は涼太を持ち上げる。涼太は辞めろと言わんばかりに腕の中で大いに暴れる。
そんな暴れる涼太の手が顔に当たりそうになったのでちょっと罰を与えるべく耳に口付けしたら顔を真っ赤にして大人しくなった。
「キスはひきょうだ…」
「暴れるからだろ?」
「…言い返せません」
ソファに深々お座りその上に涼太の座らす。俺の膝のうえで遠慮しているのか涼太は足をキュッとして座る。
いつまでたっても俺の膝は慣れないようで。
「涼太ぁ…会社行きたくない」
「行かなきゃ」
「だって、あいついるもーん…」
「…ごめんね、」
なぜか急に謝られた。俺はその意図が分からず首をかしげる。
涼太は俺の膝から降りて横にぎゅっと座ってこう話し始めた。
「…康二と会社、しかも部署まで一緒ってことほんとに知らなくて…」
「いや、知らなくて当然だよ」
「…連絡無しで…あんな事になっちゃって」
「もー謝らないで」
「涼太は俺を思ってやってくれたことでしょ?」
涼太はとっても申し訳なさそうな顔で俺を見る。そんな涼太を優しく撫でてやれば、少しだけ笑ってくれた。
「…ふふ…じゃあ俺行ってくるね」
「外出るなら連絡入れててね」
「うん、」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「翔太くん体調大丈夫なんすか?」
「ん?や、別に体調崩してないけど」
「じゃなんで?」
出社後、やはり一番に話しかけてくれる目黒と阿部。昨日、そして一昨日の出来事を話した。
阿部は顔色を変え心配そうな顔。
目黒は怒っているのか神妙な顔で話を聞く。
「てなことがあってさ…スマホを買い替えに行ってたんだ」
「…舘さん大丈夫なの?」
「最初は怖かったみたいで泣いてたけど、朝はいつも通りだったよ」
「…康二くんは…?」
「分かんない、…まぁ、うんって感じ」
康二の名前が出てきた瞬間、俺は言葉を濁した。多分、俺は前みたいに接するとこはできない。もう気持ちは冷めていて何も話したくない。
涼太を脅かす存在が近くにいるだけでさえ俺は腹が立つ。でも、こればかりは同仕様もない。
「まぁ何かあったらいっt…」
「しょっぴー」
「……なに?康二」
「…ちょっと来てや」
「、目黒ちょっと行ってくる」
「了解しました」
「それで何?」
「…涼ちゃん、どういう仲なん?」
まぁ呼び出してまで話したいことってそりゃ涼太の事だろうな。どういった仲…か。
素直に答えてこいつは納得するのか。
…いやあれだけ執拗と連絡をしているなら納得なんてしないか。
心のなかで渦巻く“素直に言う”べきか“濁して言う”べきか。俺にとって意味のない葛藤を悶々と繰り広げる。
すると、俺の回答が遅かったのか向井が口を開いた。
「なに?そんな人には言えんような関係なん?」
「いや別に」
平然を装いつつ、俺は内心腹が立っていた。お前のことを考えて迷っているのに。
なんだその言い草は。でもここで感情的になっても仕方がない。
「あいつは俺の幼なじみだよ」
「嘘やろ?」
「は?嘘?」
その言葉は確信を突くような言い方で“恋人なんだろ?”って。でも幼なじみを否定されたみたいで俺はまずそっちにまた腹が立った。
「幼なじみは本当だよ」
「……」
「…はぁちょっと待て」
そう言って俺は昨日涼太とお揃いにしたばかりのスマホフォルダを開く。
前のスマホには元々俺たちの幼い頃の写真が数枚入っており、そのまま引き継ぎをしたから多分入っている。それを見せれば納得がいくだろう。
「…ほら、これ俺で横が涼太」
「…ほんまや」
「涼ちゃんの面影ある…」
「だから言ったろ」
「…じゃあ恋人やないん?」
「さーな?」
「やっぱりそうなんやん」
また口調が鋭くなる。こいつは俺と涼太の関係を知って何がしたいのだろうか。俺は思いのまま彼に問いかけた。
「それを知って何がしたいんだ?」
「…涼ちゃんを、俺のものにする」
なんとなく予想はついていたがいざ言われてみると少し怖気づく。やっぱりか…とでも言うのか。
もうこれ以上に濁しても何も変わらないと悟った俺は包み隠さず話し出した。
「…そうだよ。俺と涼太は付き合ってる」
「いつから??」
「えぇ…?んと、数年前k…」
「もっとはっきり」
俺の言葉に被せて話す向井。何がしたいんだ?
「んー…2年半前…?だったと思う」
「っ……浮気では、ないんか」
「涼太が?なわけねーだろ」
どうやら向井が別れた時期と俺が付き合い始めた時期が被ってないか知りたかったようだ。
「…もういいだろ?」
「…ぅん、絶対」
「は?」
「絶対涼ちゃんは取り返すから…」