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翌日。早朝から荷物をまとめて旅立ちの準備を始める。持っていくものはそんなに多くはなく、昨日つくりあげた『地図』とあなたが生涯をかけて書き上げたあの小説。そして、私に向けて書いてくれたあの手紙の3点だけ。『物』として持っていくものはこれ以外無いが、もし物以外を持っていくならここで生まれた数え切れないほどの思い出だろう。それらを抱き抱えて私はこの地を去ろうと思います。

荷物をまとめたあとあなたが眠るお墓の前で『最期』の挨拶をして、地下室でこっそり育てたシオンの花を数本添えてこの地を後にする。


初めての外はあいにくの曇天…。と言っても今日までずっと『青空』なんてものは見たことは無い。あなたが書いてくれた物語の中にその言葉と『青空』の説明があって、私はその文字でしか青空を知らない。

あなたが書くお話には必ず『青空』と『太陽』のふたつの言葉が絶対と言っても過言ではないほど入っていた記憶があります。それほどまでにあなたにとってそのふたつは忘れられないものであり、きっと私にも見せたいものなのだと何度も読み返しながら思ってました。

今は外に出れるようになりあなたが残してくれた情報を頼りに生存者が居そうな地へと歩いてます。歩いても歩いても景色はほとんど変わらず、人工物が崩れていて風化している。いわゆる終末の世界というものが今私の見てる景色なのかなって思ったり思わなかったり…。あなたからするときっとこの景色は辛いものなのかもしれませんが、外を知らなかった私にはこの景色さえも新鮮で、不思議と楽しさもどこからか湧いてきたりしてます。

知らないことを知ること、それは怖いものだと私は思ってました。知れば私の中の価値観が大きく変わり、元々抱いていたものがまるで嘘だったみたいに感じられてしまうから、だから知らないことを知ることに恐怖のようなものを感じていました。けど、今は違う。知らないからこそ、無知であるからこそ考え方が変わって物事を多角的に捉えることが出来る。無知は罪と言う言葉があるけれど私は罪ではなく、それは無知なものに対しての学びだと言うふう捉え方をするようになりました。

もっと別の例え方をするなら無知とはきっと白紙の紙というものに置き換えられると思います。白紙の紙ならここから何を描こうが自由なはずです。今の私はその『白紙の紙』になり、これから私がやること全てが白紙の紙に『色』を付けていくことになる。そして私が見たもの聞いたもの感じたものが『道』になり、その先に私の意思で見つけた『私の居場所』が出来上がるはず。

だって、いま私の視界には私以上に先を見据えてるものがあるのだから。それは人ではなく、この世界そのもの。荒れ果てた大地に負けないと言わんばかりにその蕾は上を向き花を咲かそうとしているのですから。私もこの新芽に負けないようあなたが示してくれた約束の地にたどり着き、そこから先の未来に『私の居場所』を見つけてみようと思います。

私の声が、考えが空にいるあなたに届いていることを今日も…明日も……私の『命』尽きる日まで祈ってます。

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