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ーー五十ニ名もの軍勢は、ユキ一人の手によって既に半数近くまで減少していた。



その時、ユキの背後へ混戦に紛れて、音も無く忍び寄る者。そしてユキの背後へ鈎爪による一撃が放たれる。



ユキは反射的に左手に持つ白鞘で、それをがっしりと受け止め、それに続く右手に持つ雪一文字で背後の者を斬ろうとする刹那、前方から空気が斬り裂かれる音を確かに聴いた。



即座に身体を捻り、その何かを避けるが一足遅く、左腕に裂傷を負う。



“これは……かまいたち?”



傷口の深さに反比例する様な出血の少なさで、彼は即座にそう判断した。



ユキはその音がした方角を見据える。



彼の前方には剣を携えた熟練風の剣士と、その背後には先程不意打ちしてきた、両腕に鈎爪を装着した奇妙な眼帯をした男が、自身を挟み撃ちする形で対峙していた。



「ほう? 私の真空烈覇をよく躱せたな」



「ククク」



熟練風の剣士は刀を斜に構え、奇妙な眼帯の男は両手の鈎爪を交差し、舌なめずりしている。



「あのリトをまさか一太刀で仕留めるとは驚いたぞ。だが、我等二人同時相手だとそうはいかん。私は狂座第二十四軍団長クウガ」



「同じく第三十七軍団長ショウキ」



「「その首貰い受ける!!」」



ショウキがユキの背後から狙いを定め、クウガが先程放った技の体勢に入る。刀の周りが朧気に揺らめいていくーー真空を生み出しているのだ。



「覇利剣流奥義、真空ーー」



クウガが刀に真空を纏わせ、技名を口に乗せていた頃には既に、ユキはクウガの間合いにまで侵入していた。



「ーーえっ!?」



“いっーーいつの間に!?”



ユキは既に斬り上げの動作に移行している。それに対しクウガは、まだ刀を構えた体勢のままだ。



「遅い」



ユキの斬り上げは、技の途中で無防備なクウガの顔面を断ち割る。



“ーー速いっ!!”



クウガの顔面は縦から真っ二つに分離し、鮮血を噴き上げながら後方へと倒れ込む。



“速過ぎ……るーー”



それが意識が闇へと途絶えたクウガの、最後の思考だった。



『まだだ!!』



ショウキはクウガを倒したユキの斬り上げ直後の硬直を突いて、鈎爪による突きを繰り出していた。



“我の獄死爪は二百種類もの猛毒を兼備し、掠っただけでも絶命ものよ! このタイミングなら外しようが無い!!”



今更動いても遅いと、ショウキは勝利の確信を得る。それは獄死爪がユキに届く寸前での思考だった。



『はっ!?』



“届いた……届いた筈なのに、何でこんな事になっている!?”



それはショウキの獄死爪が、ユキに届く寸前での出来事。



ショウキの身体は、無数の氷の柱によって貫かれていた。それは地面から突如競り上がってきた氷の剣山とも云えるもの。



何時の間にかユキは、雪一文字を地面へと突き刺していた。



“星霜剣ーー氷仙花”



ユキは後ろを振り返る事無く呟く。



「散れ」



その言葉と同時に地面から突き出た氷の剣山は、更に巨大な氷の柱となって、ショウキの五体は四散霧散と化す。



『馬鹿なぁ!!』



“我々二人掛かりで手も足も出ぬとは……。何なんだ一体? この……化け者はーー”



自分の身体が肉片となった首だけのショウキは、ユキの後ろ姿を見て思う。それすらも塵となった今は、ただ闇へと消えて逝くだけだった。





「まさか、本当に一人で全員倒してしまうとは……な」



アザミは幾多もの屍を築き上げ、その上を鎮座する様に見えたユキへ感心した様に呟く。



「あと……一人」



ユキは刀をアザミに向け、構えながら見据える。



アザミはそれまで組んでいた腕を解き、褒め称える様に両の手の平を叩いた。



「一人で軍団長三名を含む精鋭五十一名を倒すとは、流石は特異点と云った処か。だが、これまでだ」



アザミはユキの顔を直視し、口許に笑みを浮かべながら続ける。



「お前の闘い、興味深く観戦させて貰ったが、その歳でそれ程までの強さに達するとは、特異点という事を差し引いても驚異的と云っていい」



アザミはユキの強さを純粋に称えた。これに裏は無い。本当に感心しているのだ、その口調から。



「そんなお前の唯一にして最大の欠点。まあ、これはどうしようも無い事だが……」



だがアザミは認めながらも冷静に、その如何ともし難い事実を伝え始めた。



「それはお前の体積の容量による、持続力の限界。どんなに強かろうが、その身体に見合った体力しか無い。平然さを装って隠してはいるが、スタミナが切れかかっている」



アザミの指摘に、ユキの額から冷汗が流れ落ちる。



“ちっ……見抜かれている”



事実ユキの体力は限界に来ていた。アザミが余裕を持って喋っている間に斬り掛かろうにも、スタミナが底を尽きかけた今、動きたくても動けず、仮に下手に動いても返り討ちに遭うだろう。



ならアザミが喋っている間に、少しでも体力を回復させるのが得策と判断した。



アザミに生半可な攻撃は通用しないと、その雰囲気で感じ取れるからだ。



「お前のスタミナが切れるのを待っていた訳でも無いが、まずは勝つ事を優先する。悪く思うな。それともう一つ、いや二つかな? 最期に絶望的な事実を教えておいてやろう」



そしてアザミは語り出す。ユキが絶対に勝てぬ、その訳をーー。

雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

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