コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あのあと、どれだけ私が床で寝るって言っても聞かないサイチにベッドを譲ってもらった。目覚めて、美味しそうな匂いがする方へ行くと。
「おはよ。」
「おはよ…。」
サイチからもらった飲み物を見つめる。
「コーヒー苦手だった??」
「いや平気。いただきます。」
「ごはんは交代制で作ってて、今日はキクタさんが作る日なんだ。」
渡されたモーニングプレートの中にあるスクランブルエッグを一口。
「おいしい…。」
「そいつは良かった。」
「キクタさんおはよ。急患だったの??」
「うん、子ども熱出したけど仕事休めないからってその子預かった。とんぷく入れて今は寝てる。今日の2人の仕事は病児保育な。」
「私も??」
「ここに居る間、1日3食のメシ代くらいの仕事は手伝ってもらわんとな。」
「わかった。」
「そうと決まれば、その子に食べさせるお粥かなにか作らないとかな。」
「母親がその子専用の食べ物リスト書いてきてくれてるぞ。」
「助かる~。良いお母さんじゃん、どれ、ほぼお菓子だね。これ終わったら買ってくる。」
「その間子ども見とくね。」
「任せた。あとお前にはこれ。」
「何??」
「サイチの服一枚で子守りさせられねぇだろ。つて辿ってそれなりに服をあつらえてきた。」
渡された紙袋には女性ものの服と。
「Tバック…。」
「安心しろ、新品だ。」
「衣料品店の奥さんのジゴロなんだよ、キクタさん。」
「へぇ。サイチはジゴロしてないの??」
「た、たまにね。」
「こいつ女より何故か男のジゴロの方が多いんだ。」
「なんで言っちゃうの!!」
「お前が最初に俺のことバラすから!!」
「大丈夫、私口硬いから。にしてもキクタはふわもこホットパンツの女が趣味なのか。」
「奥さんの趣味だ。」
「ちょっとは着てるとこ想像したろ。」
「してねーよ。」
「ブラのサイズもぴったり。」
「キクタさん、女の人見るだけでおおよそのスリーサイズ分かるらしいよ。」
「え…。」
「引くなそんな目で見るな!!サイチそろそろいい加減にしろ??」
「はーい。じゃ、買い出し行ってきます!!」
サイチはニカッと白い歯を覗かせ笑うと、早々に買い出しに出かけ た。
「…ったく。」
「仲良いんだね。」
「まぁ、付き合いは長いからな。」
「そっか、私食べたからもう行くね。ご馳走さま、服もありがとう。」
「おう。子守り宜しくな。あ、もし電話が鳴っても出るなよ。」
「分かった。」
私は、入院しているという設定で子どもと接することに。中々にうまくいって無事に母親とともに帰っていった。
「お疲れさま。子どもあやすの上手だね、きょうだいいるの??」
「いやいない…。そういう勉強させられたから、あそこで。」
「そういやお前、研究所から逃げてきたんだったわ。すっかり忘れてた。」
「どっからどう見ても普通の女の子なのに、よく逃げ出せたね。」
「運が良かっただけだよ。」
自分がヒューマノイドプロトタイプなんて、今はまだ言うべきじゃない。
「お、あの人からかな。」
キクタは鳴っている電話を取った。
「今日はサイチもご指名だぞ。」
「りょーかい。」
「悪いな、ちょっと出かけてくる。冷蔵庫にあるヤツ適当に食べてくれて良いからな。」
「分かった。」
ドタバタとあわただしく身なりを整え、2人は出ていった。
「ジゴロか…。」
ベッドを直して、居住スペースへ向かう階段を上がる。
「2人の分もなんか作っとくか。」
それからしばらく起きて2人を待っていたけど。
「風邪引くぞ…。」
体が浮いた気がした。声の主は。
「キクタ…お帰り。」
「ただいま。」
ゆっくりとベッドにおろしてくれる。
「おやすみ。」
うっすらと伺えた表情は、暗く影を落としていた。