テラーノベル
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午後になり、それぞれの隊員が同室の隊員同士で整列する。
「アリア、新しいペアは女の子なんだな!」
「華やかでいいなぁ。」
「そうかなぁ?ね、ミズキちゃん。」
「はぁ•••。」
水谷の課題がミズキを困らせている。
なぜ自分とは正反対のタイプのことを知らないといけないのか。
(理解できない。)
「あらら、ミズキちゃんはまだ17だろ?もっと愛想よくしないと!」
「そうそう、女は愛嬌ってね。」
そして更に理解できないのはアリアと比較してくる周りの人間だ。
「整列!」
そんな時、上官からの号令が響く。
そして午後の訓練の内容が言い渡された。
目の前に断崖絶壁がある。訓練が開始されると、アリアとミズキは互いに命綱をつけ崖を登り始めた。
それと同時にポツポツと雨も降り始めた。
「もうやだ、雨なんて。ついてない。」
アリアが呟いた。
「やるしかないですから。」
「!」
ミズキの返答にまたアリアがなにか言いかけた。
「•••なぜ言わないんですか? 」
「なにを?」
「さっきから言葉を飲み込んでいるじゃないですか。」
ミズキの言葉はアリアにとって意外だった。人のことなんて気にもしないタイプだと思っていたのに。
「•••言ったところで、あんたは理解しないわよ。いや、できないでしょうね。」
そう言ってアリアはミズキより少し先に登る。
「言ってみないとわからないじゃないですか。」
ミズキも負けじと張り合う。
「あんたみたいなデリカシーの欠片もない、人の気持ちもわからないような人に、なんで言わないといけないのよ。」
「私はあなたではないので、わかりませんから。」
「じゃあちょっとは考えてみたらどうなのよ!」
そう言ってアリアが次の足場を踏むが、足が滑る。
「!」
その拍子に片手も離れてしまう。
「奏さん!」
ミズキは片手でアリアと繋がれた綱を持ち、両足を壁に押し付ける。
「•••ごめん。」
「大丈夫です。ゆっくりでいいので、体勢を建て直してください。」
アリアはミズキに従う。
そして再び足をかけやすい場所を探して、体勢を戻す。
「奏さん、雨音さん、怪我はありませんか?」
上から水谷が声をかけた。
「問題ありません。」
「ごめんなさーい!」
「問題ないのであれば、訓練を続けてください。」
その一言に崖を登りきった他のペアに動揺が走った。
「大将、いくらなんでも。」
隊員の発言に上官が前に出ようとするが水谷は制止した。
「まだ2人とも若いですから。」
「若ければ相手はなにもしてこないと?若いだけで助けてもらえると思っているんですか?」
「いえ、そういう訳では」
水谷の冷静な声に隊員は少し怯む。
「男の力でなんとか登れたんです。女の子には厳しいんじゃ」
「関係ありません。使命を全うするために入隊した以上、男も女も老いも若いも理由にはなりません。」
水谷の言葉にヒソヒソと声がする。
そんな隊員の姿を見て、限界のきた上官が前に出る。
「それ以上大将に意見をするのであれば!」
「やめなさい。いいんです。それより訓練を続けます。」
そう言って水谷の命令で上官は崖を登りきった隊員達を連れて次の訓練へと進む。
「あーあ、馬鹿みたい。結局下に見られてる。」
アリアのその言葉にミズキはなにも言えなかった。
崖の終わりが見えてきた。時間経過と共に雨も強くなってきている。
さっきまで隣に並んでいたペアは一足先に崖を登りきったようだ。
「結局、私達が最後ね。」
「そうですね。次で巻き返しましょう。」
「は?正気?」
「はい。下に見られたくないのであれば、巻き返すしかありませんから。」
「•••いいって、もう。」
「しかし」
「もう!いいって!」
アリアの言葉に拒絶が含まれる。
「本当に、人の気持ちも知らないで•••!」
「下に見られるのが嫌なんでしょう?」
「嫌よ!それでも、どうしようもないことだって•••!」
「2人とも!」
水谷の声に上を向く。崖の一部が崩れ、それがアリアの命綱のカタビラを壊した。
崩れた岩肌を避けようとした反動でアリアは両手が離れてしまった。
「あ•••。」
自然落下しながら自分の死を直感する。
「奏さん!」
“ミズキ、足に力を込めて強く蹴るんだ。力を貸そう、川に飛び込みなさい。”
「!」
武器を手にしていないのに声が聞こえる。目視する限り、川まで距離がある。
ふと平野の顔が浮かぶが、アリアの事を考えれば体の負担を考えている暇なはい。
ミズキは言われるがまま足に力を込める。いつもより力が入りやすい。まるで自分の斧を振るう時の腕の感覚に近いく感じる。ミズキは強く崖を蹴った。
(いける!)
そしてそのままアリアを抱きよせると川に飛び込んだ。
「今、のは•••。」
「彼女達は私が探す。急いで瓜生と周参見に連絡を!」
ミズキの身体能力に驚きを隠せない隊員を横目に、水谷は崖を一気に降りると川沿いを走った。
たゆたう水の中で、アリアは昔の自分を見ていた。
振り向いて欲しくて、必死だったあの頃だ。
(なんで、今更•••。)
お母さん、見て!私テストで100点とったよ!
「女が勉強してどうするの?どうせ結婚したら意味がないのに。無駄なことをしないで。」
お母さん、私ね、体育で男の子に勝ったんだよ!
「女らしくして!そんなはしたない!」
お母さん、あのね。
「お兄ちゃんの方が優秀なの!あんたは大人しくしときなさい!」
「これ以上、恥をかかせないで!」
私の存在って、なに?
女だから?女じゃなかったら、私の事、みてくれたの?
ねぇ、教えてよ、お母さん。
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