テラーノベル
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二人が居なくなると、ジャージの上着を脱いで瑞基はプールの縁に立った。水面に目を向けたまま聞いてくる。
「…ほんとは、何の用だったのあの子達。何かヤなこと言われた?」
由良はかぶりを振った。
「どっちかって言うと、俺の方が嫌なこと言った」
「そう?何も間違ったことは言ってなかったよ?」
聞いていたのか。だとしたら、結構恥ずかしい事を言ったかもしれない。気まずくなって由良は口をモゴモゴさせた。
「ゆらちゃん、こっち来て」
穏やかな声で手招きされて、由良は無防備に近寄った。にこにこ顔の瑞基に、突然二の腕を掴まれてプールの中に引き込まれた。
一瞬にして、視界は全て水色になった。
パニックになりながら水面から顔を出す。
「――はぁっ」
酸素を求めて大きく息を吸い込んだ。
水の中でも呼吸が出来る種族なのだから、必死になる必要はなかったことに後から気付く。
「おまえっっ……何だよいきなり」
予想外の仕打ちを罵りかけて、由良はハッとした。
――自分は今、水の中にいる。
濡れて、肌にぴったりと張り付いたワイシャツとインナー。胸のラインが露わになっていた。
(いや、他の女子の胸よりもかなり小さいし…普通にしてたらわかんないかも…)
瑞基の方に、平静を装って向き直ってみた。
しかし、彼の視線は、明らかに由良の胸に注がれていた。
「…さっき肩を抱いた時は、そんなじゃなかったよな?」
見られてしまった恥ずかしさに、顔に血が昇るのがわかった。咄嗟に両手で胸を隠す。
横目で様子を伺うと、何故か感極まったような表情で、瑞基が呟いた。
「ほんとに、そうだったんだ…… 時々、海で助けてくれた女の子と由良が、重なって見えることがあって、それで――」
由良の頬に触れようとするように手を伸ばして来る。
「さわるな!」
その手を払いのけ、更にばしゃばしゃと瑞基に水を掛ける。
「見るな近寄るなあっちいけ!」
平然と、瑞基は苦笑いしている。
「めちゃくちゃ拒絶してくるなー…」
激しく動いたせいで呼吸が荒くなる。これ以上やると過呼吸が起きそうだったので、由良は抵抗をやめて、背を向けた。
「もう、放っておいてくれ……今まで騙しててごめん」
自分には、あの子を罵る資格なんてない。
最初から、同性の友達になれば、特別に好きになって貰えなくても、永く側にいられると思っていたんだから。
本来の姿がバレてしまったからには、離れるべきだろう。
「騙すってなんのこと?」
すぐ近くから声がした。
「……人間の、男に化けて瑞基に近付いたこと。友達のフリして側にいたこと」
「なんだ、そんなことか」
ずし、と瑞基が由良の背中に覆いかぶさってきた。腕を回して、後ろから抱き締められる。
「よかった」
首筋に吐息が掛かる。再び由良は顔が赤らむのを感じた。
「由良はあの時の人魚なの?とか聞けないじゃん。友達を、一目惚れした子と重ねて見てたり、ヤバいやつだもん」
「え……」
ひとめぼれ?
何を言われたのか、理解が追い付かない。
もう一度確認しようと、腕の中で瑞基に向き直る。
「男でも女でも、由良が何者でも関係ない。あの時からずっと、由良のことが好きなんだ」
「俺も……瑞基のことが…好きだ」
由良の背中に回された腕の力が強くなる。
それに応えるように、由良も瑞基の腰を抱き締め返した。
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コメント
1件
水の中で由良が男の子だと思っていたのに、実は女の子で……って展開、すごくドキドキしました!特に「なんだ、そんなことか」って瑞基が言ったところ、もう全部受け入れる覚悟が伝わってきて泣けそうに…。嘘をついてしまった由良の切なさと、それでも好きだと伝える瑞基のまっすぐな想いに胸がぎゅっとなりました。瀬尾さんの描く距離感の変化、本当に繊細で素敵です🌷