この作品はいかがでしたか?
23
この作品はいかがでしたか?
23
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
30分後…。
あっという間の千秋楽が幕を閉じた。私達の着替えなどを考慮し、20分後に握手会がある。その間で私達は施設にあるシャワー室で軽く身体を洗い流すことになる。因みに握手会の時は直ぐに帰宅できる様、みんな私服での参加だ。化粧もあるので、大体5分程で上がらないと間に合わない。因みに伊織と最年少の愛花は、お互いゲーム好きと言う事でそれぞれで最近流行りのYouTV(ユーティービー)という、ネット配信サービスを使って、顔出しにてゲーム実況をしていて、そこでは普通にすっぴんでゲームをしている。なので、基本握手会はファンデーションだけの所謂薄化粧で行くので、他のメンバーに比べて準備が早い。ある意味羨ましい。とは言うものの、私は元々肌が弱いので、新曲用の化粧というのはせずにいつも専用で済ませる。メイクさん曰く、”敏感肌で人一倍肌には気を付けているせぃか、特に貴女はメイクしなくてもいいレベル”だそうだ。
「20分経ったよー」
「「はーい」」
島田さんが号令を掛け、私達がそれに対して反応し、先程と同じ並びで準備する。既にステージ上では準備された机が置いてあり、そこに適度な感覚で私達が並ぶ事になる。机の意味は、ファンとの適度な距離を保つ為で、そして、その机の前(客席側)に『剥がし』と言われるファンが長居いさせない為の追立役に警備も含めて4人付いている。ファンは、ステージから見て左側から順に上がって握手をして行き、最後に右の階段から降りるという仕組みだ。
「準備はいい?アナウンス掛けるよ」
そう言うと島田さんは、音響係に合図をする。
「rainbow初ライブ、”天気雨には虹が咲く”にご来場いただきありがとうございます。お待たせしました、恒例の握手会になります。ご希望される方は、右側の列からお並びください」
そう言うと客席の方々はそれぞれ立ち上がり、順番に並ぶ。因みに初めて言うけど、『天気雨には虹が咲く』は、今回のライブのテーマで、全員で出し合って私のが選ばれた。理由として”当たり前すぎて逆に良い”との事。
「では、rainbowの皆さんどうぞ」
そうアナウンスがあると同時に、私達の新曲が流れ出し、その合図で玖瑠実が代表で”お待たせしましたー”と言いながら順番に出て行く。するとお客さんからそれぞれ名前をコールされる。勿論私も呼ばれる。
30分後…。
あっという間の千秋楽が幕を閉じた。私達の着替えなどを考慮し、20分後に握手会がある。その間で私達は施設にあるシャワー室で軽く身体を洗い流すことになる。因みに握手会の時は直ぐに帰宅できる様、みんな私服での参加だ。化粧もあるので、大体5分程で上がらないと間に合わない。因みに伊織と最年少の愛花は、お互いゲーム好きと言う事でそれぞれで最近流行りのYouTV(ユーティービー)という、ネット配信サービスを使って、顔出しにてゲーム実況をしていて、そこでは普通にすっぴんでゲームをしている。なので、基本握手会はファンデーションだけの所謂薄化粧で行くので、他のメンバーに比べて準備が早い。ある意味羨ましい。とは言うものの、私は元々肌が弱いので、新曲用の化粧というのはせずにいつも専用で済ませる。メイクさん曰く、”敏感肌で人一倍肌には気を付けているせぃか、特に貴女はメイクしなくてもいいレベル”だそうだ。
「20分経ったよー」
「「はーい」」
島田さんが号令を掛け、私達がそれに対して反応し、先程と同じ並びで準備する。既にステージ上では準備された机が置いてあり、そこに適度な感覚で私達が並ぶ事になる。机の意味は、ファンとの適度な距離を保つ為で、そして、その机の前(客席側)に『剥がし』と言われるファンが長居いさせない為の追立役に警備も含めて4人付いている。ファンは、ステージから見て左側から順に上がって握手をして行き、最後に右の階段から降りるという仕組みだ。
「準備はいい?アナウンス掛けるよ」
そう言うと島田さんは、音響係に合図をする。
「rainbow初ライブ、”天気雨には虹が咲く”にご来場いただきありがとうございます。お待たせしました、恒例の握手会になります。ご希望される方は、右側の列からお並びください」
そう言うと客席の方々はそれぞれ立ち上がり、順番に並ぶ。因みに初めて言うけど、『天気雨には虹が咲く』は、今回のライブのテーマで、全員で出し合って私のが選ばれた。理由として”当たり前すぎて逆に良い”との事。
「では、rainbowの皆さんどうぞ」
そうアナウンスがあると同時に、私達の新曲が流れ出し、その合図で玖瑠実が代表で”お待たせしましたー”と言いながら順番に出て行く。するとお客さんからそれぞれ名前をコールされる。勿論私も呼ばれる。
「わおー、身長高いですねー、初めましてですかね?」
握手の順番で玖瑠実が甲高い声を上げた。私達は次の握手相手を見る為、意識的にお客さんが来る方向、つまり私達から見て左側を見る事になる。そこにやってきた一際目立つ1人の長身の男性。20歳前後の180㎝以上はあるんじゃないかと思われる、スラっとしたモデル体型で弱い癖のある薄い茶髪の男性が来た。言っちゃ悪いが、この場所に似合わないタイプだ。
格好いい…
多分私だけではなく、他メンバーも思ってるに違いない。因みに、握手会といえど、ライブ後でもある為、立ちっぱで対応しないといけないので、後半は足パンパンになる。そこで少しでも気を紛らす為に私の中で、握手会の楽しみ方として『イケメン探し』も備えている。今回は私の中での歴代トップのイケメンとなった。
「はい、この後に来る友人は何度かあるんですが、僕は初めてです」
これまたイケボでどうやら友人と来ている様子。その一言で無意識に後ろを見ると、二人ほどいる様で、これまた偏見だけど、何処にでもいる様な感じのタイプだ。それぐらい、今握手に来ている長身の男性が逆に異様に見えてしまう。
「そうなんですね、今日はありがとう」
「こちらこそ、楽しみました」
そう言って剥がされて美希にバトンタッチ。
「シェリミキさん初めまして、今回分かったんですが、新曲のソロ部分のダンスって毎回違うんですよね?」
「凄い!どうしてわかったんですか?ダンスとかやってるんですか?」
そう。正確に言うと今回だけではなく、全ての曲に対しては美希の場合、特技でもあるアクロバットを披露する為、みんなの動きとは若干違うダンスをする。それは手首の動きが違ったり足の向きだったりと、それはそれはやらしい違いで、よっぽどコアな人ではないと気付かないレベルだ。特に今回の新曲に対しては、歌の2コーラスが終わると急なロックテーストになり、15秒間のソロバージョンがあり、ここでもちょちょい動きを変えている。因みに今までいなかった為、この人が初めての人となる。
「いゃ、やってないです。昔からそういう細かい所気付くんですよねー」
「凄い、じゃー今度会う時は別の曲でかな?」
「そうですね、その時が来たら、また違いを報告しに来ます」
そう言いながら剥がされ、今度は私に来た。
「初めましてこんにちは、会いたかったです」
彼は凄く穏やかな感じで私に言って手を差し伸べてきた。私は見惚れながらも自然な振る舞いをするべく、差し出された手を両手で握りしめ
「ありがとうございます、初めてと聞いたんですが何が切っ掛けで?」
すると彼は話し出す。
「この間の一日カフェ店長をされていた時です。僕あの時お客として偶然ですけど居たんですよね」
「そうだったんですねー、あ、また来てください」
気になる所だが、虚しく剥がしに入る。すると去る寸前に不可解な言葉を言い残す。
「はい、後、その時随分と疲れている様子に見えましたので、気を付けて」
彼のこの何気ない一言。実は以前に一日店長という事で私と美希がメンバー代表で仕事をした事がある。イベントとはいえ、普通にお客が来てそこのカフェの仕事を2時間ほど行ったのだが、歌やレッスンといったいつもと違う経験に内心は凄く楽しかったハズ。でも彼には疲れているの様に見えていたらしい。
「え?あ、はい気遣いありがとうございます」
そう言って次の嬉々へと握手が移った。
私はその後はあまり気にせずに残りの握手会に挑んだ。
ー握手会終了‐
握手会は無事終了した。私達は終礼と言われる、帰る前に次の予定等の確認を行うミーティングを終えると、車に乗車する。運転はチームマネの島田さんだ。この後は直帰の為、それぞれの自宅の前や、電車通の人は駅までとそれぞれ分かれる。因みに私は駅だ。私の自宅は仕事場がある古舞(フルマイ)市の1つ下に位置する場所で、その古舞市と潤城市の境の場所だ。1つ下と言えど、車で来ような物なら軽く1時間掛かる。それを電車で30分という時短で来ている。
「さようなら、また明後日ですね」
そう明日は休みだ。最近は働き方改革とかで仕事の見直しがあり、以前までは週休一日制のプラス一日お休みオッケーだったけど、最近は週休二日制プラス一日お休み可となり、更には一日の就業時間もかなり見直されている。とても嬉しい。そう思いながら電車に乗る。私はいつも身バレしない様に帽子を深く被り、イヤフォンを指して窓際でスマホを弄る。
そして電車に揺られると向こうから一人の男性がこっちに来て近くの椅子に座った。私はその人と真逆を向いて彼に背中越しで立ち尽くす。特に何もないまま一つ目の駅に着いたとき、彼から話し掛けてきた。
「あの、余計なお世話かも知れませんが、座ったらどうです?」
聞き覚えがある声。私は不意に振り向くとそこに座っていたのは、なんとさっき握手会に来てくれていたイケメン君だ。
「…あれ?あなたもしかして、咲良さん?」
どうやら向こうも気付いてなかった様子。彼はチームのあだ名ではなく、下の名前で言ってきた。
「え?あ、ど、どうも…」
私は動揺して思わずそっぽを向く。
「あ、ごめんなさい、声掛けちゃ不味かったですね、なんでこんなに席空いてるのに座んないのかなって思って、つい声を。すみません」
彼は申し訳なく且つ、丁寧に謝罪する。凄く人間が出来ていると思った。
「い、いえ、すみません、ありがとうございます、お気遣いなく大丈夫です」
私は会釈しながら彼の方を向いてそう言い、再び背中を向けた。そのまま次の駅に着く。彼はというと黙々とスマホを眺めていて降りる気配がない。私はというと、この次の駅で降りる事になる。
何処の人なんだろう…
乗車してから約10分が過ぎていて、ここまでくると一体何処の住まいなのかが気になってくる。そう考えながら彼のスマホを除くと、何やら漫画を読んでいる様子。何の漫画かは流石にわからないが、絵のタッチから恐らく漫画だと思える。すると偶々向こうがこっちを見て目があってしまった。しかも2度見された。
しまった!…
「…どうしましたか?」
思わず目を背けたが、彼は尋ねてきた。
「いや、すみません、なんでもないです」
私はそう言うしかなかった。
「そう…ですか。気になるなら席外しましょうか?」
どうやら気を遣わせたようで、彼は横に置いていた荷物を持って移動しようとする。
「いえ、大丈夫です。そのままでいて下さい!」
私は咄嗟にそう言ってしまった。
「そのまま‥あ、はい」
そう言うと彼は再び荷物を戻す。私は何故そう言ったかが良くわかってないが、文章だけ切り取ると、”離れないで”と言ってる様で妙に恥ずかしくなる。
「あの、折角の出会いなのでって言うとあれですが、こういう機会って滅多にないので、少し話しませんか?握手会だと緊張して話せなかった上に剥がしにあいましたから」
「え、でも‥それは…」
急なそのイケメン君の誘いに、私は上手く拒否できないでいた。というより、心の闇の部分が、彼と話したいという気持ちが出てきていた。と同時に握手会の時に”随分と疲れている様子に見えました”と言われた事がずっと気になっていたた為、聞きたい気持ちになっていた。すると彼から話し出す。
「何処で降りるんです?」
「次の駅です」
「じゃー、3,4分くらい話しません?」
すると彼は紳士に席を横に移し、私が座れる場所を確保してくれた。ここまでされると流石に否定できずに私は”ではお言葉に甘えて”と言いながら座った。
「なんかライブの時とはかなり違いますね」
彼は微笑みながらそう言った。
「まぁあれはキャラでもあるしですね、あまり変わらないようにしてはいるんですけど」
「大変なんですね。でもまさかこういう所で会うなんて、ファンとしては嬉しい限りです」
そういえばこの人rainbowファンの一人だった。ファンとこういうのって大丈夫なのかな?
急に我に返った私は、少しキョロキョロと周りを見渡してしまう。
「ん?周りが気になりますか?でしたら一つ席空けますね」
そう言うと彼は再び一つずれて、間に一席空いた状態で座る。この短時間ではあるが、凄く気遣いが出来て優しくてしかもイケボだから、なんだか包み込まれそうな感じがした。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、謝るのは俺の方ですよ、誘っちゃったのは俺なんで」
彼はオーバーにも謝らないで下さいって感じを身体全体で表す。その顔はやっぱりイケメンで爽やかだ。彼がそう言って少し間が出来た為、私はあの事を聞く事にした。
「あの、一つ聞きたい事があったんですが、いいですか?」
「え、俺にですか?」
まさか、さっき会った人から質問されるとは思っていなかったのか、聞き返してきた。
「そうです」
「はい、わかりました」
すると彼は周りに怪しまれない様に下を向いて聞く体制に入った。
「あの、握手会の時に私に”随分と疲れている様子に見えました”って言ったじゃないですか、なんであんな事を言ったんですか?」
すると彼は私の方を見て
「覚えててくださったんですね、あ、もしかして気に障りましたか?」
「いえいえそんなんじゃないんですけど、初めて言われたのでずっと気になってて」
「そうなんですね、普通に劇場で見た事あるんですけど、踊りのキレがないというか、以前に一日カフェされてた時も、ちょっとふら付いてましたし」
凄い観察力…。私はそう感じた。彼が言ったダンスのキレと言い、一日カフェと言い、誰も気付いてくれなかった私の体調。最近の色んな感情も含め、少し疲れていた私は、その彼が言う一日カフェ店長してた時が一番のピークが来ていた。案の定、翌日に発熱で3日間休ませて貰っていた。その時に誰も気付いてなかったと思っていたら、なんと彼がそれに気付いていたのだ。
「…気付いてたんですか?」
「誰だって気付くでしょあれ?逆に周りが気付かないのが可笑しいと思ってたんですけど、現に誰も貴方に気遣う声がなかったから、気付いてないんだろうなって思ってですね、本当は声掛けたかったんですけど、好きな人の前で緊張していて、当時の俺にはその勇気がなくて、ただただ見てるだけでしたから、ちょっと後悔してるんですよね」
「好きな人?」
私は内容よりその言葉に引っかかった。すると彼は、思わず口が滑った様で口を片手で閉じ
「あ、す、すみません、言ってなかったですね、実は俺、rainbowの中では咲良さんが好きなんですよね。その理由も、完全に店長の時でして…」
すると照れからか頭を掻く。イケメンの照れにちょっとキュンとする私。しかもイケメン君から”好き”と言われて嬉しくなる私。話を聞くと、どうやら一目惚れからの調べたら私に辿り着いたらしい。
「ありがとうございます、嬉しいです。あと、話の件ですけど、凄い観察力ですね」
すると彼は照れながらも私を見て、
「昔からなんかそういう所が見えるというか、以前に自分が脱水症状起こして倒れた事があって、その時の体調を言えれば良かったんですけど、タイミング的に言えなくて結果倒れたって感じなんで。それ以降、同じ事がない様に自分だけではなく、人にもちょっと敏感に見る様になったという経緯があるんですよね」
「そうなんですね、そういう過去が」
私自身も倒れたとはいえ、そこまで考えた事がないので本当に凄いと感じた。そう考えると、自分自身も自分の事しか考えてなかったので、少し反省をしないといけない。
「だから、マジで余計なお世話だったら謝ります」
すると彼は両手を両膝に置いて平謝りの体制に入る。
「いやいやそんな、嬉しいです本当に。そんな所まで見て下さっていたなんて、凄くお優しい方なんだなって思って」
「いえいえ、ありがとうございます」
私はイケメンもそうなのだが、その内面に何処か惹かれている自分がいた。そうしている内に次の駅のアナウンスが入る。
「あ、降りないとですね」
心なしか彼は寂しそうに言う。私自身も、もっと話がしたいとなっていた為、降りたくない気持ちになっていた。そして私は、ここで運命のターニングポイントとなる言葉を放つ。
「あの、もうちょっと話しませんか?」
私はそう言うと、当然の如く彼は驚きながら
「え、で、でもこの駅なんですよね咲良さん?」
「はい。でもちょっと貴方に興味を持ちまして、折角なんでサービスとしてもうちょっと会話しません?ここでは剥がしもいませんし。それに明日私休みですから」
私は凄くいけない事を言っている気がする。
「さ、咲良さんが宜しければ…でも僕まだ4つほど先の駅ですし、他のメンバーとかにバレませんか?」
まさかの私の発言に明らかに動揺を見せる彼。
「大丈夫ですよ、もし、メンバーから連絡があれば、寝落ちしてたって言えばいいですし、現に何回かあるんで直ぐ信じてくれると思いますよ」
私は悪時絵を働かせるの天才なのか。良からぬ事を考える時の脳の働きが素晴らしい。
「そこまで言うなら…。まぁ俺自身としては嬉しい限りですけど」
「ごめんなさいね、今度は私の我儘で」
一応引き留めた感じなので、平謝りする。
「いえいえ、俺も人の事言えないので…」
彼もそう言いながら電車は自宅からの最寄りの駅に止まり、そして発車する。私は駅が徐々に小さくなって行く姿を横目で見ながら、彼とその電車に乗り続けた。
to be continued…