テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「どうぞお座りください。そこにあるのが、我が家で一番座り心地の良い椅子です」


東雲弦は机代わりと思われる棚越しに、私の正面へ手をやった。視界に椅子は見当たらない。何かあるとすれば、他とは違って赤のテープで強調された巨大なゴミ袋があるくらいだ。


「……これ、ゴミ袋でしょう?」


「そうとも言いますが、我が家では椅子です」

「いや、ゴミ袋でしょ?」


「ええ。ですが正確には『全角度対応座面搭載圧縮素材、九割ウレタン仕様』という事にしています」


渋々そこへ腰を下ろす。慣れない感覚ではあるが、本当に僅かではあるが、人をダメにするソファのような柔らかさが無くもない。むしろ、あれよりも弾力があって……。


自分でも意外だが、割と気に入った。ただ、これを買いたいかと言われれば、もちろんいらないと言うし。もらってくれないかと言われても、いらないと答えるだろう。


「ねえ、九割がウレタンなら、残りの一割は何なの?」


すると、東雲弦は何かを誤魔化すように、飲み物を取りに行った。この狭い部屋だ。そこでも答える事が出来るであろうに、彼女は沈黙を貫く。


ここは汚れているようで清潔で、散らかっているようで、よく整理されている。床から丸まった紙の一つを拾い上げ、それを開く事で更なる確信を得られた。その紙は原稿用紙であった。

幾つもの横線が引かれており、繰り返し何度も修正を重ねた事がわかる。おそらくは、これらのゴミ袋全てにこのようなものが詰まっているのだろう。


「ねえ、しのちゃん。私は今日、何を手伝えば良いの?」


「え、その事話しましたっけ……」


「わかるわよ。私の勘ぐりの良さを忘れちゃった?」

この作品はいかがでしたか?

21

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚