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これでボツなのか…?クオリティ高すぎません???
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「両親は弟を愛してましたから、必然的に私がスパイをやらなければいけなかったんです、ただそれだけ」
学生時代のアルバムを見ながら、そう言葉を紡いで笑っていた。
「褒められている弟が羨ましくて、当時任務くそ頑張ってたんだよ。
変装して人を騙すのも、抱いて抱かれて情報収集するもの、命令されたら人を殺す事だって褒められるなら何しても良かったのに、結局褒められる事なんかなくて、私は嫌になって足を洗って、家系とはもう縁切りみたいになったし、結局私のした事は何も正しくなかったんだろうな」
ただの子供の、独り善がりだった
愛してくれればそれで良かったのに
「こんな事なら弟なんて、両親なんて殺しておけば良かったのに」
愛されていなくとも、愛してしまっていたから、殺さなかった
殺せなかった。
自分の手のひらを見つめた、白い肌
あの時は、全身が真っ赤に染まっていたはずなのに
「アキラ…っ!」
その声が聞こえた瞬間に、はっとした
じわりと手のひらが熱く痛かった。
細い線に沿って開かれた場所から、見慣れた液体が止めどなく溢れてくる
それをぼんやりと見つめていると、なんだがぽっかりと空いた場所が埋められていくような感覚があった。
寂しかったのかもしれない、自分を心配してくれるのは自分自身だけなのだとあの頃から理解していた。
こんな事しても、意味なんてないのに
心配してくれる人なんて、誰も
「凪ちゃん」
「_____セラ夫?」
「ダメでしょ傷付けたら、凪ちゃん痛いの嫌いなんだからさ」
「心配、してくれてるんですか?」
「友達が急に手首掻っ切ったら誰でも心配するでしょ、凪ちゃんは違うの」
「____そう」
心配してくれるなんて、思いもしなかった。
セラ夫は私よりも苦痛な日々を過ごしていたはずなのに
強いなぁ
私もこんなに強ければ、一人で全部解決出来たのかな。
こんなに苦しい思いをしなくてそんだのかもしれない。
もっと訓練して、強くなってたら、
「ごめん、私帰ります」
「ダメ、まだ止血出来てない」
「違うんですセラ夫、帰らせて」
「だから、」
「セラフ、ぅ゙」
げほげほと咳き込んでしまい、手で口を抑えた。
どろりと何かが付着する感覚があり
何かと手を見つめると、赤黒い液体が手を染めていた。
ぼんやりとセラフの服を見ると、止めどなく溢れてくるせいか、鮮やかで綺麗な赤色が、赤黒くなっていた。
昔、人はストレスを感じすぎると吐血をすると、誰かから一度聞いたことがある。
ゆっくりと顔を上げて、セラフを見つめると、珍しく状況が理解出来ていなくて固まっていた。
それがなんだか面白くて笑いそうになったけれど、なんだか上手く笑えなかった。そういえば服を汚してしまったことを謝らないとと思って、口を開いた。
ごめんセラ夫、そう言いたかった。
「服、汚した」
そう声を出した瞬間、バチリと視界が弾け、意識が遠のいた。
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目覚めた時には自分の部屋でも事務所でもないんだろうな、と思った。
明らかに広い部屋の白い天井。
腕には何らかのチューブが刺さっているのだろうか、動かせない。
ああ、また迷惑を掛けてしまったのかもしれない。