テラーノベル
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翔が消えてから、三日が経った。
警察も、大人たちも、あの廃トンネルをいくら捜索しても「何も出なかった」と言い張る。
まるで、最初から翔なんて人間はこの世界にいなかったかのように。部屋のベッドで、僕はただ、電源の入ったままのスマホをじっと見つめていた。
その時、画面が不意に震えた。ぽつんと表示された通知の文字に、心臓が跳ね上がる。
『翔:晴輝、お願いだ。助けて』
震える指で画面を開く。続いて送られてきたのは、一枚の地図と、信じられないメッセージだった。
『俺はあの鳳(おおとり)廃病院のナースステーションにいる。〇〇号室に俺のプレートがあるんだ。頼む、名前を呼んでくれ』
それが罠かもしれないなんて、考える余裕はなかった。僕はただ、スマホをポケットに押し込み、夜の街へと飛び出した。
自転車を死に物狂いで漕いでたどり着いたのは、街外れにある巨大な廃病院だった。
五年前に医師も患者も全員が一夜にして失踪したという、曰く付きの場所。
割れたガラス窓から滑り込むようにして、院内へと足を踏み入れる。
懐中電灯の狭い光が、埃の積もった待合室のベンチや、不自然に放置された車椅子を照らし出した。
カビと薬品の混ざった嫌な臭いに、吐き気がこみ上げる。
晴輝:「……翔、いるのか?」
恐る恐る声を出すが、返事はない。自分の声が不気味に反響するだけだ。
ナースステーションがあるのは、廊下の奥のはずだ。奥へ進もうと一歩を踏み出した、その時だった。
――ジリリリリリリリリリリッ!!!
突然、静寂を切り裂いて、けたたましい電子音が鳴り響いた。
晴輝:「うわっ!?」
飛び上がるほど驚いて音のする方を向く。廊下の突き当たりにあるナースステーションの壁で、古びたランプが一つ、血のような赤色で激しく点滅していた。
ナースコールだ。誰もいないはずの病室から、誰かがボタンを押している。
そして、そのランプの横には、点灯している【号室】の数字がくっきりと浮かび上がっていた。
それは、スマホの画面で翔が指定してきた、あの部屋の番号だった――。
埃の積もったベッドの真ん中に、それはあった。
プラスチック製の、古びた名札プレート。懐中電灯の光を当てると、白い表面にマジックペンで乱暴に書かれた、見慣れた文字が浮かび上がる。
――『 翔 』
間違いない、翔の字だ。
晴輝:「翔……! 良かった、ここに――」
喜びのあまり、その名前を叫びそうになった瞬間、脳裏に冷や水を浴びせられたような戦慄が走った。
待て。本当に呼んでいいのか?
スマホのメッセージを思い出す。
『俺のプレートがある、名前を呼んでくれ』
確かにそう書いてあった。だけど、もしあのメッセージを送ってきたのが、本物の翔じゃなかったら?この病院に伝わるルールが「名前を呼んだら、自分の名前が書き換わって世界から消える」なのだとしたら。
――もし、このプレートの裏に、すでに僕の名前が書かれていたら?
晴輝:「……っ」
喉まで出かかった親友の名前を、僕は必死で飲み込んだ。暗闇の奥から、誰かがニヤニヤと僕の様子を覗き見しているような、強烈な視線を感じる。
目の前にあるのは、親友を救うための鍵なのか。それとも、僕を地獄へ引きずり込むための罠なのか。自分の心臓の音が、異常なほど大きく耳の奥で鳴り響いていた。
目の前のプレートを見つめたまま、パニックで息が詰まりそうになっていた、その時だった。
???:「――おい、そこで何してんだ?」
背後から突然、男の低い声が響いた。
晴輝:「ひっ……!?」
心臓が口から飛び出るかと思った。
勢いよく振り返り、懐中電灯の光をそちらへ向ける。光の先にいたのは、化け物ではなかった。自撮り棒に
固定したスマホと、大きなライトを持った男が立っていた。
二十代前半くらいだろうか。派手な髪色に、胸元には見慣れないロゴの入ったパーカーを着ている。男も眩しそうに手で光を遮りながら、僕を怪訝そうに見つめていた。
???:「なんだ、ガキかよ……。驚かせやがって。お前、何者? 別ルートから入ってきた同業者?」
晴輝:「ど、同業者……?」
マサ:「あぁ、俺? 俺はネットでオカルト配信やってる『マサ』って言います。今日はこの失踪病院の生配信に突撃してんだけど……さっきからバグか分からんけど、電波が死んでてさ」
男はフッと緊張を解いたように笑い、スマホをポケットにしまった。
だけど、僕は男の言葉がまったく頭に入ってこなかった。
男の後ろ、暗い廊下の奥にあるナースステーションのランプが、まだ血のように赤く点滅している。
この男は、本当にただの『人間』なのか?この絶妙すぎるタイミングで現れたのは、偶然なのか?
助けが来てホッとする気持ち半分。それ以上に、この男すらも病院が仕掛けた「怪異の一部」なんじゃないかという疑いが、僕の胸をじわじわと侵食していった。
続く───。
ᗰIYᑌ @ 🦋☁️
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#オムニバス
雪
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ピデピー
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コメント
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第3話、めっちゃ怖かった……! ラストの配信者の登場、タイミング良すぎて逆に怪しいよ😭 「本当に呼んでいいのか」って踏みとどまる主人公の頭の回転と、それでも進まなきゃいけないジレンマが伝わってきて、息が止まるかと思った。 空気感が細かく描かれてて、臨場感がすごい。続きが気になる……!