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期待していた訳ではないが、奴らなら自分達が目立つ事が出来る最高のステージを見逃すはずがなかった。
これでよかった筈なのに、それが逆に気になってしまい式典に集中する事が出来なくなった。
それでも、何事もなく無事に式典を終える事が出来たのは本当に喜ばしい事だ。
素晴らしい卒業式だった。
涙、涙の卒業式になった。
そして卒業生退場の時がやって来た。
1組から順番に退席していったが、2組の岩崎は順番がきても席を立とうとしなかった。
寝てるのか?
するとまわりにいた生徒が慌てて岩崎の肩に腕を回して、支えながら体育館を出ていった。
それから5組の退席の順番になった千葉も、岩崎と同様に席を立たなかった。
違っていたのは、クラスの連中が誰も千葉を連れて行こうとはしなかった事だ。
おい、おい…‥
そして僕らの6組が退席する順番がやって来た。
仕方がないので近くにいた学級委員の赤坂の助けを借りて千葉を外へ連れ出した。
「おいっ…千葉起きろ!」
目を見開いたまま気を失っている千葉の頬を強めに叩いた。
「イェ~イ、ピヨピヨ~〜」
突然起き上がったと思ったら、訳のわからない事を叫びながら拳を空に突き上げて思いっきりジャンプをしていた。
「千葉…お前何やってんだ?」
「えっ…あっ‥あれっ? 何で俺ここにいるんだ?」
千葉は今のこの現状がわかっていないらしく、慌てふためいていた。
「お前が気絶してる間に卒業式は終わったんだよ」
「そんな別けねぇだろ! 卒業証書授与式の始まる直前まで意識はハッキリしていた…んだ…」
千葉は何かを思い出したらしく、口をつぐんでしまった。
「何か思い出したのか?」
「あぁ…確かに直前までは意識があった。でも、俺のクラスの連中の名前が呼び始められた直後、体が動かなくなり意識が朦朧としてきたんだ。そして気付いたら、体育館の外でお前なんかと一緒にいたんだ」
「“お前なんかと”って何なんだよ! 気絶したお前をここまで運んでやったのは、5組の連中じゃなくて僕なんだからな!」
「あらっ、そうなの? メンゴ、メンゴっ」
全くありがたみのない言い方だった。
「お前なぁ」
腹が立ったので、僕は千葉に掴みかかろうと手を伸ばした。
「だ~れだ?」
突然背後から目隠しをされた。
「葵…邪魔すんなよ」
「いちいち怒んないの」
葵は僕がケンカになりそうになると必ず邪魔に入る。
「そうよっ。怒んないの!」
千葉は葵の真似をして言った。